私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

主役だけど舞踏会を欠席したくなりました_2

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「王太子殿下がエスコートなさるって本当ですの?」
「国王陛下から贈られたお祝いの宝石もとっても豪華とか」
「拝見するのが楽しみですわね」

 デルベ伯爵令嬢ジュリエット様、ダンテス伯爵令嬢カミーユ様……えーと、ドッカノ伯爵令嬢ナントカ様あとはもうよくわからない。来週にせまった誕生日祝いに招待しているご令嬢方に囲まれて、私は質問攻めに合っていた。

 明確に答えず笑顔で誤魔化して逃げ出し、自席に戻るとオスカーの姿が見えない。
 あれ?と思ったのを見透かしたように、アレックスが声をかける。

「オスカーならあっち」

 アレックスが指を差したのはバルコニーだった。



「オスカー、寒くないの」

 バルコニーの手すりに肘をついて庭園を見てるオスカーに声をかけたが、オスカーは問いには答えなかった。秋も深まって、涼しいと言うより肌寒い。

「ねえ、聞いてる?」

 いつものように肩に手を置くと、焦ったように振り払われる。そして呟くような小さな声でオスカーが問うた。

「お前さぁ、俺じゃなかったのかよ」
「何が?」
「何がって、お前の誕生日のエスコート役だよ。『オスカーに頼もうかな』って言ってただろう」

 舞踏会の招待状を渡したときだ。あの頃はまだ記憶が戻る前のアリスで「(王太子殿下に断られたら)オスカーに頼もうかな」と言っていたのだ。私は(す、すねているのか……可愛いな……)と思ってしまった。

「……ごめんなさい」
「別に謝らなくても」

「でも、確かにそう言ったわ。本当にそう思ってたし。何も言わずに勝手だったわよね。ごめんなさい」
「……怒ってねーからいいよ」

 素直に謝る私に毒気を抜かれたのか、やや表情をやわらげてオスカーが言った。

「私もオスカーに頼むつもりだったのよ。でもラファエル様に申し込まれたら断れなくて……」

 相手がラファエル様とはいえオスカーに申し訳ないなあと思いそう言うと、オスカーが体ごと振り返った。いつになく真剣な顔をしている。

「待てよ、ラファエルの方から申し込んだのか?あいつ立太子してからは誰にも自分からは申し込まないって言ってたのに」
「ああ、それは……」

 私は図書館での大公殿下とラファエル様のやり取りを話して「……だから、売り言葉に買い言葉みたいな感じだと思うのよね」と肩をすくめた。しかし、オスカーは納得してない表情をしている。その時、バルコニーの外から陽気な声が聞こえた。

「ねーえ、寒いしそろそろ中に入らない?午後の授業も始まるわよぉ?」
「サシャ?」

 私がキョロキョロと見回すと、隣の教室のバルコニーにサシャがいた。

「ハァイ、おふたりさん。今日も青春してるぅー?」

 今日のサシャの髪は真赤だった。毛先だけ巻いて緑色のリボンをつけている。そのうち頭に船とか鳥篭とかつけるんじゃないか。サシャは、ふわふわと笑いながら不穏な事を口にした。

「アリスちゃん、あなた身辺に気を付けなさい。もう一人の王太子妃候補が黙ってないと思うわよ~」


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