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初等部編
王子様からのプレゼントは断れない
しおりを挟む翌週は、公務から戻られたラファエル様に久しぶりにお会いした。
私はもう達観した気分で「相変わらずキラキラしてるな~」と呟いていた。
コルベール伯爵領がかなり面白かったらしく、リュカも交えてサシャと楽しそうに談議している。興味があったので、私も聞かせてもらった。
「王都グラヨールから、港町ベルドゥジューまでの道も、とても綺麗に整備されていたよ。難所と呼ばれるようなところは特に。領主が管理している宿場町も治安が良くて、馬の数も多いし、それを狙って商売人も多いから活気があった。王都周辺の主要都市までの整備の参考になる」
「そうね~とにかく道には力を入れてるわね」
ラファエル様の言葉に、サシャが相槌を打ち、道路整備に力を入れている理由を説明してくれた。
「馬車がガッタンガッタンなるの嫌なのよね。乗り心地悪くなるし、荷物も壊れちゃうし。そもそも馬車が壊れると進めないしね」
アスファルトで舗装された道路に慣れていた私には、確かにこの国の道は酷いものだった。それでも王都内の主な大通りは石畳などで整備されている。ちょっと埃っぽいけど。
「王都に着くころ商品が壊れてたら台無しでしょ?新鮮なものは早く届けないと価値が無くなるし」
それを聞いたリュカが、サシャに質問した。
「損失の割合は?」
「聞いて驚いてよ、リュカ。一割下回ってるのよ~。積み込みと荷下ろしでどうしても損失がでるけど、輸送中の損失が減ったのよね~」
いずれコルベール伯爵領を継ぐのだから当たり前だが、サシャが領地について話しているのを聞いて、意外としっかりしてるんだなと思っていた。
「俺は海軍の様子が知りたい!」
オスカーもアレックスも加わって皆で話したかったが、ちょうとその時、予鈴が鳴った。自分の教室に戻ろうとしたら、ラファエル様が私の前に立って何かを差し出す。
「アリスにお土産だよ。気に入ってくれるといいのだけど」
豪華な箱をひらくと、大粒の一粒真珠のネックレスが入っていた。
(見るからに高価そう。やば~~~)
「帝国産の真珠だそうで、君に似合いそうだから買ってしまったよ」
(帝国って海を挟んだ隣国の?授業で習った大国?やば~~~)
帝国産の真珠は、質が良くかなりの高値で取引されていると勉強した記憶がある。そういうのをあっさり買わないで欲しいけど、そういえばラファエル様は「君に振り向いてもらえるよう、頑張るよ」って言ってたんだった……。
こんな人前で、王太子殿下からの贈り物を断るなんて出来ない。それに一粒だから過剰でもないし、断るのは不自然。絶妙な贈り物。さすが王子様オブ王子様、隙がない。
「ありがとうございます。ラファエル様」
私がお礼を言うと、ラファエル様が自らネックレスを私につけてくれた。
私と王太子殿下について、よく思ってない貴族の子女たちが、忌々しそうに見ている。
やばーい、視線が痛い~~しんどい~~と思いつつ、誰がどう反応しているかは、一応観察しておいた。
先週のロアンヌ嬢による嫌がらせ行為で、私の周りの反ルテール派の貴族がだいたいあぶり出されていたのは、結構な収穫だった。
(お前とお前は顔覚えたからな!名前までは一致しないけど!)
私の頭は少々ポンコツだが、自分にあからさまに敵意を向けてくる人間についてはさすがに覚えた。避けるために。
「もう、鐘が鳴るよ。アリスは早く戻ったら」
リュカが冷静な声でそう言うから、私は助かったと思ってラファエル様から逃げ出した。
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