私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

まさかの冬の花_2

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 調子に乗って「好き」だなんて口にしたけど、フランドル伯爵にも釘を刺されていたんだった。
 今の私の立場は、王家の血も引くルテール公爵家の令嬢。王太子妃の第一候補。エリアスから見たら、好きだのなんだの言われても、ただ困るだけ。鬱陶しかったかな。


「ごめんなさい! 大丈夫!! 友達としてだから!!!」

 泣きたい。動揺してる、私。

「……そう、ですよね。ところで……アリス様、顔に傷が?」

 多分、泣くのを我慢して顔が赤いから、治りかけの頬の擦り傷も赤くなって目立ったんだろう。エリアスに問われて、ますます恥ずかしくなった。

「なんでもないのよ、転んだの! 仕立て店メゾンに行くのはエリアスの次の公休日でもいいかしら? 私は学校があるから遣いの者を出します。お茶会に間に合わせるなら早い方がいいから! じゃあ、私はそろそろ行こうかな! ありがとう、またね!」

 早口でそう言って席を立った。少し遅れてカーラが追いかけてくる。


 私は安レストランガルゴットの裏にあるあまり綺麗とは言えない洗面所で一人で泣きながら決意していた。

(拒絶されて辛い。好き。私はエリアスが好き! この気持ちはもうどうしようもない。なんとかしてやる! なんとかして、この世界で生きる!)



 カーラと一緒に表通りに戻ってくると、店の外でエリアスが待っていた。
 てっきりさっさと帰ったと思っていたからびっくりしていると、さらにびっくりなことが待っていた。

「アリス様」

 真っすぐ見つめてくるから、私は心臓がドキドキしていた。エリアスが小さな箱を開ける。中には白い花が入っていた。

「先日はお茶会を断って申し訳ありませんでした。これはそのお詫びです」 
「お詫びなんていいのに……」

 そう言いつつ、私は花に釘付けになっていた。茎はまっすぐで葉も細長いし、花の形も日本の百合によく似ている。でも花びらが八重で真っ白。こんな綺麗な花、見たことない。

「妹もネックレスのお礼がしたいと言ってたので、潰れないように手伝ってもらいました」

「とても綺麗な花! ありがとう、エリアス!」 

 笑ってお礼を言うと、エリアスが少しだけ笑ってくれた。
 わざわざ御礼とお詫びに、花をくれるなんて……カッコ良すぎて惚れ直すしかない!

 そこらじゅうの人に自慢して歩きたいくらいうれしかった。
 私はいま、好きな人から花をもらったよー!と。



 その日の夕食時に、エリアスに貰った花を一輪だけ髪に飾っていると、兄が言った。

「珍しい花をつけてるね、アリス。綺麗だよ。どうしたの? それは冬にしか咲かない白百合で、王都では滅多に見かけないのに。マルシェにはそんなのも売ってるのかい?」

 そんなに珍しい品種のものだとは知らなかった。そんな貴重なものを贈ってくれたのかと思うと、私はまた脳内でワッショイワッショイお祭りが始まっていた。

「友達に、もらったの」
「そう。いい友達だね」

 妹の髪飾りの変化に気づくお兄様も素敵ですよ……。珍しい品種だと知ってる博識さも素敵です。さすが乙女ゲー、いい男だらけだな……と思っていた。



 眠る前に私はカーラを呼んだ。どうしても確かめたい事があったからだ。

「あのさあ……」
「なんでしょう、お嬢様」

 カーラは特に表情を変えずにベッドサイドにたたずんでいる。

「今日さあ……」
「はい」
「エリアスが『でないと、俺は二度とアリスに会えない』って言わなかった?」

「おっしゃってましたね」
「あれヤバくない?」

「ヤバイ……とはどういう意味でしょうか?」
「いやーその、よく考えたらすごいセリフじゃない?しゃべり方が素になってたよね、敬称なくなってたよね」

 私がそう言うと、カーラが一歩近づいて目を見開いて言った。

「実はあれにはびっくりしました! キャー! って言いたいの我慢してました!」

 カーラが年相応の女子の顔で、ちょっと頬を染めて勢いよく言ったので、隣室を片付けていたリラが「私もまぜてください!」と飛んできた。
 女子トークが始まった。

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