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【本編】腹ペコ淫魔のヤケ酒に媚薬
21、ベストセラー作家の新作構想
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オレンジジュースだけとってみたものの手を伸ばす気になれない首なし作家はガラスに反射するディールの姿に眉をひそめた。
「浮かんだんだが、ぜひ君の意見を聞かせてほしい」
そう一枚の紙きれを差し出された首なし作家は仕方なくそれを受け取り、テーブルに乗せた己の首の前でメモを開いた。
―――――――――――――――――――――
「ボックス」(仮)
立方体にして歪。そこはそんな空間だった。
首サイズの小さな立方体の中で首(デュラハンの男)は目覚める。
箱の外では恋人の嬌声→その後行方不明。
胴体とともに解放された男は一度は心を折られるも失踪した恋人と真相を求め、時に体を使い手ひどく凌辱されながら敵を見極め相手の過去と汚点を調べ上げ、恋人に裏切られながらも壮絶な復讐を果たす。
二十年以上前に親友の恋人が主人公デュラハンに乗り換えている。本人の関知しない所で親友に寝取りと恨まれ続けていた。お互いが復讐し合う二つの復讐譚。
箱男 箱の中の復讐
―――――――――――――――――――――
紙片に目を通した首は勝手に同じテーブルについているディールを忌々し気に睨み上げる。
この二人の作家は中高を同じ学び舎で過ごした学友であった。
「どうかな」
ディールは泰然と微笑む。昨夜何があったか知っているとその顔が告げていた。
その覚書が自分に対する当てつけだとは分かっている。それなのに抗いがたいほどの興味を引かれ、猛烈なまでに読みたいという欲求が沸いている。
本当に昔からいけすかない男だ。
脅迫と言えば脅迫で、才能の誇示だといえばそれはまさしくそうだ。それは首なしのプライドの高さを知っているが故のディールの報復だった。
「私としては到底許せるものではないんだが、訴え出なかった本人の意志を今は尊重することにした。が、次は無いと思えよ。さもないと」
背もたれに背を預け、長い足を組んで窓の外を眺める態のディールは周囲からはリラックスしたようにしか見えないが、首なしにしか聞こえない声量のその声はひどく厳しい。
ディールは立ちあがって首なしの肩に手を置くと、腰を折って首の耳元に口を寄せた。
「学生時代、変わった自慰をしていたと広めるぞ」
「━━似た者同士めッ」
全く身に覚えのない話だがそれらしく広められてしまえば否定する機会も得られないだろう。様になる態度で恐ろしい事を囁く男に首なしは低く唸ったがディールにしてみればそれは賛辞だ。
ディールは低く笑って首なしの肩を二度、親しい友人にするように叩いた。
◆◇◆
追い打ちの嫌がらせしてそうだなぁ。
楽しそうに肩を揺らすディールを遠くから眺めながらルクスは呆れた顔でテーブルに戻った。
首なし先生、しばらくは勃起不全とか勃起に恐怖を覚えたり射精障害になる可能性あるからもう追い詰めなくてもいいっちゃいいんだけど、何か言わなきゃ気が済まない気持ちも分かるからなぁ。
自分でもそうする。ディールに何かされたら特技を駆使した復讐を果たすだろう。
そんな事を思ってから、いかんいかんと運んできた来た分厚いパンケーキに意識を集中する。
せっかくの高級ホテルの朝食なのだ。楽しまなければ損だ。
わくわくしながら頬張った刹那、目を瞠る。
ふわふわ! 一瞬で溶けて消える! なにコレ! さすが都会! 一流ホテル!
たった今目にした二人の作家の様子など些事とばかりに一瞬で忘れたルクスは夢中でスイーツと呼ぶべきパンケーキを堪能するのだった。
----fin----
■ルクスの疑問■
「首なし先生ってミステリとか推理系ばっか書く人なのに、あの媚薬がどんなもんなのか知らなかったのかな」
そういった犯罪がらみの情報には詳しそうなのに。もはや隠す必要もないとルクスはディールに尋ねた。
「アレは昔から思い込みが激しい所があるからな」
「あー、なるほど」
****************
これにて完結となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
思い込みの激しい首なし先生受けも書き始めたもののまた停滞気味です。
「浮かんだんだが、ぜひ君の意見を聞かせてほしい」
そう一枚の紙きれを差し出された首なし作家は仕方なくそれを受け取り、テーブルに乗せた己の首の前でメモを開いた。
―――――――――――――――――――――
「ボックス」(仮)
立方体にして歪。そこはそんな空間だった。
首サイズの小さな立方体の中で首(デュラハンの男)は目覚める。
箱の外では恋人の嬌声→その後行方不明。
胴体とともに解放された男は一度は心を折られるも失踪した恋人と真相を求め、時に体を使い手ひどく凌辱されながら敵を見極め相手の過去と汚点を調べ上げ、恋人に裏切られながらも壮絶な復讐を果たす。
二十年以上前に親友の恋人が主人公デュラハンに乗り換えている。本人の関知しない所で親友に寝取りと恨まれ続けていた。お互いが復讐し合う二つの復讐譚。
箱男 箱の中の復讐
―――――――――――――――――――――
紙片に目を通した首は勝手に同じテーブルについているディールを忌々し気に睨み上げる。
この二人の作家は中高を同じ学び舎で過ごした学友であった。
「どうかな」
ディールは泰然と微笑む。昨夜何があったか知っているとその顔が告げていた。
その覚書が自分に対する当てつけだとは分かっている。それなのに抗いがたいほどの興味を引かれ、猛烈なまでに読みたいという欲求が沸いている。
本当に昔からいけすかない男だ。
脅迫と言えば脅迫で、才能の誇示だといえばそれはまさしくそうだ。それは首なしのプライドの高さを知っているが故のディールの報復だった。
「私としては到底許せるものではないんだが、訴え出なかった本人の意志を今は尊重することにした。が、次は無いと思えよ。さもないと」
背もたれに背を預け、長い足を組んで窓の外を眺める態のディールは周囲からはリラックスしたようにしか見えないが、首なしにしか聞こえない声量のその声はひどく厳しい。
ディールは立ちあがって首なしの肩に手を置くと、腰を折って首の耳元に口を寄せた。
「学生時代、変わった自慰をしていたと広めるぞ」
「━━似た者同士めッ」
全く身に覚えのない話だがそれらしく広められてしまえば否定する機会も得られないだろう。様になる態度で恐ろしい事を囁く男に首なしは低く唸ったがディールにしてみればそれは賛辞だ。
ディールは低く笑って首なしの肩を二度、親しい友人にするように叩いた。
◆◇◆
追い打ちの嫌がらせしてそうだなぁ。
楽しそうに肩を揺らすディールを遠くから眺めながらルクスは呆れた顔でテーブルに戻った。
首なし先生、しばらくは勃起不全とか勃起に恐怖を覚えたり射精障害になる可能性あるからもう追い詰めなくてもいいっちゃいいんだけど、何か言わなきゃ気が済まない気持ちも分かるからなぁ。
自分でもそうする。ディールに何かされたら特技を駆使した復讐を果たすだろう。
そんな事を思ってから、いかんいかんと運んできた来た分厚いパンケーキに意識を集中する。
せっかくの高級ホテルの朝食なのだ。楽しまなければ損だ。
わくわくしながら頬張った刹那、目を瞠る。
ふわふわ! 一瞬で溶けて消える! なにコレ! さすが都会! 一流ホテル!
たった今目にした二人の作家の様子など些事とばかりに一瞬で忘れたルクスは夢中でスイーツと呼ぶべきパンケーキを堪能するのだった。
----fin----
■ルクスの疑問■
「首なし先生ってミステリとか推理系ばっか書く人なのに、あの媚薬がどんなもんなのか知らなかったのかな」
そういった犯罪がらみの情報には詳しそうなのに。もはや隠す必要もないとルクスはディールに尋ねた。
「アレは昔から思い込みが激しい所があるからな」
「あー、なるほど」
****************
これにて完結となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
思い込みの激しい首なし先生受けも書き始めたもののまた停滞気味です。
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