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初等部編
これはデートでは?デートですよね?_2
しおりを挟む黒髪に緑の目が美しい……。今日も帯剣しているが、自然な落ち着いた仕草でこちらへやってくる。
私は心の中で(はい、キターーーー!今日もカッコイイ!!!)と叫んでいた。
この前のように洗いざらしのシャツが素敵……とうっとり見ていたら、また不審者を見る目で見られた。しまった。せっかく少し前進したのに、あんまり凝視していたらストーカーに逆戻りしてしまう。
「話というのは何でしょうか、公爵令嬢」
「あの……アリスと呼んでもらえないかしら」
挨拶の後、まず私がそう言ったので、エリアスが少し表情を曇らせた。
「なぜでしょう?」
「公爵令嬢だと他人行儀すぎない?」
「他人ですが……」
(くっ、塩対応すぎる。しにたい。だが、負けない。今日の私は『アリス』なのだ)
「アリス、と呼んで頂戴」
少し強気で言ってみた。若干引いてるエリアスの顔には「貴族のわがまま娘め」と書いてあるかのようだった。諦めたような表情でエリアスが言った。
「……仕方ありません、アリス様。ただ、公務中は公爵令嬢と呼ばせて頂きます。構いませんね?」
「ありがとう!」
(百歩くらい前進した気がする!わーい!)
私は名前を呼ばれてキュンキュンしていたので、その場で小躍りしたかったが、理性を総動員して抑えた。褒めて頂きたい。
いわゆるワンプレートのランチを前に、私はルイに調べてもらった内容について話をした。
先週、城門付近で起きた轢き逃げ事故は、無かったことにされていた。公式的には調書そのものが無くなっていたのだ。
ルイが調べてくれた範囲では、少なくとも現場の憲兵はいつも通り、報告書を上にあげたらしい。ただ、憲兵隊から司法省へ届くはずの書類がどこかで消えていた。
幸い、轢かれた子供は昏倒したが無事。奇跡的に傷はなかったが、エーメ男爵家から治療費等として、一定額の解決金は渡っていたとのことだった。そこから、あのベッドを貸してくれた町人への謝礼も支払われている。ルイの報告には、ガブリエルの存在は一切出てこなかった。ガブリエルの言葉を信じるなら町人全員で彼の存在は隠されたんだろう。
「憲兵隊の上層部か、司法省で握りつぶしたわけですね」
「特に気にするほどではないかもしれない。貴族が汚名を金でもみ消すのはよくあることだし、まして新興貴族なら」
「ただ……」
エリアスは、私が先ほど渡したお茶会の招待状を手にしている。
「そう。ただ、なぜか私にエーメ男爵夫人からお茶会の招待状が届いた。偶然ではなく、何かあるかと勘繰るのは当然でしょ」
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