辺境のご長寿魔法使いと世話焼きの弟子

志野まつこ

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2、お山の魔法使いに弟子入り<下>

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 明日で最後になるとはいえ何も変わらない。
 いつも通り魔術とか山の様子とかについてぽつぽつ話ながら食事を済ませた。
 魔術に関して教える事なんてもうほとんどない。何年も前からコイツは一人でやって行くだけのすべを網羅し習得している。
 ここ数年は惰性で同居していたに過ぎない。
 普通の人間は100年も生きないのにその数年を無駄に浪費させて悪い事をした。
 食後に出されたお茶は今度はしょっぱく感じた。
 なんなんだ今夜は。
 試しにおかわりした。別にもう少し座っていようとか思ったわけじゃない。

 少し熱っぽい気がして早めに寝室に入った。アイツは食器やらなんやら片付けをしてから寝る。
 いつもの習慣だ。気まずいとかじゃない。いつも俺の方が先に寝てる。
 皿洗いなんて魔法で簡単に済ませられるが皿洗いなんかの家事をしていると考え事がはかどるらしい。また前代未聞の新規アイデアを思い付いたりするんだろう。

 だからいつも通り先に俺が床についた。
 それなのに妙に寝苦しくて寝付けない。
 食器を片付ける音を聞きながら眠りにつくのも最後か。
 今日はいつになく激しい音がしている気がするが、たぶん気のせいだろう。

 やがて寝室のドアが開いた。弟子とは同じ部屋で寝起きしているからだ
 アイツはガキの頃にここに来た。小さな子供には山岳地帯の強い風の音が恐ろしくて一人部屋で眠るなんてとてもではないが不可能でベッドにもぐりこまれた。今でこそベッドは別だが寝室は同じだ。

 家の中で自分以外の人の気配がある生活も今夜で終わりだ。
 また静かな生活に戻る事が出来る。
 長かったような気もするし、あっという間だった気もする。
 いずれふと振り返る事があれば、間違いなく一瞬だったと思うんだろうが。

「師匠」
 コイツの声を聞くのももう少しか。このバリトンヴォイス野郎。声がいいんだよコンチクショウ。
 なんでそんないい声で耳元で囁くんだよ、馬鹿か。腹立つな。

「おい、なんでこっち入って来るんだ」
 最後にしてもガキじゃあるまいし。
 いい年だろうが。
 布団に入って来た弟子は覆いかぶさるようにしてちゅ、と「おやすみのキス」をしてきた。
 もう長い事してなかったが、いつまでたってもガキはガキか。

 ってコイツもう20過ぎだよな。

 コイツが精通を迎えたトコでベッドを分けたんだった。
 でもってお互い相手に気を遣わなくていいように自慰部屋も作った。
 外から見るとこの家は掘っ立て小屋の倉庫にしか見えないが玄関を開けば実に住み心地のいい我が家だ。なおかつ部屋数は多い。リビングから見えるドアは一枚だが行きたい部屋を軽く念じて扉を開けばそこにつながる。
 寝室に書斎。それとは別に書籍部屋に資料室、研究室と実験室と運動部屋。
 研究室と実験室は今も増え続け、他にそれぞれ個室という名の自慰専用部屋もある。
 今さらだがバカだよなぁ、と思った所で弟子が突如牙を剥いた。

 口内を分厚い舌で蹂躙され、寝間着の下に手を入れられて肌を直接撫でられる。

「あ!? おまっ!? ちょ、な、ヤメっ!」
 抵抗するがヒョロい俺がガタイのいいコイツに腕力でかなうはずもなく。
 咄嗟に魔術を展開しようとすると瞬時に弾かれ抜け道まで一瞬で塞がれた。というかはじめから塞がれていた。
 いつだ? いつの間にこんなモン張ってやがった。

「やっと認めてもらえたんですね。長かったです。もう我慢はしません」
 魔術で俺をベッドに沈むように拘束し、俺の腹の上に腰を降ろした弟子が自分の寝間着の上を脱ぐ。それをぽいっと床に放り、俺も同様に脱がされた。

 は?
 なんだ?
 コイツはなにをやってんだ?

退け」
 命令した。
 そこに腰を下ろされると当たるんだよ。お互いのナニがさぁ。

「良かった、勃ってますね」
 そう、俺の股間は勃ち上がって弟子の股間に当たっている。
 弟子のも硬くなってるのはなんでだ。

「退けと言って、ふッ!」
 弟子が刺激するように腰を揺らすと股間が刺激されて声が漏れた。

「食後のお茶に混ぜた精力剤がよく効いてるようですね」
 熱っぽいのはソレかぁぁぁ!
 弟子の身体を弾き飛ばして寝室の壁に叩きつけようと魔力を練ったが、それより早く弟子が練り終えかけた術式をあっさり無効化して乳首をつまんできた。
 なんて反応速度だよ。

「風味を消さなかったのにおかわりまでして先にベッドに入るから少し驚きました」

 それでしょっぱかったのかよ!
 なんでグビグビ飲んだ俺ぇぇぇぇ!

 見上げた弟子は照れたように頬を染め、嬉しそうに笑っていた。
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