私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

私には好きな人がいますと叫びたい_2

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 母は、来客を告げたルベンを制するように手をかざした。そして、私の方を向いて「言ってごらんなさい、アリス」と言った。
 だが、いつもなら従うルベンがお母様の指示に従わず、歩みをとめなかった。
 どうしたんだろうと、私と母がルベンの方を向くと、老練の執事がややうろたえながら言った。

「フランドル伯は大変お怒りのご様子なのです。旦那様がちょうど湯浴みされていて、すぐ対応出来ないので、奥様に一刻も早く来て頂けませんか?」

「お怒り?何故?公爵家うちが何かしたかしら?」

 私は、多分、フランドル伯には嫌われている。
 嫌な予感しかしなかった。

 母から「アリスはサロンで待ちなさい」と言われたので、その通りにした。でも、心の中は恐怖でいっぱいだった。エリアスの後見人ともいえるフランドル伯からみたら、私は自分のトラブルにエリアスを巻き込んだ厄介者だろう。


 落ち込みつつサロンへ行くと、サシャが私を呼んだ。

「やだ、アリスちゃん、顔色悪い。無理せず寝たら?私たちもそろそろ帰るわよ」

 テーブルの上の軽食は平らげてあって、「育ち盛りの男子だなぁ~」と微笑ましかった。
 エリアスを見たら、いつもより表情が柔和な気がした。人と関わらないようにしてたらしいけど、さっきまでの歓談は楽しかったのかな。だったらいいけど。

「皆、心配してくれてありがとう」

 私がそう言うと、サシャが笑った。

「ねー、何にも出来なかったけど、アタシも少しはリュカの調査を手伝ったのよ」
「そういえば、リュカは?」
「多分、司法省じゃないかしらね。あとは宰相府」

 サシャに続けて、アレックスが補足してくれる。

「公爵令嬢の略取事件は、街でも騒ぎになってる。誤魔化しようがないから、なんらかの形で決着させなければならない。恐らく、エヴルー侯爵は宰相を辞任するだろう」

「そう……」


 話していると、侍女頭のマーゴが来て「エリアス様、フランドル伯爵とお父様がお迎えに来られています。お支度をお願いします」と帰り支度を促した。

「フランドル伯と……父も……?」

 エリアスが少し驚いていた。でも、若干15歳なのだから、心配して当然だろう。アレックスも同じ思いだったのか、エリアスに向かって言った。

「報告はもう済んでいるのだろう?今日と明日はゆっくり休んで。じゃあ、また来週。会えるのを楽しみにしてるよ」


 オスカーとサシャも、手を振ってエリアスを見送り、自分達も帰ろうか、と言った。私が改めて皆に御礼を言うと、オスカーが言った。

「ラファエルにも礼を言ってやれよ。お前が行方不明だと知ったあいつは、ありとあらゆる手段を使ったんだから」
「ありとあらゆる?」

「憲兵隊隊長に嫌疑がかかってたから、憲兵隊は動かせなかった。だから、ラファエルは騎士団だけでなく近衛も動かした」
「そう……」

 それはとても有り難いこと。でも、そこまで想ってもらっても、応えられないのが申し訳ないなと思っていた。


 皆を見送るため玄関ホールに行くと、母とフランドル伯爵がまだいた。母の纏う空気が冷たくて、つい、怖くて後ずさってしまった。

「それは本人が決めることではないでしょうか」

 母がそう言うと、フランドル伯が反論する。

「王家には王家の、公爵家には公爵家の責任があろう。子供とてそれは同じこと。公爵家に生れた令嬢なら、国と国民に対して責任がある。その責を全うすべきだ、と申し上げているだけだ」

「フランドル伯爵のおっしゃる事はごもっともです。ですが、私はその国への責任のために、個人の幸せを捨てるかどうかは、周りの大人ではなく、本人が決めることだと申し上げているのです」

 どう考えても、私の事で言い争っている。私が出ていってもいいのかどうか判断出来なかった。

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