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高等部編
王宮図書館探検隊_2
しおりを挟む礼拝堂の外に逃げ出して深呼吸をしていると、リラが小さな声で言った。
「まさか例の方に、王城でお会いするとは思いませんでした。ジュリアン様とも数回お会いしてるようですのに、王太子殿下とも……」
それが聞こえたのかはわからないが、ガブリエルが言った。
「あの子、この前も見た気がするよ。その時はエヴルー侯爵が一緒だったと思うけど。今日はラファエルと二人きりなんだね」
「え?リュカも?珍しい」
オスカーとアレックスだけでなく、やっぱり他の皆もヒロインちゃんに攻略されてるのか。
思った以上に、ヒロインちゃんのフットワークが軽い。素直に凄い。学業も優秀だから、勉強だってしてるだろうに、その上で積極的にアタックしてるのかな。面倒くさがりの私には到底真似できない。
好きになっちゃうのは自由だけど、シュラバにならないのかな?ゲームでもあんまり節操なしに同時攻略してると、地雷踏んで好感度が下がるイベントもあったような……。
ヒロインちゃんわかってない?というか無自覚愛されヒロイン体質?
そう考え事しながら歩いていると、不意にフランドル伯に声を掛けられた。
「以前、あなたは王太子妃にはなりたくないとおっしゃっていたが、それは今でも変わりないのかな?」
横に立ったフランドル伯は、見た目は優しいおじいちゃん。でも質問はやっぱり直球でいきなり本題だった。無駄がない。
「……はい。私は王太子妃にはなりたくないです」
今更取り繕っても仕方ないから、私も正直に答えた。
「儂が聞いた話だと、あなたは王太子殿下から正妃にと望まれているのだから、断る理由もないと思うが?あなただけではないが、王家の予算を使ってお妃教育も受けている。その責任はどうするのかな?」
フランドル伯のはっきりとよく通る声。きっと前を歩いているエリアスにも聞こえている。聞かせているのだろうと思う。辛い。
「教育をして頂いたのはとても有難いと思っています。何らかの形で国家のために尽くすつもりはあります……」
「何らかの?」
「国難に役立つような」
「国難……か」
フランドル伯は考え込むように言葉を切った。はっきり言って平和なこの国に難事は見当たらない。多分、それこそ私が国難なんだろう。悪魔を召喚するのだから。
――私が悪魔を召喚して聖女が目覚めるとか説明しても、絶対頭おかしいって思われるだけで、わかってもらえないだろうな。私も半信半疑だもの。
それきりフランドル伯は何も言わなかったので、私も王宮図書館に着くまで何も喋らなかった。
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