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【本編】腹ペコ淫魔のヤケ酒に媚薬
16、一刻も早く二人きりになりたい
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部屋に入るなり、ドアが締め切る前に両者大きく開いた唇を合わせる。パーティー会場から部屋までの距離がひたすらもどかしく、触れるだけの可愛いキスなんてしていられなかった。
はじめから息が乱れるような激しい口付けを交わし、離れるのを許さないとばかりにディールはルクスの腰に腕を回して抱え上げ、ルクスはその腰に足で絡みつき首に手を回してされるがままベッドに運ばれゆっくりとベッドに背から下ろされる。
さすがオーガ。
普通なら腰を痛める体勢にもかかわらず、やすやすとそれをするディールにルクスは口元が緩む。逞しく、実に美形。普段落ち着いた大人の雰囲気しかないオーガが性欲に乱されるその様に気分がよくなる。
「まったく君は。女性どころか男にまで手を出されかけるなんて」
淫蕩な笑みを浮かべているルクスにディールは眉を顰め、咎めるように言った。
何を言っているのか。ルクスは呆れる。
「ライアさんは仕事で、あのナイスバディはディール狙いだっただろうが」
ついでにルクスとライアが仲睦まじくパーティーを楽しんでいるように見えて「距離が近すぎる」と苦言を呈そうとライアを呼びつけたのもディールだ。そのせいで盾を失ったルクスはナイスバディにからまれる羽目になった事をディール本人は完全に棚に上げている。
「彼女は役が欲しくて顔を売りに来た女優の卵だ。ビジネスだよ」
「なるほど」
んなワケあるかいと心中で即座に突っ込んだルクスの返事は棒読みだった。
そんなルクスの背に手を回したディールは羽の骨格をなぞる。そこはいつの頃からかディールによって性感帯に育てられている。
「あのコの羽大きかったよな」
大きな羽なら簡単に愛撫できるだろうに。つい口走ったルクスにディールは笑う。
「大きな羽は抱き締めにくいし布団もかけにくい」
茶化すディールの逞しい首に腕を回してルクスはぎゅっと抱きしめた。まるで縋るように。
「でもサキュバスなら……ディールのデカブツも挿れられると思うよ」
言わないのはフェアじゃない。ディールに生まれた可能性に気付きながらそれを黙っている事はルクスにはできなかった。対等でありたいのだ。
ディールにゆっくりと背を撫でられる。自然と体が硬くなっていたようだ。ディールのそれは先ほどまでの愛撫とは違う労わるようなそれだった。
「君も聞いていただろう? 朴訥なタイプが好みなんだ。サキュバス特有の派手な容姿はどちらかというと苦手なんだ。こんなナリだから慎ましいタイプには敬遠されてしまうが」
「おっと、ここに来て無意識なモテ自慢」
「君が理想的だと言っているんだ」
照れ隠しにおどけて見せたがあっさりと打ち返された。
「理想的な地味と言われた」
悔しくてなおも憮然とした風を装って言うルクスの頭を撫でながらディールは穏やかに喉を鳴らし、リップ音を立てるような可愛いキスをルクスの顔面すべてに落として行く。
「おい」
誤魔化すのか、と思ったがそれにしてはディールはひどくご機嫌で嬉しそうだ。
「『昼は淑女、夜は奔放』と『常時奔放』とどっちがいい?」
尋ねられたそれは━━
比べるまでもない。
ルクスは軽く目を瞠ってから気が緩んだように大きく嘆息した。
比べるまでもないのだとディールは言っているのだ。
さすが。言葉の魔術師とも言うべき職業を生業としている。
説得力が違う。
ストンと腑に落ちた気がした。
「君は?」
「うん?」
「君は元々は女性が対象だろう」
ルクスをじっと見詰めるディールの眼差しはいつになく真摯で、ルクスは思わずたじろぐ。
あー……
まぁなぁ。
出会いは『娼館の受付』だ。これほど『異性愛者』という主義主張もないだろう。
お互い心のどこかでどうしてもそれが引っ掛かっている。
「あんただって異性愛者だろ。あんたと同じだよ。言えよ、オルソン先生。ほら」
「ずるいな、君は」
そんな事を言いながらも苦笑したディールは淀みなく続ける。
「君が生きていてくれて嬉しい。君に出会えた事が私の岐路で、始点だ━━陳腐だな」
作家先生は不満だったらしく言ってから気難しい顔で自分の語彙力のなさを嘆くように首を振る。まるでこれでは足りないとでも言っているかのようで、そんなディールにルクスは口元をゆるめた。
先に言わせて悪いと思わないでもないが、これでルクスも気兼ねなく言えるというものだ。
「一緒だよ。あんたに出会えたから僕は生きられる。人生が軽くなった。いい意味でね。ずっと一緒にいられたら僕もうれしい」
「━━まいった」
完全に不意打ちだった。ディールは唸った。さきほども会場で聞かせてはもらったがまさか直接ルクスからそんな言葉を聞けるとは思っていなかったのだ。
「本当にずるいな君は」
「あんたのいない人生は考えられない━━は重すぎるか。インキュバスらしく『あんたは僕の食料になってりゃいいんだよ』、でもいいよ」
照れくさくなったルクスは冗談めかして言い募るように誤魔化したが。
「君が言ったんじゃないか。同じだよ。まぁそれが重いというなら……『お前は私専用の穴がお似合いだ』というところか」
いつもと違い少しだけ仄暗い笑みを浮かべるディールの久々に聞く乱暴な言葉にルクスはぞくぞくした。
はじめから息が乱れるような激しい口付けを交わし、離れるのを許さないとばかりにディールはルクスの腰に腕を回して抱え上げ、ルクスはその腰に足で絡みつき首に手を回してされるがままベッドに運ばれゆっくりとベッドに背から下ろされる。
さすがオーガ。
普通なら腰を痛める体勢にもかかわらず、やすやすとそれをするディールにルクスは口元が緩む。逞しく、実に美形。普段落ち着いた大人の雰囲気しかないオーガが性欲に乱されるその様に気分がよくなる。
「まったく君は。女性どころか男にまで手を出されかけるなんて」
淫蕩な笑みを浮かべているルクスにディールは眉を顰め、咎めるように言った。
何を言っているのか。ルクスは呆れる。
「ライアさんは仕事で、あのナイスバディはディール狙いだっただろうが」
ついでにルクスとライアが仲睦まじくパーティーを楽しんでいるように見えて「距離が近すぎる」と苦言を呈そうとライアを呼びつけたのもディールだ。そのせいで盾を失ったルクスはナイスバディにからまれる羽目になった事をディール本人は完全に棚に上げている。
「彼女は役が欲しくて顔を売りに来た女優の卵だ。ビジネスだよ」
「なるほど」
んなワケあるかいと心中で即座に突っ込んだルクスの返事は棒読みだった。
そんなルクスの背に手を回したディールは羽の骨格をなぞる。そこはいつの頃からかディールによって性感帯に育てられている。
「あのコの羽大きかったよな」
大きな羽なら簡単に愛撫できるだろうに。つい口走ったルクスにディールは笑う。
「大きな羽は抱き締めにくいし布団もかけにくい」
茶化すディールの逞しい首に腕を回してルクスはぎゅっと抱きしめた。まるで縋るように。
「でもサキュバスなら……ディールのデカブツも挿れられると思うよ」
言わないのはフェアじゃない。ディールに生まれた可能性に気付きながらそれを黙っている事はルクスにはできなかった。対等でありたいのだ。
ディールにゆっくりと背を撫でられる。自然と体が硬くなっていたようだ。ディールのそれは先ほどまでの愛撫とは違う労わるようなそれだった。
「君も聞いていただろう? 朴訥なタイプが好みなんだ。サキュバス特有の派手な容姿はどちらかというと苦手なんだ。こんなナリだから慎ましいタイプには敬遠されてしまうが」
「おっと、ここに来て無意識なモテ自慢」
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照れ隠しにおどけて見せたがあっさりと打ち返された。
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悔しくてなおも憮然とした風を装って言うルクスの頭を撫でながらディールは穏やかに喉を鳴らし、リップ音を立てるような可愛いキスをルクスの顔面すべてに落として行く。
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誤魔化すのか、と思ったがそれにしてはディールはひどくご機嫌で嬉しそうだ。
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比べるまでもないのだとディールは言っているのだ。
さすが。言葉の魔術師とも言うべき職業を生業としている。
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「君は?」
「うん?」
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ルクスをじっと見詰めるディールの眼差しはいつになく真摯で、ルクスは思わずたじろぐ。
あー……
まぁなぁ。
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そんな事を言いながらも苦笑したディールは淀みなく続ける。
「君が生きていてくれて嬉しい。君に出会えた事が私の岐路で、始点だ━━陳腐だな」
作家先生は不満だったらしく言ってから気難しい顔で自分の語彙力のなさを嘆くように首を振る。まるでこれでは足りないとでも言っているかのようで、そんなディールにルクスは口元をゆるめた。
先に言わせて悪いと思わないでもないが、これでルクスも気兼ねなく言えるというものだ。
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「本当にずるいな君は」
「あんたのいない人生は考えられない━━は重すぎるか。インキュバスらしく『あんたは僕の食料になってりゃいいんだよ』、でもいいよ」
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「君が言ったんじゃないか。同じだよ。まぁそれが重いというなら……『お前は私専用の穴がお似合いだ』というところか」
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