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【スピンオフ】ヴァンパイア医師とデュラハン作家の特殊な夜
1、拉致される
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◆ご注意ください◆
ヴァンパイア×首無し騎士
本編でやらかしたデュラハンがドロドロにお仕置きされるやつです。
頭が取れるので人によってはグロく感じられる可能性があります。
ほぼエロです。割とハードです。
「エロだ!ドエロが読みたいんだ!エロだけでいいんだよ!」というコンディションの時にお読みいただくのがいいかもしれません。
なお名前をS×ドMっぽくしているので覚えなくても大丈夫です!
◇◆◇◆◇◆◇◆
ドエンは首無し騎士でミステリ作家だ。
デュラハンには頭部が完全にないものと、己の頭部を小脇に抱えるタイプがいるがドエンは後者でその顔は男らしく非常に端正なつくりだ。
新作のアイデアは降って沸いたように突如ドエンの中に生まれた。
推理小説「数学教師の放課後」はスランプとはなんだったのかと思いたくなるほどあっという間に書きあがり、続編もスムーズに決定した。
ドエンがホテルの部屋にインキュバスを連れ込んだ直後の事である。
ドエンにしては珍しく高等学校周辺を舞台とした連続殺人モノで、過去に例を見ない奇抜なアイデアとトリックがこれでもかと投入された。
主人公は若い刑事だ。
にもかかわらず、刑事の幼馴染である男性高校教師が事件とは全く関係のない事を犯人と淡々と語り合い、最終的に犯人が勝手に名乗り出るや自ら罪を告白するという謎の物語だった。
刑事達の捜査が暗礁に乗り上げる中、突如出頭してくる登場人物。そこには読者の期待する探偵役の推理もひらめきも、実験もない。
完全に「トリックの無駄遣い」「なんで推理で解き明かさない」「これなら他の推理作家にアイデアを売った方が良かった」とミステリファンを大いに嘆かせたが、高校の数学教師の冷たい口調と、時折見せる蔑むような瞳の表現の秀逸さ、本当にまれに見せる優しさと些細な言動から匂い立つように漂う色気がクセになると少しずつ販売数を伸ばし、短編集だった「数学教師の放課後」は続編を求められた。
スランプを経て久々に一作書き上げたというのにドエンはこの過程を素直に喜べなかった。
そして地獄は訪れた。
また筆が止まったのだ。
これは一気に執筆できる、かつてのように情熱と勢いでスムーズに書けると心が躍ったというのにいざ執筆を開始すると細かい部分で止まってしまう。
ずっとこんな状態だ。
自分を満たすのは無力感で、もはや何もする気が起きない。そんな中、医者をしている知人から飲みの誘いがあった。
ちょうど思いついたとある殺害方法について確認したい事もあった。これが解決すれば一気に筆が進むかもしれない。
知人からの誘いはまさしく渡りに船で、気分転換にもなろうと快諾した。
これまでずっと交友と見せかけて取材を頼んできた相手だ。医療的な内容を尋ねるのに医者である知人の存在は大変都合がよかった。
店に遅れて到着した医者シヴァイツは今夜も死神のようだった。黒いスラックスに同じく黒いシャツ。肩まで伸びた漆黒の髪は無造作に結ばれている。
「相変わらず忙しそうだな」
ドエンはそう言って呆れる風を装って見せた。
医療魔術の優秀な医師であるシヴァイツは常に多忙で、髪を切る暇も惜しむのだ。
黒づくめの衣服は一つ間違えば勘違いした痛々しいセンスになるだろうに、男の美貌とスタイルの良さが完璧なものに見せている。喪服のようだと患者や病院関係者から嫌悪されてもおかしくないのにそれが許されるのはひたすら優れた容姿を備えているから。
冷たさを醸し出すほどに整った容貌と、医者には見えない体格の良さは周囲の目を引きつけるものだ。
しかし残念かな髪の長さで多忙か否か一目で分かる男は今夜もいつものように顔色が悪く、ひどい隈がせっかくの美形が台無しにしている。
それでも飲みに出て来るのだから酔狂で不可解だ。ドエンにはありがたい存在だが。
「普段通りだ」
誘っておきながら遅れて来たシヴァイツは詫びる事も無くテーブルにつくが、男の職業を知るドエンも文句を言う気はない。ドエンにも利用しているという負い目も多少は存在する。
美食家であるシヴァイツが選んだ店で舌鼓を打ったあと、珍しく二軒目に誘われた。
ホテルの上階のバーで飲み、ドエンは一度トイレに立った。
用を足すために頭を首の切断面の上に乗せる。完全に首をつなげることは出来ないが、こういった時は一時的に首を「あるべき位置」に置くのだ。
用を足したあとは頭を切断面に仮乗せしたまま手を洗う。
靴音に自然と顔を上げ、正面の鏡の中を見るが背後に人の気配はするというのにそこにはドエンしか映っていない。それが逆にそこにいるのがシヴァイツだと理解した。
彼は吸血鬼だ。シヴァイツの着用する衣服まで鏡に映らないのはなんとも不思議な現象だ。
化粧室に現れたシヴァイツにテーブルが空になるのにと違和感を覚えたが、知った人物であるが故そこに油断が生じた。
無言のシヴァイツを振り返ろうとしたところを鷲掴みで頭を奪われる。
文字通り、頭を持って行かれたのだ。
視界の回るなか鎖骨の上の首元に激痛が走る。
「首なし騎士は噛みにくい」
忌々し気に吐き捨てられたが意味が分からなかった。
吸血鬼の歯から体内に流し込まれた痺れ薬の効果はてき面だった。立っている事さえできず即座に膝をつきかけたが、すかさずシヴァイツがドエンの脇をくぐるようにして肩を貸し店内に戻る。
シヴァイツは広域から患者が指名で集まってくるほどの魔力医療の名医で、ごくまれに恩師の頼みで断れなかった場合などにコメンテイターとしてメディアに顔を出すこともある。何事かと微かに空気が揺を揺らす大衆に医者として顔の売れているシヴァイツは「酔ったようだ」と平然とのたまい、大勢の目撃者がいる中で堂々と拉致を遂行した。
現代社会において首無し騎士は不利だと痛感する。
かつて古代の首無し騎士が馬に乗っていたか今なら分かる。馬がいないと首無しは騎士としてあまりにも無力だからだ。
騎士の時代はとうに終わり、平和になった現代では馬の必要がなくなった。
そもそも馬を養う事も難しいという経済的理由で相棒を失ったデュラハンという種族はこういった犯罪の標的とされた時、悲しいかな抵抗する術を持たなかった。
そしてドエンが連れ込まれたのはそこからさらに上階に取られたホテルの一室だった。
ヴァンパイア×首無し騎士
本編でやらかしたデュラハンがドロドロにお仕置きされるやつです。
頭が取れるので人によってはグロく感じられる可能性があります。
ほぼエロです。割とハードです。
「エロだ!ドエロが読みたいんだ!エロだけでいいんだよ!」というコンディションの時にお読みいただくのがいいかもしれません。
なお名前をS×ドMっぽくしているので覚えなくても大丈夫です!
◇◆◇◆◇◆◇◆
ドエンは首無し騎士でミステリ作家だ。
デュラハンには頭部が完全にないものと、己の頭部を小脇に抱えるタイプがいるがドエンは後者でその顔は男らしく非常に端正なつくりだ。
新作のアイデアは降って沸いたように突如ドエンの中に生まれた。
推理小説「数学教師の放課後」はスランプとはなんだったのかと思いたくなるほどあっという間に書きあがり、続編もスムーズに決定した。
ドエンがホテルの部屋にインキュバスを連れ込んだ直後の事である。
ドエンにしては珍しく高等学校周辺を舞台とした連続殺人モノで、過去に例を見ない奇抜なアイデアとトリックがこれでもかと投入された。
主人公は若い刑事だ。
にもかかわらず、刑事の幼馴染である男性高校教師が事件とは全く関係のない事を犯人と淡々と語り合い、最終的に犯人が勝手に名乗り出るや自ら罪を告白するという謎の物語だった。
刑事達の捜査が暗礁に乗り上げる中、突如出頭してくる登場人物。そこには読者の期待する探偵役の推理もひらめきも、実験もない。
完全に「トリックの無駄遣い」「なんで推理で解き明かさない」「これなら他の推理作家にアイデアを売った方が良かった」とミステリファンを大いに嘆かせたが、高校の数学教師の冷たい口調と、時折見せる蔑むような瞳の表現の秀逸さ、本当にまれに見せる優しさと些細な言動から匂い立つように漂う色気がクセになると少しずつ販売数を伸ばし、短編集だった「数学教師の放課後」は続編を求められた。
スランプを経て久々に一作書き上げたというのにドエンはこの過程を素直に喜べなかった。
そして地獄は訪れた。
また筆が止まったのだ。
これは一気に執筆できる、かつてのように情熱と勢いでスムーズに書けると心が躍ったというのにいざ執筆を開始すると細かい部分で止まってしまう。
ずっとこんな状態だ。
自分を満たすのは無力感で、もはや何もする気が起きない。そんな中、医者をしている知人から飲みの誘いがあった。
ちょうど思いついたとある殺害方法について確認したい事もあった。これが解決すれば一気に筆が進むかもしれない。
知人からの誘いはまさしく渡りに船で、気分転換にもなろうと快諾した。
これまでずっと交友と見せかけて取材を頼んできた相手だ。医療的な内容を尋ねるのに医者である知人の存在は大変都合がよかった。
店に遅れて到着した医者シヴァイツは今夜も死神のようだった。黒いスラックスに同じく黒いシャツ。肩まで伸びた漆黒の髪は無造作に結ばれている。
「相変わらず忙しそうだな」
ドエンはそう言って呆れる風を装って見せた。
医療魔術の優秀な医師であるシヴァイツは常に多忙で、髪を切る暇も惜しむのだ。
黒づくめの衣服は一つ間違えば勘違いした痛々しいセンスになるだろうに、男の美貌とスタイルの良さが完璧なものに見せている。喪服のようだと患者や病院関係者から嫌悪されてもおかしくないのにそれが許されるのはひたすら優れた容姿を備えているから。
冷たさを醸し出すほどに整った容貌と、医者には見えない体格の良さは周囲の目を引きつけるものだ。
しかし残念かな髪の長さで多忙か否か一目で分かる男は今夜もいつものように顔色が悪く、ひどい隈がせっかくの美形が台無しにしている。
それでも飲みに出て来るのだから酔狂で不可解だ。ドエンにはありがたい存在だが。
「普段通りだ」
誘っておきながら遅れて来たシヴァイツは詫びる事も無くテーブルにつくが、男の職業を知るドエンも文句を言う気はない。ドエンにも利用しているという負い目も多少は存在する。
美食家であるシヴァイツが選んだ店で舌鼓を打ったあと、珍しく二軒目に誘われた。
ホテルの上階のバーで飲み、ドエンは一度トイレに立った。
用を足すために頭を首の切断面の上に乗せる。完全に首をつなげることは出来ないが、こういった時は一時的に首を「あるべき位置」に置くのだ。
用を足したあとは頭を切断面に仮乗せしたまま手を洗う。
靴音に自然と顔を上げ、正面の鏡の中を見るが背後に人の気配はするというのにそこにはドエンしか映っていない。それが逆にそこにいるのがシヴァイツだと理解した。
彼は吸血鬼だ。シヴァイツの着用する衣服まで鏡に映らないのはなんとも不思議な現象だ。
化粧室に現れたシヴァイツにテーブルが空になるのにと違和感を覚えたが、知った人物であるが故そこに油断が生じた。
無言のシヴァイツを振り返ろうとしたところを鷲掴みで頭を奪われる。
文字通り、頭を持って行かれたのだ。
視界の回るなか鎖骨の上の首元に激痛が走る。
「首なし騎士は噛みにくい」
忌々し気に吐き捨てられたが意味が分からなかった。
吸血鬼の歯から体内に流し込まれた痺れ薬の効果はてき面だった。立っている事さえできず即座に膝をつきかけたが、すかさずシヴァイツがドエンの脇をくぐるようにして肩を貸し店内に戻る。
シヴァイツは広域から患者が指名で集まってくるほどの魔力医療の名医で、ごくまれに恩師の頼みで断れなかった場合などにコメンテイターとしてメディアに顔を出すこともある。何事かと微かに空気が揺を揺らす大衆に医者として顔の売れているシヴァイツは「酔ったようだ」と平然とのたまい、大勢の目撃者がいる中で堂々と拉致を遂行した。
現代社会において首無し騎士は不利だと痛感する。
かつて古代の首無し騎士が馬に乗っていたか今なら分かる。馬がいないと首無しは騎士としてあまりにも無力だからだ。
騎士の時代はとうに終わり、平和になった現代では馬の必要がなくなった。
そもそも馬を養う事も難しいという経済的理由で相棒を失ったデュラハンという種族はこういった犯罪の標的とされた時、悲しいかな抵抗する術を持たなかった。
そしてドエンが連れ込まれたのはそこからさらに上階に取られたホテルの一室だった。
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