私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

カーラがそろそろ本気出す_2

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 扉はひとつで鍵がかかっていた。窓もひとつ。窓ははめ殺しで開かない様子。部屋のあちこちを探りながらカーラが言った。

「私がエリアス様にお願いしたんです。外にいるルイに伝言するようにと」
「それでいなくなったの?よかったー!エリアスが拉致されたのかと心配したわ」

「……お嬢様はもう少しご自身を心配してくださいね。結構絶望的な状況ですよ、今」
「ごめんなさい」

「この狭い部屋に多人数で来られたら、さすがに私一人では守り切れません。まずはここから逃げないと」
「そうね」

 カーラは床も調べていたが、脱出できそうな所は無いようだった。

「別行動を提案したときに、エリアス様は逡巡なさってましたが、私に任せてくださいました。けれど、アリスお嬢様を守りきれず、本当に申し訳ありません」
「大丈夫、大きな怪我もないし」

 それよりカーラの方が傷だらけだ。それについて聞くと、カーラが割りと酷い事を言った。

「お嬢様だけを連れていこうとしたので、抵抗して『お嬢様はわがままで頭も悪くて一人では何にもお出来になりません!お世話係として私をお連れください!』と必死にお願いしました。その時に暴れたので、ちょっと」

 頭が悪いは余計では、と思ったが、そのおかげでカーラが一緒にいてくれてよかった。高慢ちきな公爵令嬢と知れ渡っていたおかげだろう。


 扉を壊すくらいしか思い付かない、どうするんだろう、と思っていたら、カーラがさっさと窓枠ごと窓ガラスを外して外に出た。戻ってきたカーラが言う。

「見張りはいますが、縛り上げた女ふたりだと思って、完全に油断してますね。すこしお待ちくださいね」

 それからすぐに部屋の扉があいた。カーラが外から鍵を開けてくれていた。

「……え?おわったの?」
「はい」

 無音だったけど?と思って恐る恐る外に出たら、見張りをしていたらしい若い男ふたりが気を失って倒れている。
物音立てずにやっつけるってどういう技術だよ、カーラさん。やっぱり仕事人かよ。いや、仕事人の方が派手だよ。

 そこは森の中の小屋だった。何のための建物かは暗くてよくわからなかったが、井戸や台所もあったから、宿泊のためではあるのだろう。
 カーラの動きが止まった。耳をすませて、弾けたように私の方に振り返った。

「いけません、お嬢様。誰か来ます!裏に馬が一頭いましたので、お嬢様だけでも早く!」
「カーラを置いてはいけない」
「二人乗せるのと一人乗せるのでは、やはり馬への負担が違います。ですから早く」

 カーラは早くと言ったが、すでに遅かったようで、明かりが見えたなと思ったら、私たちは取り囲まれていた。
 エーメ男爵が手下を引き連れて到着した。10人以上はいる。
 私達が縄から逃げ出してるのを見て慌てた様子で、大声で命令した。「捕らえろ」と。

 タイミング、最悪。逃げられなかった。

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