私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

閑話 公爵令嬢の書簡3_1

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 エリアス・アヴェーヌはやはり困っていた。
 公爵令嬢から手紙が来ても、一切返事するなと父から言われていたのに、定期的に手紙が届くからだ。
 いつもの小柄な侍女が届けてくれるが、「持ってこないでください」といくら言っても届けに来る。仕事だから仕方ないのだろうが、可哀そうになってくる。


【公爵令嬢からの書簡】

『友人であるエリアス・アヴェーヌ様へ。先日はありがとうございました。直接御礼を言いたいのですが、諸事情によりお会い出来ないので筆をとりました。お加減はいかがでしょうか。アレクサンドルから怪我はなかったと聞いてはおりますが、疲労もあるかと思います。静養なさってくださいね。エリアスの働きがなければ、私の居場所が判明するのが数刻遅かっただろうと言われました。命を救って頂き、本当にありがとうございました。また、仕立て店メゾン女主人マダムフロベールから、汚れてしまった服を作り直したと連絡がありましたので、お送りいたします。店頭に飾るために全く同じものを作っていたそうです。どうかご笑納くださいませ。マダムのためにも返品などなさらないでくださいね。またお会い出来ることを心からお祈りいたしております。アリス・マグノリア・ルテールより』

 礼装は血に汚れてしまったので、仕立て店に戻して洗浄してもらったが、元には戻らなかったらしい。わざわざ作り直してもらって申し訳ないが、これを着る機会はないだろうと思う。
 返品は確かに失礼だろうから、衣装箱に仕舞いこんで忘れることにした。



【公爵令嬢からの書簡】

『友人であるエリアス・アヴェーヌ様へ。そろそろ雪解けですが、いかがお過ごしでしょうか。先日は王宮図書館へ初めて参りました。とても大きく、また蔵書も多く驚きました。あなたはどんな本を好まれるのでしょう。私は歴史書を探しております。この国の魔術の歴史についてです。もしご存知でしたら教えてくださいね。またお会いできることを夢見ております。アリス・マグノリア・ルテールより』

 本など久しく読んでいない。自分も歴史書を好むから、いつか王宮の図書館にも行ってみたいと思ったが実現するはずもないので忘れることにした。
 しかし、魔術の廃れたこの国で、アリス様はなぜ歴史を調べているのだろうか?
 この後も何通か『図書館にいった』という内容の手紙があったので、熱心に何かを調べているらしい。



【公爵令嬢からの書簡】

『友人であるエリアス・アヴェーヌ様へ。新年おめでとうございます。先日、新年の寿ことほぎ『銀竜の会』があり、私も出席してきました。久しぶりにギーズ大公殿下にもお会いしました。マルシェでエリアスに会ったと聞き、とてもうらやましく思いました。そういえば妹君はお元気でしょうか。いつかお会いしてみたいです。季節の変わり目です。ご自愛ください。アリス・マグノリア・ルテールより』

 王家に連なる親族が、新年の午餐に集まる『銀竜の会』。公式行事ではなく内輪の宴なので、毎年とても楽しいと聞いたことがある。確かに年の暮れにマルシェで買い出しをしていたら、ガブリエルに会った。しかし、正確には会っている。食事をしたりもしている。話しているうちに打ち解けて、友人と呼べる存在になっているが、ガブリエルはアリス様にはそこまでは話さなかったようだ。話せなかったのかもしれない。


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