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第4章 【スピンオフ】やらかし王子はバリネコドS隊長に啼かされる

12、※武闘会の夜はハメを外すもの

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「隊長ちょっと今、時間いいですか?」
 執務室で今日の大会に出場者した隊員の記録をつけていると、ドアをノックして顔を出したセカドが妙に改まって言う。
「どうした?」
 帰ったんじゃなかったか。
 顔を上げれば、困り果てた様子のルディがドアの向こうに立っていた。
 あ?

「ほら入って」
 同じく帰ったはずの第一副官のファウストに促され、ルディがおずおずと入室する。
「元隊員が挨拶に来ていますよ。よく頑張った元隊員に俺達からのご褒美です」
「あ?」
 思った以上に不機嫌に響いた俺の声にルディの肩がびくりと震える。
 顔の腫れは多少はひいたか。
 大会の怪我は出場の名誉とされ、魔術による治癒は翌日施される事が多く、痛々しい顔で飲みに興じるのが通例だが━━さすがに怪我がひどすぎて少し治したらしい。あのままだと有事の際に支障が出るだろうし何より王族。きれいな顔の王子の顔がボコボコなのは周りの連中も気まずいだろう。

「す、すみません、あの」
 今日の一番の花形功労者が小さくなっている。
 ファウストはこれまで頑なにルディに一線を引いていたはずだ。どういうことだとファウストを睨んだのだが。
「隊長、飲み代ください」
 堂々とそんな事を言いやがった。
 コイツは本当に……
 セカドが笑って補足する。
「ファウストと夕飯食べに官舎の食堂行ったら僻地部隊も来たところで。皆せっかく王都まで出てるんだからどっかうまい店でもと思いまして。というワケで隊長おごってください」
 普段国境を守っている隊で、今日は優勝者まで出したんだ。やぶさかではない。
「俺も行くわ」
 そう腰を上げようとすれば「財布だけで結構です」とファウストに冷たくあしらわれた。出資は中将たるものの務めと思えるが、参加を拒否するのはひどすぎないか。

「僻地部隊の隊員達がルディは国境や味方を守ろうと障壁の訓練してたって言うんで、じゃあうちもご褒美の一つもやろうかと思いまして」
 そう言ってファウストは肩をすくめ、金を受け取るとセカドと出て行った。強制的に連れて来ただろうルディを残して。コイツが主役だろうが。
 丸投げかよ。まぁ俺もあいつらに丸投げする事あるしな。信頼しているからこそ丸投げできるんだが。

 部屋に残され、困惑顔で途方に暮れ所在なさげにおたついているルディに嘆息した。
 放置するわけにもいかず顎をしゃくって執務机の前の簡素な応接セットに座らせたものの、ルディは縮こまっている。
「あの規模、初めてだって? 今日の障壁」
 しゃべらないのでこっちが声をかける。なんで俺が気を遣わにゃならんのだ。

「……はい。最前線に立つ皆さんを守れないかと」
 小さくぼそぼそ答える。
 ちったぁ考えたって事だろうか。
 どこに行ってもなぜか腹立たしいほど妙に可愛がられる奴だ。そういう相手に少しでも報いたいと思ったのならいいんだが。
 て言うか、そんな答え方教えたか? あぁ? 腹から声出しやがれ。

「本当はそもそも貴方を戦場に行かせたくないんです。貴方だけじゃくて、みんなも、誰も傷付いたり死ななくていいようにしたくて」
「てめぇが言うなよ」
 思わず低い声が出ればルディはつらそうに頷く。自業自得だと理解している様子で。目を逸らさなかったのだけは及第点だが。

 ……メンドクセェ。
 あ~~~面倒くせぇなぁ。

 ━━よし、ヤるか。
 
 前と同じようにルディの胸倉をつかんで立たせる。隣の仮眠室に踵を返せばルディは慌て抵抗して来た。
「ちょっ、たいちょ、ちょちょちょ、話! 話をしに来たんです!」
「じゃあしゃべれよ」
「何を話したらいいのか分からなくて……」
 苛立ちのままベッドに突き倒した。

「ヤるのかヤんねーのか、決めろ。ヤんねーなら飲み行くぞ」
 二択なら選べるだろ。
 そう思ったんだが。
 ルディはベッドに座った状態から恐る恐る見上げて来る。

「あの、口でしてもいいです、か?」
「あ?」
 コイツなに言ってんだ?
 イラっと来た。強い不快感。
 それはルディの不可解な会話の順序に対する苛立ちではなく。

「んなもんどこで覚えた?」
「先輩方に好きな男性がいるけどどうすればいいか分からないって相談したんです。そうしたら『くわえたら一発だ』って」

 ……そうだ。
 こいつなんでも聞くやつだった。
 無知で、それを恥じない。
 素直に教えを請い、従う。王族らしくないと思う。
 だからどいつもこいつも放っとけなくなっちまうんだろうなぁ。

 どうしたもんかと逡巡しているうちに立ち上がったルディに両肩に手を乗せられ、すんなりと位置が入れ替えられる。
 ベッドに座る俺の足の間にルディが腰を落とし、床に膝をついておずおずとベルトに手を伸ばして来る。

 コイツは王子様だ。それも極上のツラの。
 そんな奴がかぱりと口を開ける。

 マジかよ。
 王族が、そんなこと。ちらりと見えた口内の赤い肉にぞわりと総毛立つ。
 外気に晒された陰茎が期待に脈打つ。
 薄い唇をかっぽり開け、少しだけ芯を持ち始めたそれをぱくりと咥える。
 その瞬間思わず腹筋がビクリと波打った。
 
 ……
 そういやコイツ、めちゃくちゃ不器用だったな……

 思わずルディの向こうの壁を見つめてしまった。
 本当に咥えただけだ。そりゃいかにも「無垢です」みたいなきれいな王子様に舌遣いなんぞ教えづらいわな。
 どうですか、と言わんばかりにこっちを上目遣いで窺うのやめろ。
 ど下手くそだわ。

「代われ」
 本当のフェラってもんを教えてやった。

 ■■
「あの、もう私だけにしてもらうわけには……いきませんか。がんばるんで」
「あン?」
 人のケツ穴いじりながら何言ってやがる。集中しろ。いつまで四つん這いにさせているつもりだ。

「だって、なんか……柔らかい気が……」
 ……なんでケツの具合とか、そんな違い分かるんだ?
 僻地にいる間に男の味を覚えたか。男ばかりの軍隊生活だ。しかも顔も地位もやたらいいとくりゃ相手は選り取り見取りだろう。フェラはど下手くそだったが、される側一辺倒だったとしたら納得だ。

「ファウストさんやセカドさんと三人でとか、私が二人分頑張りますから」
「……あ? 何言ってんだ。隊員とヤるワケねーだろ、陰口やら修羅場やら面倒事はご免だ」
 当然だ。誰に何を言われたのやら。

「え、違うんですか。だってファウストさんが朝まで慰めるって」
 やっぱりアイツか。だと思った。
 たまにあの二人と飲んで、隊員には聞かせられない愚痴を延々聞いてもらうだけだ。ファウストは俺の高い酒を目当てに淡々と聞いてくれるし、セカドは酔いが回ると最終的に一緒になって愚痴を吐く。

 それを言えばルディは怪訝な顔つきで聞いて来る。
「じゃ、なんで私と」
「あ? お前はうちの隊員にはならないの分かってたし。━━なぁ。二人分、つったな? 気張れよ」
 挑発するように笑んでやった。
 ちなみにファウストは一見よく聞いてくれるように見えるが、すべて綺麗に聞き流して酒の味を楽しんでいるだけだと思う。ああ見えてアイツは酒好きだ。

 指を突っ込んだまま腰を抱かれ、べったりと背中に貼り付いて来る。背に何度も口付けられその度に体が小さく反応する。  
 その反応に気が大きくなったのか、じゅと跡をつけられたのを感じた。
「んな事どこで覚えたんだ」
「前に……ハルさんがすごい跡だらけだったのが不思議だったんですけど、隊にいた先輩も似たような跡をつけていらしたんで聞きました」
 本当に何でも聞くなコイツ。なんでなんでと小さい子供かよ。
 そんなんだから意外と可愛がられるのかね。

「おい、もう入れろ」
 もう充分だろという所で挿入させたのに、そのまま耐えるように眉を顰め動かない。
 ……くそ、焦らしてんじゃねぇよ。
 と言いたいところだが動くとイきそうなんだろうなぁ。ずっと跳ねるくらいビンビンだったもんなぁ。
 相変わらず顔に似合わない立派なイチモツで入れられただけでクるが。

「そのデカいちんこはお飾りか。いっつもそんなヤワなセックスしてるのかよ。役立たずちんこって言われたくないなら腰振れ。なんでちんこだけこんなに立派なんだよ」
「ちんこちんこ言わないでくださいよ! あれ以来してないですよ! 誰とするんですか! するワケないじゃないですか!」
 怒った。
 珍しい、けど。

「知るかよ」
 本当に知ったこっちゃない。
 ゆるりと腰を遣って挑発するとルディは息を詰めた後ふー、と長く息をつく。
 お、耐えたか?

「遠慮しなくていいんですね?」
「言うじゃねぇか」
 ってカンジで俺、本当に期待したんだよ。
 期待したっつーのによぉ。

 そりゃ最初は後背位でガンガンに突いて来てコレコレって感じだったよ?
 いい具合に高められて、ぶっちゃけすげぇヨかったよ。
 それがよ。

 俺でイけねぇって、失礼じゃねぇか?
 自慰で強く握り過ぎるとイきにくくなるとは聞くが、軍人の握力で扱き続けでもしたのかよ。

「……」
「おいどうした」
 なんだこの中途半端な間、遅漏か。

 長く楽しめるのは悪くないが度が過ぎると白けるんだよ。
 中途半端に微妙に終わるなんぞ腹が立つんだが。

「てめぇ、これで終わりっつーんじゃねぇだろうな」
 振り返り、訓練時と同じ低音で脅さずにはいられなかった。

「たいちょうが……」
「あ゛ぁ?」
 うつむいてぐずぐず言う奴に不機嫌に唸って促す。
 
「隊長が後ろ弄ったりするから時間かかるんですよ!」
 顔を上げて目を合わせて来たルディは真っ赤で、ちょっと涙目だった。
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