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高等部編
王子様が黙ってない_1
しおりを挟む「さっきソフィアは倒れたのよ?いまは医務室にいるわ!」
「倒れた?大丈夫なの?何故?」
「白々しい!アレックス様が側にいらしたから良かったものを!あんたがなじったんでしょ?見ていた人から聞いたのよ?」
見ていた人?野次馬の生徒たち?
訳が分からないし、どうやらまた言いがかりをつけられてるようなので、若干私も腹が立ってきた。「なじったりなんてしてないわ」と語気を強めて言う私に、コラリィは怒りをつのらせたようだ。つかつかと歩み寄ると、私の眼前に迫ってきた。
「あくまでしらを切るの?あんた庭園でソフィアと話してたでしょ?他にもたくさんの人が見てるのよ?自分だってさっきまで庭園にいたって、そう言ったよね?」
「ジュリアン……私の弟の話をしていたら、彼女が急に泣き出して……」
「泣くような事を言ったからでしょう?」
私の話を聞きもせず、コラリィは私の制服の肩口につかみかかってきた。
この子、こんなに喧嘩っ早かったっけ?こっわ。ふつーに痛い。
「おやめなさい!いくら学園内では身分の垣根がないとはいえ、公爵令嬢に対してその振舞いは無礼ですよ」
私が口を開くより先に、横にいたジュリエットがコラリィを咎めた。
「ハッ!お貴族様はこれだから。身分を出せば皆黙ると思ってるの?黙らないわよ、私はソフィアの友達だから―――」
「やめないか、二人とも」
ジュリエットとコラリィの間に穏やかに割り込んだのはラファエル様だった。ラファエル様は私を守るように腕を伸ばして、コラリィの手に優しく触れている。
色素の薄い私の髪と違って、輝くようなきらきらした金髪。蒼い瞳は落ち着いているけれど、強い意思を感じた。何より仕草に気品があるから、見慣れている私やジュリエットはともかく、コラリィはその美貌に圧倒されていたようだった。
「……王太子殿下……」
さすがにまずいと思ったのか、コラリィはすぐに手を引っ込めた。ちょっと顔が赤かった気がする。入学式の日にコラリィは「王子様かっこいい!」って言ってたし、びっくりしたんだろう。
ジュリエットは「殿下、お見苦しい所を。申し訳ございません」と詫びてすぐに下がる。
「アリス、こちらへおいで」
優しく微笑みながら、ラファエル様が私を抱き寄せる。
(やめてーーー!二人をとめてくれたのはありがたいけど、また教室で『俺の女』状態で話すのやめてーーー!!!)
「話は聞いたよ。庭園でソフィア嬢に向かって『手作りの菓子などみすぼらしいものを持ってくるな』となじったと。君はそんな事を言う人じゃない。……アリスがそう言ったのを伝聞ではなく、直接聞いた者はいるか?」
ラファエル様がそう問いかけると、さわさわしていた教室が鎮まった。
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