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小話 見ちゃった!1
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永遠子ちゃんがキャッキャしてるSS
_________________
定時後、今日も帰りが遅くなりそうだったので、コンビニで軽食を買ってこようかとフロアを出ると、エレベーターホールに同期の夏川がいた。夏川は手に煙草の箱を持っていたから、一階にある屋外の喫煙所にいくつもりだろう。このビルは全フロア禁煙だ。
彼は私に気づくと、「ニカッ」と効果音がつきそうな元気な笑顔で話しかけてきた。
「冬崎、お疲れ。お前、欠席で返事したんだって?」
「柴田の結婚式のこと?」
「俺も迷ったから、気持ちはわかる」
同期は全員招待されていて、欠席するのは私だけらしい。ご祝儀とは別に渡す、同期一同からのプレゼントには参加するし、お祝いの気持ちがまったくないわけではないが、二人の「ご披露」は見たくない。
エレベーターが一基到着したが、同ビル内のどこの会社も退勤の時間帯なのか、人が多く見送ることにした。先に待っていた夏川は乗るかと思ったが、話がしたいのか彼もエレベーターに乗らなかった。
「正直、納得してないから。さすがに柴田の味方は出来ないよ。あんな良い彼女を一方的に振って、ヨリ戻そうとして迷惑かけたりしてさ……」
「冬崎は派遣の彼女とも仲良いもんな」
「元彼女ね」
入社前の研修や、有志の飲み会で話していたとき、一番気が合っていたのは柴田だった。だから、柴田が和咲さんに「一目惚れした!」と騒いでいた当時は複雑な気持ちだった。でも、柴田を通じて和咲さんとも仲良くなり「この人なら仕方ないか」と諦めた。
それもあって、柴田が福岡支店の女に乗り換えたときには異様に腹が立った。
「お前、柴田のこと好きだったんだろ?」
「うーん、ちょっといいなと思ってた時期はあったよ。でも外面がいいだけのポンコツは私のほうからお断りだわ。もうどうでもいいよ」
「冷てえ」
「それに……」
私が言葉を切って、思い出し笑いをしたから、夏川が驚いて「何!?」と声を上げていた。もう一基エレベーターが到着し、運良く誰も乗っていなかったので、二人で乗り込んだ。
「急に笑い出してどうした、気持ちわりい。『それに』何だよ。教えろ」
「あのね、和咲さんの新しい彼氏、柴田より絶対いいよ。別れて正解正解!」
「へー知ってんの?」
「この前、見ちゃった! かっこよかった~! 背が高くてスタイル良くて、あの四十歳は有りだわ」
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定時後、今日も帰りが遅くなりそうだったので、コンビニで軽食を買ってこようかとフロアを出ると、エレベーターホールに同期の夏川がいた。夏川は手に煙草の箱を持っていたから、一階にある屋外の喫煙所にいくつもりだろう。このビルは全フロア禁煙だ。
彼は私に気づくと、「ニカッ」と効果音がつきそうな元気な笑顔で話しかけてきた。
「冬崎、お疲れ。お前、欠席で返事したんだって?」
「柴田の結婚式のこと?」
「俺も迷ったから、気持ちはわかる」
同期は全員招待されていて、欠席するのは私だけらしい。ご祝儀とは別に渡す、同期一同からのプレゼントには参加するし、お祝いの気持ちがまったくないわけではないが、二人の「ご披露」は見たくない。
エレベーターが一基到着したが、同ビル内のどこの会社も退勤の時間帯なのか、人が多く見送ることにした。先に待っていた夏川は乗るかと思ったが、話がしたいのか彼もエレベーターに乗らなかった。
「正直、納得してないから。さすがに柴田の味方は出来ないよ。あんな良い彼女を一方的に振って、ヨリ戻そうとして迷惑かけたりしてさ……」
「冬崎は派遣の彼女とも仲良いもんな」
「元彼女ね」
入社前の研修や、有志の飲み会で話していたとき、一番気が合っていたのは柴田だった。だから、柴田が和咲さんに「一目惚れした!」と騒いでいた当時は複雑な気持ちだった。でも、柴田を通じて和咲さんとも仲良くなり「この人なら仕方ないか」と諦めた。
それもあって、柴田が福岡支店の女に乗り換えたときには異様に腹が立った。
「お前、柴田のこと好きだったんだろ?」
「うーん、ちょっといいなと思ってた時期はあったよ。でも外面がいいだけのポンコツは私のほうからお断りだわ。もうどうでもいいよ」
「冷てえ」
「それに……」
私が言葉を切って、思い出し笑いをしたから、夏川が驚いて「何!?」と声を上げていた。もう一基エレベーターが到着し、運良く誰も乗っていなかったので、二人で乗り込んだ。
「急に笑い出してどうした、気持ちわりい。『それに』何だよ。教えろ」
「あのね、和咲さんの新しい彼氏、柴田より絶対いいよ。別れて正解正解!」
「へー知ってんの?」
「この前、見ちゃった! かっこよかった~! 背が高くてスタイル良くて、あの四十歳は有りだわ」
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