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初等部編
お茶会なんて許せない
しおりを挟むダンピエール伯爵令嬢ルイーズから、マクシムお兄様へのお茶会の招待状が届いた。
それを聞いて、私は自分への嫌がらせなんかどうでもよくなるくらいに動揺した。
「は?……何で……ルイーズ嬢がお兄様に……?」
(わ、私の推しに何をしようとしているの?!ダンピエール伯爵家!やっぱり滅ぼしてやるー!!!)
また、とても口に出せないことを心の中で叫んでいたら、リラが言った。
「ダンピエール伯爵家の真意はわかりません。ですが、この招待状のせいで奥様が登城なさるくらい屋敷中、大騒ぎでしたわ」
年頃のご令嬢から、未婚男性へお茶会の招待状がくるとは、つまりそういうことだ。
――つまり!ちょっと貴方に興味があるからお話しませんか?って事だ。
「いやあああ!! 私もお城にいく!! お兄様!!!」
玄関先でぎゃあぎゃあ騒いでいたら、つかつか歩み寄ってきた侍女頭マーゴにこっぴどく叱られた。
夕食時に両親はいなかった。お兄様もいない。今日はジュリアンと二人。
「ねえ、お兄様が結婚するって本当?」
ジュリアンが突然、爆弾発言する。
「けけけ結婚なんかしませんよ、ねえ?」
私はそばにいる執事のルベンに呼びかけたが、あいまいな返事しかしてくれなかった。
「なんか、みんながコソコソ話してるんだけど、何があったの?」
ジュリアンは招待状のことを知らないらしい。私の口からは説明したくないし、そもそもお茶会に行ったからって気があうとは限らないし。……もし、気があったらどうしよう。だって、あんなに格好いいお兄様。大好きな優しいマクシムお兄様。
「いやあああ!! お兄様!!!!!」
食堂でぎゃあぎゃあ騒いでいると、壁際に立っていたマーゴがさっきより足音を立てて近づいてきて、またこっぴどく叱られた。
(許さない……お茶会なんて許せない……)
許せない、と私一人が言ったところで、どうにもなるわけでなく、翌朝、お兄様から「招待を受ける」と聞かされて、私は倒れそうになった。なぜなら、あのおしとやかな深窓のご令嬢と、優しいお兄様が一緒にいるところを想像したら、とてもお似合いだったからだ。
お父様から見ても、「もうひとりの王太子妃候補」が王太子殿下ではなく、別の男性(この場合はそれが自分の息子だったわけだが)と結婚するかもしれないとなると、娘に有利に働くと思ったらしい。
若干の抵抗を感じつつも、お茶会への参加自体には反対しなかった様子。それにマクシムも成人しているし、実際適齢期ではあるのだ。相手が伯爵令嬢であれば身分は申し分ない。
「これはもはやバッドエンドでは……」
私は、自分宛のエーメ男爵夫人からの招待状について、両親に相談する事などすっかり忘れて、どんよりと落ち込みながら学園へと向かった。
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