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初等部編
いつの世も女子はトークする
しおりを挟む「ついうっかり、好きって告白したの」
私がそう言うと、リラがあきれていた。
「うっかりすぎませんか、お嬢様。やっと、他人から友人に昇格した所なんですよね?」
「そうですよ。もう少し段階を踏まないと」
二人にダメ出しされたが、確かにその通りだ。手紙を散々添削されるのも仕方ない。
リラに詳しく話すようにと促されて、カーラがエリアスのセリフを再現する。眉間に皺を寄せた顔真似つきで。
「お嬢様が好きって呟いたら、こうおっしゃんたんです。『アリス様……今後一切そのような戯れを口にするのはおやめください。……でないと、俺は二度とアリスには会えない』って」
「キャー!」
リラが両手を口元を押さえて、キャピキャピと叫んでいる。夜だからあんまり騒いでいたらマーゴに叱られるので、私達はベッドサイドに集まって額を寄せ合うように話していた。
はしゃいでるような声でリラが言った。
「それって、立場上好きとか言われたら困るけど、口に出さなければ会えるってこと?」
「私はそういう意味だと思いました。俺はこれからも会いたいんだから他人に聞かれて困るような事は言うなよ、って意味かと」
「キャー!」
リラが赤い顔をしているが、聞いてる私が一番恥ずかしい。
「でもあれ、意識してない口調でした」
「無意識に言ったって事?キャー!」
ひとしきりはしゃいだあと、リラとカーラが視線を合わせて頷き、それから私の方を見て二人同時に言った。
「「お嬢様、脈アリですよ!がんばって!」」
「あっ、はい。頑張ります……」
何故か、うちの侍女二人が結束していた。
ちなみに、お父様に頼まれて、カーラはエリアスの調査も行っていたらしい。いま初めて知った。
フランドル伯爵領から、両親と供に7歳で王都に移り住み、父親は騎士団へ。隣国への諜報活動で功績をあげた父親が騎士爵に叙せられるが、一家は質素な生活を続けている。
「ご両親から高等教育を受けていたようです」
カーラがそう説明してくれた。僻地で育ったとはいえ、両親ともに教養がある様子。王都に来る前の事はわからなかったそうだが、教育熱心だったのだろう。14歳で騎士団の入団試験にも合格して仕事をしているわけだし、将来は父親のようになりたいのかもしれない。
「不思議な方ですよねえ。ふとした時に大人びて見えたり、平民とは思えないほどの気品があったりしますよね」
「え、やめてカーラ……。私、カーラがライバルになったらかなわない気がする」
私は目の前の、可愛らしいくせに戦闘能力の高い侍女を見て言った。
「お嬢様、誤解しないでくださいね」
「でもお手紙届けるのカーラの役目だし、私より会ってるじゃなーい!」
「私はもっと年上の方が好みですからー!」
カーラが赤い顔で言う。具体的に誰かを意識してる顔だ。
「何?カーラ好きな人いるの?」
「えっ?わ、私の話はいいですよ。やめてください」
「うっそ、いるんだ。教えてよ」
「あ、あの……」
カーラがモジモジしていると、リラが口を開いた。
「あの噂、本当? 馬番の……」
「え? モハメド爺さん?! 年上過ぎない?!」
私がびっくりして大きな声で叫んだので、リラが「しーっ」と人差し指を立てた。
「なわけないでしょ、お嬢様。モハメド爺さんの弟子のアランですよ」
「ああー! あのイケメン! たしか18歳。4歳年上! いいじゃん、ひゅーひゅー」
冷やかすとカーラが真っ赤になっている。
アランは宮城の厩舎で下働きをしていたのを、お母様がスカウトしてきたらしい。モハメド爺さん(※事情通)によると、当時13歳で宮仕えに出されていたアランは、馬の扱いに慣れていたが、陰で他の厩舎職員から酷い扱いを受けていて、それを知ったお母様が札束叩きつけて連れ帰ってきたそう。
お母様の嗅覚ってどうなってるんだろうか。
慈善事業にも多く関わってるし、ノブレス・オブリージュとやらは、お母様をお手本にしたらいいとつくづく思う。
「一緒に買い物したりしていたので……」
「なるほどー! マルシェは独りで楽しんでたんじゃないのね。アランとカーラのデートコースだったわけかぁ」
「デートとか、そんなんじゃ、ない、です」
照れてるカーラは可愛いなぁ。でもお陰でマルシェでエリアスやガブリエルと接点が出来たから、二人には感謝しなくては。そして、末永く爆発するといい!
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