【R18】結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

ゆきづき花

文字の大きさ
上 下
41 / 82

小話 夢

しおりを挟む
八木沢さんが、ただ可愛い可愛い言ってるだけのSS
_________________


 月曜の朝、僕は夢を見なかった。
 昨日も今日も、夢を見なかったことに安堵しているから、やはりあれは悪夢と呼ぶべきだろう。
 夢の途中で目覚めて、これが現実ならいいのにと思いながら、夢の残滓を振り払って仕事に出かける。それが日常だった。

 昨日も、寝すぎたのだと思ったくらいに心地よく目が覚めた。先に起きていた和咲さんに「まだ六時前です」と言われて驚いたほど。
 彼女がいてくれるから、きっと僕は夢を見ない。

 彼女はまだ隣で眠っている。
 寝顔が可愛くて、つい頬に触れてしまった。気づいた彼女が目を開いて僕を見る。その瞬間、花がほころぶように笑った。可愛すぎる。

「おはよう」
「おはようございます。すみません、私、結局眠ってしまって......」

 旅行を終えても離れがたくて、十五階の自宅へ連れていった。
 夕飯を終えて夜になり、一階へ帰ろうとした彼女をひきとめたのは僕のほうだった。

「私がいて大丈夫でしたか? 眠れました?」
「とても良く」
「よかった!」

 無邪気に笑う彼女が可愛い。また歯止めがきかなくなる。
 唇に触れたら、恥ずかしそうにしてるのも可愛い。拗ねる表情も可愛い。髪を揺らして乱れる姿も可愛い。
 柔らかくて温かい彼女。髪の一筋から爪の先まで、彼女の全てが愛おしい。
 彼女が他の誰かを選ぶ日が来たら、今度こそ自分は耐えられないと思う。
 だから触れずにいようと思っていたのに、自制できなかった。

 分別ある大人なのかと思ったら、少女のようで、僕は彼女に振り回されっぱなしだ。
 心が動くことなんてないと思っていたのに。

 本当は寂しかったのに、強がって早く大人になってしまった彼女。
 脆いのに泣き方も知らない。

 いずれこうなる、と予感めいたものはあった。だが、これが恋情だとも思っていなかった。
 自分の知る恋愛は、例えるなら炎だから、穏やかな木陰にいるような気持ちは初めてで、「これも恋愛感情なのか」と理解するまで時間がかかった。
 



 一人で出かけるときは、誰にも行き先を言わないし、誰にも土産など買わない。だが、今回は槙木に箱根土産を買って帰った。
 出勤してすぐに調査企画課を訪ねる。
 憂鬱な月曜の朝にも関わらず、槙木は嫌みなくらいに爽やかだった。

「奥さんと綾ちゃんに」
「サンキュー! こんな気を遣わなくていいのに。大丈夫だったか?」
「なにが?」
「寝室別にして、ちゃんと耐えたんだろ?」

 答える義務はないので無視した。
 数秒待っても僕が答えないから、槙木の顔色が変わっていく。

「ま、待てよ、おい! お前、まさか……許さんぞ! オレが許さねえ!」

 なぜか槙木は彼女を娘のように思っているらしい。おそらく愛娘である綾ちゃんが、彼女を姉のように慕っているからだろう。
 付き合うように煽った張本人のくせに、この態度はなんだ。
 妙な理解を示されても嫌だが、騒がれるのも困る。だから短めに答えた。

「同意の上なので」
「当たり前だ!!!!!!!!!」

 声が大きい。
 同課の職員が、「朝から課長同士で何を騒いでるんですか」と興味を持ち始めたので、僕は急いで逃げ出した。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

処理中です...