私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

校舎裏に呼び出される公爵令嬢_2

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 ひとしきり喚いて疲れたのか、例の金髪のご令嬢が「何とか言ったらどうなの」と凄んできた。多分何を言っても、生意気ねって反論されるんだろう。そう思って私は黙っていた。
 すると、その態度が気にくわなかったらしい。「何なの、その生意気な目は!」と言いながら、彼女が手を振りかぶった。

(えっ、理不尽ーー!目は伏せていたのにーー!たれる!避けなきゃ痛い!)

 そう思って後ずさりしたが、いつの間に回り込んだのか、仲間のご令嬢が背後から私の肩を掴んでいる。
 殴り返そうかと思ったが、もう一人がさらに腕を掴んでいた。さすがにひどくない?!
 打たれる!そう思って、目をぎゅっと瞑った。
 が、しばらく耐えても衝撃は来なかった。おそるおそる目を開くと、冷ややかな水色の瞳が見えた。

「アレックス!」

 思わず大声を出したが、アレックスは私に視線を向けることなく、私を叩こうとしたご令嬢の腕を掴んだまま言った。

「何の真似でしょう、ダンピエール伯爵令嬢ロアンヌ様?」
「あっ……」

 ロアンヌと呼ばれたご令嬢は、顔を真っ赤にしている。怒りなのか恥じらいなのか。それとも両方か。

「演劇の稽古なら他でなさるがよろしいかと」

 ダンピエール伯爵令嬢……?
 ルイーズ嬢の姉妹?

 そそくさと逃げ出したご令嬢方を見送って、私は大きくため息をついた。

「ありがとう、アレックス。どうしていいか、わからなくて……」

 そう言いかけていたら、アレックスが私を抱き締める。

「えっ!えーーっと、アレックス?ちょっと……」
「アリス、あまり心配させないでくれないか。呼び出しに簡単についていくからびっくりしたよ」
「はい、ごめんなさい」

 腕をほどかれたので、体を離したが、躊躇いもなくあまりに自然だったから、私だってびっくりした。ハグする程度はこっちの常識だと普通なのかな。

 じっと見つめてくる水色の瞳。無駄な筋肉のない、均整のとれた体躯。
 アレックスは色素が薄く細面で、どちらかと言うと線が細く見えてしまうが、いわゆる『脱いだら凄いんです』系だ。さっき抱き締められた時、私は「ええ体しとるのぅ兄ちゃん」と思っていた。
 ぼやっとしていたら、アレックスに怒られた。

「君はさっき、傷つけられそうになったんだよ?もっと自分の立場を理解しないとだめだ」
「アレックス、ごめんなさい。もうしません!知らない人についていきません!ごめんなさいー!」
「そうだね、よく言えました」

 若干のSっ気が見え隠れする笑顔でアレックスが言い、それから少しだけ眉を下げた。

「ただ、オスカーの件に関しては、君は反省すべきだと思うよ」
「そうね……」

 そう、私とオスカーは何となく気まずいままだった。
 舞踏会の夜、オスカーが来たらもう一度謝ろうと思っていた。そして、社交界デビューしたから、これから何度も舞踏会があるだろうから、次はオスカーにエスコートを頼みたいと考えていたのだ。

 でも、あの日、オスカーは最後まで、私をダンスに誘ってくれなかった。


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