108 / 114
高等部編
クラスメイトの課外授業(薬学)_2
しおりを挟む私が黙っていたら、エリアスが「せっかく来たからちょっと土いじっていい?」と言うので、彼が作業するのを目で追った。何も植わっていない場所の土を掘り起こしてる。土壌改良してるのかな。掘り返して表面の土と下層の土を入れ替えてるみたい。時々出てくる小石を除けながらやってて、ちょっと楽しそう。私は隣に座りこんで言った。
「私は未来の出来事がわかるの。それが本当に起こる事かどうかはハッキリとはわからないのだけど」
「……千里眼みたいな力?」
エリアスが手をとめて私の方を向いた。至近距離だと恥ずかしくてまともに顔を見られない。足元の土に視線を落とした。
「いいえ。自分の周りの身近な事しかわからない。ソフィアは聖女の素質を持っている。この国を助けるその力に目覚めるきっかけは、私の死」
土の匂いがする。……ああ、いよいよ変な奴だと思われただろうな……。
「悪魔を召喚して我が身を滅ぼすらしいのよ。私が悪魔を呼ぶなんて!どうやってやるかもわからないのにね!」
私は笑いながら立ちあがった。スカートの裾に少しだけ泥がついたけど、まあいいかとそのままにしておいた。一呼吸おいてエリアスも立ちあがる。彼は本当に背が伸びた。見上げないと話せない。
「突拍子もない話だけど、信じるよ」
真剣に言ってくれるから、心臓がとまったんじゃないかと思う位に胸が苦しくなってきた。『クラスメイト』はいつも味方でいてくれる。柄にもなく泣きそうになっているとエリアスが笑った。
「アリスが死ぬのはいやだな。君がいると学園が賑やかだからね。君のいない世界はさぞ面白みがないだろう」
「私がトラブルメーカーみたいな言い方やめてよね!巻き込まれてるだけなんだから!」
私が怒ると、エリアスが面白そうに笑って「戻ろうか」と言った。そして、成分を調べたいからあのお菓子を預けて欲しいと言われた。
「食べちゃだめだからね」と念を押して、包みごと手渡した。媚薬がエリアスに効いたら困る。
週に2日位は放課後、薬草園に来て、管理や観察をしているそう。高等部入学の際にフランドル伯が手配してくれたらしいので、あのおじいちゃんは、エリアスが植物の研究が好きな事を知ってるみたい。それを聞いて、ふとあの白百合の事を思い出した。
「……以前、エリアスがお詫びにと贈ってくれたあの花は、もしかしてエリアスが育てたの?」
「花?……ああ、グレース……」
思い出したようで、エリアスが笑う。
おっと、かっこよすぎてまた鼻血が出そうだぞ。
「庭で育てている。この冬も咲くように大事にしている。また贈ろうか?」
「是非!」
そう言ったあとで、あの白百合は夫が妻に贈ったものだと思い出した。名前の由来を知ってるかどうかは恥ずかしくて聞けなかった。
0
お気に入りに追加
1,732
あなたにおすすめの小説
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。
王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、
大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。
「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」
乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン──
手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる