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面倒な彼女の幸せな悩み 2

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「急にすみません。どうしても話を聞きたくて」
「いえ、こちらこそ……すみません」

 私の不可解な態度のせいで、怒っているだろう。私があがるよう促しても、それより早く話がしたいのか、扉が閉まると同時に彼が口を開いた。

「単刀直入に聞きますが、避けてますよね? どうしてですか? ……と言っても心当たりしかないのですが」
「ごめんなさい……」
「嫌だったのに、拒否できなかったのでは?」
「そんなことないです! 私から望んで、一線を越えたんです!」
「じゃあ、後悔してる? 本当は痛くて嫌だった?」
「それも違います! 痛いとかないです。すごく、良かった……です」

 何を言わされているんだ。絶対、顔赤い。恥ずかしいから、まともに彼の顔を見ることができない。でも、永遠子の言ったとおり、ストレートに伝えないと誤解される。

「八木沢さんのことをもっと好きになって、ずっと八木沢さんのことばかり考えてしまうんです。仕事中も……一緒の夜を思い出して、急にドキドキしたり。これまで、どう接していたのかも、わからなくなって……」

 面倒な女だと思われても仕方がない。ブレーキをかけなくちゃいけないのに、それが壊れてしまったみたいで、どうしていいのか分からない。
 物音がして驚いて顔を上げたら、八木沢さんの足下に彼の通勤鞄が落ちていた。脱力したように両手をだらりとさげて、戸惑った表情のまま私を見ていたから、困らせているんだと思って言葉を続けた。

「ごめんなさい、変なこと言って。迷惑ですよね」

 リビングに続く扉が少し開いていて、そこからエアコンで冷えた空気が流れてくる。玄関は暑いから、握りしめた両手が汗ばんでいる。申し訳ないから、もう切り上げて帰ってもらおう。そう思っていたら、彼が長い息を吐いて、それから片手で顔を覆って呟いた。

「よかった……嫌われたんだと思いました」
「嫌いになんてなりません。逆です。とても好きです」

 安心したように笑っている八木沢さんにびっくりした。
 もしかして、自分で思っている以上に、私は彼から大切に思われてる?
 
「逃げたりして、ごめんなさい」
「ええ、ショックでした。だから、もう逃げられないようにしますね。中途半端はよくないので、いっそずっと僕のことだけを考えるようにしましょう。自由を奪って、部屋に閉じ込めて……」

 腰を引き寄せられて、まっすぐ見つめながらそんなことを言われて、理解が追いつかなくて呆然としていたら、八木沢さんが淫猥に笑った。

「冗談だと思ってます?」
「じょうだん……ですよね?」
「冗談にしておきます。でもこんな可愛いことを言われたら我慢できませんね」

 これまで彼が許可なしに部屋にあがることはなかった。だから油断していた。
 背に回されていた手が、部屋着の中に入ってきて、直接肌に触れたから声が出そうになった。

「あ、あの、待って……」
「どうして?」

 どうして? どうしてってどうして? こんなところで?
 八木沢さんは楽しそうに、私の首筋にキスをしながら背中や腰を優しく撫でる。
 駐輪場からエレベーターホールに行くには、101号室の前を通る必要がある。朝や夜は人が通ることが多いから、きっと誰かに聞こえてしまう。
 だから、彼の腕から逃げようとしたのに、後ろから抱きしめられて動けなくなった。
 部屋着の上から胸に触れられて、その手つきがわざとらしいほどいやらしくて喘いでしまった。

「あっ、あ、だめぇ……」
「可愛い『だめ』だな」

 八木沢さんはそう言って、見せつけるように乳房を揉みしだく。意地悪だ!
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