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初等部編
それでも手紙を書き続ける
しおりを挟む学園はいつも通り賑やかだった。私のお見舞いに、と席まで来た幼馴染達が相も変わらず騒いでいる。
「リュカってば、侯爵様になるわけよね! すごいわあ! アリスちゃんに求婚しても大丈夫じゃない?」
サシャがそう言うと。リュカのアイスブルーの瞳が揺らいで、それから伏せられた。
「そうだな。コルベール伯爵家ご令息よりは、公爵令嬢を娶りやすいだろう」
「ちょっと! 乗り気? やあだあ! そんな反応だとは思わなかった~~~! こっちが赤面しちゃうう~~~!」
「リュカがライバルとなると手ごわいね」
艶やかなテノール。美しい金髪が飾る誰もがうっとりするほどの美貌。そして天性の穏やかな気質。こんな優しい王子様が婚約者なら、女の子は誰でも喜ぶだろう。
わざわざ私の教室まで来てくれたらしいので、私は立ち上がって一礼した。
「ラファエル様、おはようございます。ご心配をおかけしました」
「心配したよ。僕のアリス」
ラファエル様は絶句してる私を抱き締めた。公衆の面前で。
ざわつく教室は、以前までと違って祝福ムードになっている。
私的な場とはいえラファエル様の「俺の女」宣言に、サシャが「あーらら、実力行使されると王太子殿下には敵わないわあ~」と呟いていた。
抱き締めたまま、ラファエル様が言った。
「第一候補だ、第二候補だと周りが騒いでも、さっさとこうしておけばよかったよ」
あのー……私の気持ちはー……もうお空のかなたなのでしょうか……。
私はエリアスへ一方的に手紙を書き続けた。返事は来ない。「返事が来ない」ということが返事なのは十分わかっていた。
それでも、虚しくても、私は手紙を書き続けた。一度だけ、カーラと一緒にこっそりマルシェに行き、彼らしい人影を見つけたが、追いかけることが出来なかった。本当に拒否されてしまうのが怖かった。
そして、王宮の占星術師にお告げがきた。
「16年前、銀水晶の聖女が復活した」
――ゆえに16歳になる子女で特に秀でたものは、皆王立アカデミー高等部へ入学するように、と国王の名で国中にお触れが出る。
高等部に入学すればヒロインと対面することになる。そして多分、エリアスに会える。「クラスメイト」として。
私はラファエル様との正式な婚約は保留したままだし、マクシムお兄様は攻略対象外になった。
少しずつシナリオはズレているはず。そう信じたかった。
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