76 / 114
高等部編
ヒロイン友人vs悪役令嬢_1
しおりを挟むヒロインちゃんと王子様はきっと二人で東屋へ行くだろう。スキップ出来ないイベントとして。
ハート飛んでないかな? って思うくらい、ヒロインちゃんはうっとりとした視線でラファエル様を見つめている。ラファエル様は優しげな眼差しでヒロインちゃんを見つめ返している。
私の脳裏には(イエス、フォーリンラブ)というワンフレーズが何度も再生されていた……。
それよりも、私はコラリィをどうしようかと思っていた。さっき、何故か私が突き飛ばしたと思い込んで、いきなり手をはたきやがった。伝聞だけなら、完全に私が悪役。コラリィは私を睨みつけた後はずっとこちらを無視している。
だから、私はコラリィの肩に手を置いて言った。
「何か誤解なさってるようだけど、私は彼女を突き飛ばしてなどいないわ」
コラリィは私の手を振り払ってやはり無視した。取り付く島もない。
めんどくさい。……もういいか。めんどうになってきた。
そう思い始めた時、背後から「お待ちください」という凛とした声が聞こえた。
振り返らなくてもわかる。エリアスの声だ。
「アリス様は、誰かを突き飛ばすようなことはなさいません」
よく通る声だなと思って聞いていた。ああ、『クラスメイト』はやっぱりアリスを庇ってくれる。振り返ったら泣いてしまって何もかも台無しにしそうで、そのまま前を向いていた。
コラリィが私達の方を見て忌々しそうに言った。
「でも、現にソフィアは怪我してるじゃない。平民だから気にくわないの?酷くない?」
「突き飛ばす現場を見たのですか?」
「え?」
コラリィがひるんだ。私は確かに手は出していたけど、それは助け起こそうとしただけだし、事実、突き飛ばしてはいない。
「それは……」
言い淀んだコラリィが視線をさまよわせていると、隣にいたラファエル様が口を開いた。
「アリスはずっと僕の隣にいたよ。突き飛ばすなんてことはしていない。それより、怪我人を放っておけないよ。誰か彼女を医務室へ運んでやってくれ。足を痛めたようなので」
「え、ラファエル様がついていくのでは?」
私が思わずそう言うと、ラファエル様が笑いながら返答した。
「僕は君のそばにいるよ」
えーーーーー行っていいんですよ?王太子妃が別の人になるのは全然構わないんです。むしろ、そうして頂きたいのに。
その時、ふと気づいた。コラリィが私に絡んだこの件、ソフィアは何も言わなかった。
突き飛ばされたかどうか、なんて本人が一番わかっていただろうに。意図的なのか単に口を開くタイミングが掴めなかったのかわからないけど、なんだか嫌な感じがした。気のせいかもしれないけど。
そして、私にとっては一番関わって欲しくない人が、ソフィアを医務室へ連れて行くことになった。
エリアスがソフィアをお姫様抱っこしてる……。
こんなの見たくなかった……。このパターンは想定していなかった。ゲームでは悪役令嬢側として、ヒロインとの好感度に左右されないはずの『クラスメイト』エリアス。でもその彼は、高等部入学前にメインキャラクターである私の幼馴染達に出会ってしまっている。私はフランドル伯と父との約束で会うことが出来なかったけど、幼馴染達はエリアスと仲良くしていたようだから、どこかでシナリオがずれてもおかしくない。
ソフィアは可愛い。誰の目にも可愛いだろう。私のことなんか好きじゃないエリアスが、可愛いソフィアに惹かれてしまったらどうしよう。エリアスまでもが敵になってしまったら、私は耐えられない……。それこそ悪魔を召喚して国ごと滅ぼしたくなってしまうかもしれない。
0
お気に入りに追加
1,732
あなたにおすすめの小説
最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか
鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。
王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、
大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。
「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」
乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン──
手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは小説の世界だ。
乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私は所謂モブ。
この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。
そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
愛されない王妃は、お飾りでいたい
夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。
クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。
そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。
「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」
クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!?
「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる