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高等部編

クラスメイトと悪役令嬢

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 その日は曇天で、まるで私の心を表しているようだった。
 リラとカーラはいそいそと支度をしているが、私はのろのろと動いていた。
 私の髪を梳きながらリラが言った。

「いよいよ高等部ですね、お嬢様」
「そうね……いよいよ……」

 ついにこの日がきてしまった。

 高等部入学式。式典後の歓迎会で、ヒロインは王太子殿下と運命の出逢いをする。
 春に兄マクシムはダンピエール伯爵令嬢ルイーズと結婚した。ルイーズ嬢が王太子妃候補からおりてしまったため、私は悪役令嬢アリスへの道まっしぐら。
 母のお陰で、正式な婚約はしなかったが、王太子妃の第一候補のまま。
 シナリオの補正はどこまで私に関与してくるんだろう。


 初等部はグレーの制服だったが、高等部は黒が基調。少し大人っぽくみえるかな?

「髪はどうしましょうか?」
「そうね……。ハーフアップでおとなしめにしてもらえる?派手な髪飾りとかいらないから」

 ここからは、皆に近づかない!
 目立たないように生きるのだ!



 学園につくと、明らかに夏休み前までと雰囲気が違う。おっとりとした空気の学園が、なんだか賑やかだった。
 入学式の前に自分の教室を探した。高等部校舎は初等部の隣で馴染みもあり、さほどの不安はなかったが、本当に『クラスメイト』がいるのかどうか、私はドキドキしていた。


 ゆっくり来たので、教室にはすでに多数の生徒がいる。王命とはいえ、貴族の子女しかいなかった学園に数多くの平民が入学している。先生たちも苦労していると思う。クラス分けは暗黙の了解で、貴族と平民にわけられたようで、教室の中には初等部で見慣れた顔ぶれが揃っていた。

 入口のすぐそばで、サシャが笑いながら私に向かって手を振っている。今日は緑色の髪に色とりどりの生花をつけていて、やっぱり女子用のリボンをつけていた。

「おはよう、サシャ。お花可愛い」

 私がそう言うとサシャが「おはよー。アリスちゃんの席は窓際~」と教えてくれたので、そちらを向いた。

 窓際に立つその人に、私の視線は吸い寄せられた。

 黒髪に緑の瞳。ずいぶん背が伸びて、見違えるほどに精悍だった。
 エリアスは真っすぐ私を見ている。いつから見てたんだろう。

 サシャが「やーだー見つめ合ってる。アリスちゃんて、わかりやすーい」とからかっていたが、何も言えなかった。
 わかりやすいだろう。
 誰の目からもわかりやすいくらいに私は動揺している。心臓がバクバクしてる。

「おはようございます。お久しぶりです、アリス様」

 エリアスが少し笑ったように見えた。

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