私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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高等部編

私に構わずヒロインのところへ行け!

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「何やってんのー?お前らみんな怖い顔して」

 オスカーがふらっと現れて、面倒そうにサシャとリュカの間に割って入った。

 「俺も騎士を目指そうかな」なんて言ってたオスカーは、今は近衛府にいる。王家直属の近衛兵……といってもまだ見習いだけど、正式に所属している。アレックスの父オルレアン伯率いる騎士団とは別の組織。騎士団は戦争があれば最前線へ行くけれど、近衛兵は王宮勤めになる。

 オスカーは騎士を希望したらしいのだけど、父ノワイユ侯爵がそれを許さなかったと聞いた。
 オルレアン伯とノワイユ侯の仲が悪いからなのか、もし戦争が起きた時に前線に行かせたくないからなのかは解らない。

 近衛兵は国の儀礼の際にも色んな役目があるから、礼儀にも厳しいらしい。オスカーは前より姿勢が良くなった。相変わらず元気で爽やかだけど、鍛錬で体も引き締まって男らしくなった。

「アリス、どうした?何か揉めてる?」
「オスカー……」

 そもそも何でこんな事になってるのか私が分かってないから、なんと説明していいかとオロオロしてると、サシャが言った。
 
「オスカーには引っ込んでて欲しいわねぇ。ややこしくなるから」
「何?俺はお呼びでない感じ?じゃあ、歓迎会に戻ろうかな。昼食始まるよ。行こうぜ、アリス」

 そう言ってオスカーはごく自然に私の腕を引いたから、サシャが叫ぶ。

「ちょっとぉ!アリスちゃんを連れていかないでよ!当事者なんだから」
「え?何?アリスの事で揉めてんの?」

 オスカーがちょっとわざとらしいくらいに驚いた表情で言うから、わかってない振りして、私を逃がそうとしてくれてるんじゃないかって気がしてきた。サシャが諦めたような顔で両手を挙げた。

「あーもう!いいわ、今日は。確かにまだ早かったかも」

 リュカはずっと無言だったが、サシャがそう言って歓迎会の会場へと戻っていくのを確認して、ようやく私の方に振り返った。腰まで届く長い髪が目の前で揺れる。リュカは侯爵家を継いでからますます忙しいようで、最近はあまり言葉も交わしてなかった。リュカが一番背が伸びた。アイスブルーの綺麗な瞳で見下ろされてちょっと怖い。

「君はあまり一人で行動しないように」

 淡々とそれだけ言い、踵を返すとさっさと立ち去ってしまう。クーーーール。



 ええと、整理しようか。これは……私がモテている……?

 お、お前らー!!

 私に構わずヒロインの所へ行けよーーー!!

 そりゃ、仲良くしてきた幼馴染達だから好意は持っている。でもラファエル様含めて、それはあくまで友人としてだ。ただ、私たちは甘酸っぱい16歳。思春期の多感なお年頃……。

 あ、甘ったるくて胸やけしそう……そう思ったけど、ここは乙女ゲームの世界。
 ヒロインに向かってドロドロに甘い言葉を囁くロマンチストだらけなんだった……。

 オスカーが「なーアリス、飯食いに戻ろうぜ?」と言うから、本来の目的を思い出した。

「オスカー、ごめん、私は医務室に行きたいから」
「アリス、具合悪いの?」
「いえ、さっき友人が怪我をして……様子を見たいから」

 別に友人じゃないけど、説明が面倒だからそう言って私は歩き出した。

「んーじゃあ、俺ついていく」

 さっきリュカが私に「一人で行動するな」と言ったからなのか、オスカーが後ろからついてきた。

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