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小話 見ちゃった!2
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和咲さんと柴田の話し合いの日、心配になってやっぱり私も行こうとしていたら、エントランスで偶然、噂の「大家さん」に出会った。
翌日、和咲さんが出勤するなり「あれは有りですよ!!」と力説して彼女をびっくりさせてしまった。その時の彼女の、恥ずかしそうに照れた笑顔……今思い出しても可愛い。
「落ち着いて、大人で、頼りがいがあって……」
「なるほどなー。派遣の元カノさんは、最近色気あるもんな」
「和咲さんを変な目で見ないで」
「会社ではあんまりしゃべらないし、顔色悪くて声かけづらいな、って思ってたんだよ。でも最近は、元気によく笑ってるのを見かける。前より可愛くなった」
しゃべらないのは真面目だからだ。貧血も順調に治っているらしい。そして、よく笑うのは、きっと「大家さん」のおかげ。和咲さんは前から可愛い。
彼女は自分のことをあまり話さないが、身寄りがないという話は少しだけ聞いていた。唯一の親戚は、亡くなったお母さんの従兄らしく、今は縁が切れている。
「土地持ち国家公務員なら、老後も安泰だと思う」
「老後って……」
和咲さんが今住んでいるマンションは全50戸。
20万円×50戸×12ヶ月=12000万円
単純計算でこれだ。広い部屋だと、都心部の場合30-50万円するから……
「年収一千万で満足しちゃだめだわ」
「老後とか年収とか、急にどうした」
「私も年間、億稼ぎたい」
「プロ野球選手にでもなるつもりかよ」
夏川が笑うと同時にエレベーターが一階に到着した。
吹き抜けで開放感のあるエントランスには、きりりとスーツを着こなしたビジネスパーソンが行き交っている。昔ドラマで見て、憧れた世界。日本経済の中心で、使命感と誇りを持って仕事をして、社会に貢献したい。そんなふうに憧れていた世界。
「コンビニ飯じゃなくて、がっつり食べたい気分になったから、一緒にどっかお店行かない?」
「同期の出世頭に付き合ってやるよ。ただし、俺も忙しいから食ったらすぐ戻るぞ」
「もちろん!」
急に誘ったのに、承諾してくれて嬉しい。夏川は良い奴だ。
地下に飲食店もあるが、気分転換に外へ出たい。
まだまだ頑張るぞー! と思いながら、私は深呼吸して背伸びをした。
翌日、和咲さんが出勤するなり「あれは有りですよ!!」と力説して彼女をびっくりさせてしまった。その時の彼女の、恥ずかしそうに照れた笑顔……今思い出しても可愛い。
「落ち着いて、大人で、頼りがいがあって……」
「なるほどなー。派遣の元カノさんは、最近色気あるもんな」
「和咲さんを変な目で見ないで」
「会社ではあんまりしゃべらないし、顔色悪くて声かけづらいな、って思ってたんだよ。でも最近は、元気によく笑ってるのを見かける。前より可愛くなった」
しゃべらないのは真面目だからだ。貧血も順調に治っているらしい。そして、よく笑うのは、きっと「大家さん」のおかげ。和咲さんは前から可愛い。
彼女は自分のことをあまり話さないが、身寄りがないという話は少しだけ聞いていた。唯一の親戚は、亡くなったお母さんの従兄らしく、今は縁が切れている。
「土地持ち国家公務員なら、老後も安泰だと思う」
「老後って……」
和咲さんが今住んでいるマンションは全50戸。
20万円×50戸×12ヶ月=12000万円
単純計算でこれだ。広い部屋だと、都心部の場合30-50万円するから……
「年収一千万で満足しちゃだめだわ」
「老後とか年収とか、急にどうした」
「私も年間、億稼ぎたい」
「プロ野球選手にでもなるつもりかよ」
夏川が笑うと同時にエレベーターが一階に到着した。
吹き抜けで開放感のあるエントランスには、きりりとスーツを着こなしたビジネスパーソンが行き交っている。昔ドラマで見て、憧れた世界。日本経済の中心で、使命感と誇りを持って仕事をして、社会に貢献したい。そんなふうに憧れていた世界。
「コンビニ飯じゃなくて、がっつり食べたい気分になったから、一緒にどっかお店行かない?」
「同期の出世頭に付き合ってやるよ。ただし、俺も忙しいから食ったらすぐ戻るぞ」
「もちろん!」
急に誘ったのに、承諾してくれて嬉しい。夏川は良い奴だ。
地下に飲食店もあるが、気分転換に外へ出たい。
まだまだ頑張るぞー! と思いながら、私は深呼吸して背伸びをした。
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