私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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高等部編

突然昼メロになるのヤメロ!_1

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 恥ずかしながら、前世の私は年齢イコール彼氏いない歴だった。お妃候補であるアリスも、無論、特定の誰かとお付き合いなどしたことがない。家族や友人と友愛のキスをすることはある。けれど恋情からの「キス」などという行為は初めて。しかも相手は王子様。だから自分が置かれているこの状況を、どう打破すればいいか全くわからない。 
 ――要するに私は混乱していた。


 私の唇に触れる、ふわっと柔らかい感触。さっきまで私が映り込んでいた蒼い瞳は、今は閉じられている。睫毛が長い。金色でとても綺麗。私の腰にある腕は力強い。もう子供じゃないんだな、とぼんやり思っていた。私もそう。目覚めたときは14歳だったけど、もう16歳になった。胸だって膨らんで、以前より体は丸みを帯びている。
 ラファエル様の手が私の背を撫で、甘噛みするように少しだけ口を開いた。
 思考が鈍っていたけど、急に「怖い」という感情がせりあがってきた。
 逃げようとしたけど、首を支えられていて簡単には逃げられない。私は力いっぱい両腕を突っ張った。

 視界が開ける。周りには誰もいなかったけど、ここが学園なんだと思い出して、急に恥ずかしくなる。口を拭って睨みつけていたけど、多分、顔が赤い。

「はあっ……何を……無体な……っ」

 ラファエル様を押し返して、後ろに下がり、足を踏ん張ってとりあえず一発殴っといた。本当はグーで殴りたかったけど、パーにしといた。一応、相手は王子様なので。不敬罪だなと思ったが仕方ない。殴られて当然の事をしたんだからな!!!

(わ、私のファーストキス!私の足掛け38年のファーストキスがっ!!!)
22+16年分の重みがあるなんて、ラファエル様にはわかんないし、関係ないだろうけどね!

 思い切り平手打ちを食らったのに、ラファエル様は怒ったりしなかった。それよりも薄っすら笑っているようにさえ見える。

(ど……ドMなのだろうか……?)と心配していると、ラファエル様は頬に綺麗な手を当てて、にっこりと笑った。

「僕は君が好きだ、アリス」
「……お、お忘れですか?以前『私の気持ちもお考えください』と申し上げましたよね?!」
「そうだよ……だから、こんなに我慢してるじゃないか。君の返事なんか待たずに、このまま後宮に連れて行って閉じ込めたいのを我慢してる」

(これで……これで我慢してるっての?!?!乙女のファーストキスをいきなり奪っといて?!?!)

 私はめちゃくちゃ動揺してたけど、私を見つめているラファエル様の瞳は曇りなく美しい。真っすぐに好意を向けられて戸惑った。それを見透かしたかのように、ラファエル様は「彼」の名を口にした。

「君が他の人を見ているのはわかっている。でも君はその彼から、彼のご両親の事を聞いたかい?彼……エリアス・アヴェーヌのご両親と祖父の事について」

(両親と……祖父?何の事……?カーラが言う通り、何かあるの?)

 急激に頭が冷えていく。
 ラファエル様は何かを知っている。
 ラファエル様は切り札を切ろうとしている。怖い。

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