私に悪役令嬢は無理でした!でも好きな人がいるから頑張ります!

ゆきづき花

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初等部編

騎士様といえば是非あのお方にも来てほしい_1

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「お姫様と騎士ねえ。物語でもお姫様と騎士は恋をするものだし。そういう関わり方もいいんじゃないかしら、オスカー?」

 そう言いながら樹の陰から現れたのはサシャだった。

「サシャ、おはよう。遅刻だね」

 アレックスがそう言うとサシャは手をひらひらさせながら笑っていた。

「つるんでサボってる人に言われたくないわあ」
「さっき教室にサシャがいなかったのは、のんびり登校してたからなのね。おはよう、サシャ。これは秘密会議。内緒にしてね」

 私が笑うとサシャも笑った。

「よかったあ。笑顔を久しぶりに見たわ。さすがのアリスちゃんも参ってるなあって思ってたから~」
「心配してくれてありがとう」

 私がお礼を言うと、背の高いサシャが頭をぽんぽん撫でてくれる。

「オスカーに教えてやった方がいいかしら?女のあしらい方」
「……何?なんか背中がぞわぞわすんだけど」

 サシャが妖艶な視線でオスカーを捕らえると、オスカーが鳥肌を立ててあとずさりしていた。

「えーやだあ~なんかえっち!」と言いながら、サシャがオスカーに近づいて言う。

「この騒ぎを収める方法は、正攻法だけじゃないでしょ?」

 サシャがそう言い、アレックスがオスカーに耳打ちすると「はあ?なんで、俺があのおしゃべり金髪女と!?」と、オスカーが赤い顔で怒鳴っていた。

「それはゴニョゴニョ……」

 サシャがオスカーを捕まえて何やら話し込み始めたけど、オスカーが「げー」とか「うえー」とか言ってたので、多分楽しくない内容なんだろう。

 アレックスは私の横で「まあ、ちょっとサシャの方法で様子みようか」と面白そうに言っている。

 なんだか、オスカーが大変な事になりそうだけど、任せてみようかなと思っていた。多分、私が面と向かってもどうこうなる問題じゃなさそうだから。
 ロアンヌ嬢とルイーズ嬢は無関係。今回の私への地味な嫌がらせ行為は、エヴルー侯爵家としては多分取るに足らない事で、本家はもっと政局的なところで動こうとしている。


 ――リュカは「味方は多い方がいい」って言ってたけど、私にはもうたくさん味方がいたよ。

 ……でも、と寂しくなる。
 こうして私を心配してくれる友人たちは、来年には敵になるのだ。

(本当に敵になるのかな。もしかしてこのまま仲良くしてたらシナリオも変えられるんじゃないかしら?)

 そう思って俯いていると、サシャが笑いかけてきた。

「暗い顔しないで、アリスちゃん。オスカーへの手ほどきはまっかせて~」

 そうだね。とりあえず、ひとつひとつ問題を解決していかなくては、と思い直して、サシャに向かって「お願い!」と言って笑った。



 授業に途中から入るもの他の生徒の邪魔だろうというサシャの主張により、私たちは丸々一限目はサボることにした。
 庭園では寒いからと喫茶室サロン・ド・テに行く。
 サシャとオスカーはずっと話し込んでるから、私はアレックスと二人掛けのテーブル席についた。

「僕もアリス姫の騎士になってもいいかな?これでも正騎士だから」

 ありがたいけど、アレックスはアレックスでモテモテだと思うので、また敵を作りたくはなかったから断った。

 ただ、騎士様と言えば私は是非あのお方にも来てほしいと思っていた。「あのお方」……そうエリアスである。

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