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高等部編
女子は再びトークする
しおりを挟む着替えてお茶を飲みながら、二人にサシャの事を相談した。
「あら……まあ……まあ……うちのお嬢様は皆様に好かれてますねえ」
リラがなんだか嬉しそうに笑っている。ゴシップ記事に食いつく噂好きなオバチャンみたいな表情をしている……。
「いや、でも本命に好かれてないから意味ないじゃん……?」
「まあ、それはそうですね」
納得したような小さい声でカーラがそう言うから、私はまた泣きそうになっていた。
リラもカーラもサシャの事はあまり知らないようだったから、簡単に説明した。
サシャの父コルベール伯爵は、港町を有する伯爵領で貿易業に専念して、国政には関わらないスタンスをとっており、父親同士の縁は薄い。でもサシャの母コルベール伯爵夫人も、サシャの三人のお姉様方(※全員未婚)も派手好きなので、社交界ではかなり目立つ存在。
うちで開催される夜会に、度々コルベール伯爵夫人も来ている。
王国一の資産家で、その財力は上位貴族は勿論、王家をしのぐとも噂されているけれど、当主であるコルベール伯爵は女性陣&サシャに押されてかなり影が薄い。……あ、顔も思い出せない……。
サシャ自身は、ご両親のどちらにも似ている。
お母様のように派手好きで華やかだけど、お父様のような見識の広さと洞察力があると思う。
「去年、サシャが自分の領地について話してるのを聞いたけど、とても詳しかった。髪飾りが好きだからいつも頭は花だらけだけど、頭の中身はお花畑じゃない。物凄くしっかりしてる」
コルベール伯爵領には貿易港があるから、海賊行為を行う船を取り締まるために海軍まで有している。操船に長けた者、海での戦い方に詳しい者、航路を読む者、近隣の港町の権力者等々、協力者には礼金を惜しまないから、有能な人材が揃ってるそう。現場は軍事の専門家に任せるのだろうが、いざとなったら領軍の指揮をとるわけで、それは並みの能力じゃ出来ない事だろうと思う。
「舞踏会やお茶会でのお姿しかお見掛けした事がないのですが、奥深い方ですね。自分にないものを持っているアリスお嬢様に惹かれるのかもしれませんね」
「カーラ、それ、間接的にけなしてない?」
「……いえ、天真爛漫なお嬢様は、先を読み過ぎるサシャ様にとっては安心出来る方かもしれませんよ」
フォローしてくれたが、やっぱりけなされている気がした。
「正直に話せば、お味方になってくれそうな方ですけど……お相手が好意を示された今となっては、二人きりでお会いになるのも、ちょっとおすすめ出来ませんねえ……」
リラがそう言って、空になったティーカップにお茶を注いでくれる。
「そーなんだよねー……だからって他人がいたら出来る話じゃないし……」
私はソファに寝転び、それからも三人でリュカの事等をあれこれと話したが、そんな心配は無用だった。
何故なら、ヒロインちゃん無双が始まるから、それどころではなくなったからだ……。
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