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番外編
王宮の庭_2
しおりを挟む目を閉じたあとに見ていた夢の中で、ずっと温かい何かに包まれていた。目を開くと霞む視線の先に焦げ茶色の髪が見えて、薔薇の香りがする。
「おはよう、助かって良かったぁ」
嬉しそうに笑った彼女が優しく俺の体を撫でる。視界がぼんやりして焦点が定まらなかったが、ゆっくり見上げているとそこにいたのはさっきまで夢に見ていた「彼女」。
以前、戯れに触れていた彼女の小さな手。優しい手つきはかわらない。
(ジゼル、会いたかった! 会えてよかった!!)
そう叫んで抱き締めようと思ったが、声も出ないし全身に力が入らない。もがく自分の手をみて愕然とした。
これは手ではなく前足!
今の俺は、人ですらない。まず呪いを解かなければと再認識した。
「死にかけてたんだからさ、もう少し休んで」
そう言って彼女が撫でてくれるから、また心地よい微睡みへと戻る。毛布が柔らかくて気持ちがいい……。
目覚めてからしばらくは、体の変化に戸惑ったが、慣れると案外便利だった。耳は良く聞こえるし、人間より速く走れる。
着替える彼女をずっと見ていても怒られない。ベールをとり黒い服を脱ぐと、健康的な綺麗な肌。以前より腰が細くなったから、女性らしい曲線が扇情的だった。
食事のあと膝に乗せてもらったので、彼女の口の端をぺろりと舐めると、くすぐったいのかジゼルが笑った。可愛い。
ぺろぺろ続けて舐めていると「やめて~」と引き剥がされて、それから「だめだよ」と言ってぎゅっと抱き締められた。
こ、これは悪くない……。
興奮を抑えつつ見上げると、慈愛に満ちた女神のようなジゼルの笑顔。
(ああ、俺、呪われた犬のままでもいいかも……)
……っていやいや、それだと城には帰れないし、ジゼルと結婚も出来ない。「愛のキス」をジゼルからもらわないと困る!
侍女が準備したゆったりした木綿の服を着て、布団をめくって「おいで」と笑うからよだれが垂れそうなのを我慢して、ベッドに飛び乗った。
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