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高等部編
私のお手紙
しおりを挟むフランドル伯に手紙を書こう、私はそう思っていた。エリアスと私は、学園の外で個人的に会うことは許されていない。でも一度でいいから、王宮図書館に一緒に来てほしい。
この半年で思ったが、カーラの報告通り、本当にエリアスは基礎教養が身に付いている。高等部からの編入組で、授業についていけず補習を受ける者もいるが、エリアスは違った。ちなみに、平民のクラスは本来の授業内容を変えて進行しているそう。
本人も好きだと言っていたが、エリアスは歴史に詳しい。だから、一緒に色々調べて欲しかった。相談したかった。今まで一人で作業して、限界を感じていたから、他の誰かの助言が欲しかった。
「それでアリスの力になれるのなら、俺からも父とフランドル伯に頼んでみる。……そういえば、何度か手紙に書いていたな。王宮図書館で何かを調べていると」
「……読んで、覚えててくれたの?」
「あれだけ、しつこく届けばね」
そう言ってエリアスが少し笑った。嫌がられてはいないみたい。良かった。読まずに暖炉に放り込まれてるんじゃないかと思ってたから。
「君が度々手紙をくれたから、入学式の日に久しぶりに会っても、何故か距離を感じなかった。はじめは困っていたけれど、いつの間にか、四季の折々に君から届く手紙を心待ちにしていた……」
エリアスのその言葉を聞いて、私は(しぬ?いましんどく?いましんどけば、かなり幸せ死に方じゃない?)と思っていた。
待っていてくれてたなんて。
「返事は出来ないけれど、全部読んでいるし、とってある。そろそろ保管場所に困ってきた」
エリアスが笑う。
カブリエルとは友人になって、彼が典礼などを司る紋章院で、紋章官になってからも、度々下町であっているそう。ガブリエルは「ひどい皮肉だろ? 庶子の僕が、貴族の系譜や紋章を管理する紋章院で働くなんて」と笑っていたらしい。
私が去年、夏風邪で欠席した『お菓子の舞踏会』は、毎年開催場所が変わり、今年はコルベール伯爵家で開催されるから、サシャの三人のお姉様方が、いよいよ結婚相手を決めるのでは?と楽しみにしている事など、たくさん話をしていたら、あっという間に午後の授業が終わる時間になった。
教室に戻るとカミーユが飛びついてきた。
「アリス様、どこに行ってらしたの?心配しましたわ」
「気分が悪くなって、庭園で休んでいたの」
「庭園……」
教室内がざわついている。もう放課後になるが、大部分の生徒が居残っている。
「あの、カミーユ、何かあったの?」
「それが……」
カミーユが説明しかけた所に、教室に乗り込んできたコラリィが口をはさんできた。
「あんたがソフィアに酷いことを言ったそうね?」
突拍子もないことを言われ、その「あんた」が「私」を指すのだと理解するのに時間がかかった。
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