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高等部編
公爵令嬢という立場_1
しおりを挟むお菓子の舞踏会はリュカと、魔術師の舞踏会はアレックスと行く約束をしておきながら、ドレスや宝飾品はオスカーからも貰うつもりだったのか。ちょっとそれは酷いなあと思ったが、私が口を出すべきじゃないからやめておいた。
「サシャ……これはさすがに、もう私の手には負えないわ」
「そうね。社交なのだから、色んな人と行くのは別にいいのよ。むしろ姉さん達なんかそれこそ、舞踏会・お茶会ごとに男をとっかえひっかえしてるわ。でもねえ……ソフィアちゃんって、なにか焦ってるみたいに見えるけど?」
サシャが心配そうにそう言うと、彼女の大きな瞳が、さらに大きく見開いた。
それからサシャを睨むように見つめている。いつものように、自分自身の事になるとソフィアは黙っていたが、サシャには敵意のようなものを向けていた。攻略対象なのに、自分の味方に付かなかったから切り捨てたのかな?
雨が弱まってきた。もうすぐお昼休みも終わってしまうし、戻りたい……そう思っていたら、野次馬の中にエリアスの姿を発見した。
さっきまでいなかったのに。食堂か喫茶室にでもいたんだろうか。私と目が合うと何かを言いたそうにしていたので、茶番劇を早く終わらせることにした。
「学舎の中に戻りましょう」
私は、野次馬をしている学生たちにも聞こえるように発声した。
お妃教育で、大勢の前で話すときには、「『A』の音で始まるよう発声しなさい」と教わっていた。
この世界も音階があり、「ABCDEFG」はそのまま日本の「イロハニホヘト」。馴染みの深いドレミで言うと「ラシドレミファソ」。
強めに言ったせいか、まず反応したのはアレックスだった。アレックスは伯爵家の三男で、彼が家を継ぐことはまずない。だからこそ騎士としても実績を挙げて、階級社会で生き残ろうとしている。
彼は「命令され慣れている」。
サシャが私を引っ張り出してきたのも、ノワイユ侯爵家とオルレアン伯爵家のご令息同士の争いに「命令」出来るのが、公爵令嬢である私か、ラファエル様くらいしかいなかったからに違いない。今日、ラファエル王太子殿下は公式行事で学園にはいない。
「もう一度言います。戻りましょう」
今度は低めに発声した。周りの学生がさざめく。皆の目に、私が高慢に写ったとしてもそれでいいと思っていた。だって寒いんだもん。
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