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おまけ
2. お見合い相手と写真を見てたら
しおりを挟む二階にある私の部屋へ案内した。
両親は、二人は子供が欲しかったらしいのだが、残念ながら二人目には恵まれなかったそう。二人分の広さのある子供部屋。もう子供って歳ではないけれど、実家暮らしなのでそのまま使っている私の部屋。レースのカーテンも、フリルがふんだんに使われたベッドカバーも母の趣味。独り暮らしをしたいと言ったこともあるが、祖父と両親が許してくれなかった。
友達を呼んだ時のように、柊平さんには、ラグを敷いた床にそのまま座ってもらった。小学校から使っていた学習机もそのままでちょっと恥ずかしい。今は持ち帰りの仕事をするのに使ってるから、パソコンデスクと化している。
机の隣の本棚には、高校の卒業式の写真。私と一緒に写っている美術部の友人とは、当時から特に仲が良くて、今でも時々会っている。
顧問の先生が面白い人で、部活はとても楽しく、特に思い出深かったから写真立てに入れて飾っていた。
それを眺めながら柊平さんが言った。
「制服が新鮮だね」
「……数年前がめちゃくちゃ恥ずかしいです」
「楓子ちゃんは変わらないね。とても可愛い」
「あー!そんなのまで!恥ずかしいから勝手に出さないでください!」
棚の下段にあった卒業アルバムを手にしている柊平さんから、それを取り返そうとじゃれていたら、母がお茶と家族写真のアルバムを持って部屋にきた。
「パパが写真撮るの好きだから、こっちにもたくさんあるわよ」
「恥ずかしい……」
「あらあ、いいじゃない。結婚式のスライドショーで使う写真、柊平さんと一緒に選んじゃえば?」
「けっこんしき?! スライドショー?!」
私は狼狽えてたが、柊平さんは相変わらず穏やかに微笑んでいた。
結婚式か。やっぱり現実味が無い。多分、主役は新郎で私じゃないだろうと思う。木島家と榎本家の結婚式であって、きっと来賓挨拶とか会社関係の席次とか、そういう部分で気を遣うんだろう。何となく、他人事のようにそんなことを考えていたら、隣に座っていた柊平さんが呟いた。
「ああ、楓子ちゃんは可愛いね」
柊平さんは、母が持ってきたアルバムを開いて、家族でハワイにいったときの写真をみてうっとりしている。
んんんー?
これは、ヤバイモードの目では?
写真の中の私は水着だから、当然生足。
柊平さんは明らかに、足しか見ていない。
母が部屋を出ていったとたん、柊平さんの指が私の足に触れた。今日はワンピースに素足だったから、肌に直に触れてくる。
「可愛い」
「あの……ちょっと? 待っ……」
ああ、雰囲気が変だなと思ったときにはもう唇を塞がれていた。
「ん……」
軽く唇が触れあっただけなのに、私の心臓が早くなる。柊平さんは何度も唇にキスをして、それから頬と首にキスをした。その間、指はずっと私の足を撫でていた。
「あの……」
「何?」
至近距離で見る美形は迫力があるなぁ……と思っていた。潤んでる黒い瞳が綺麗。すこし開いた口から覗く赤い舌がえっちだ。
キスをやめてほしいと言いかけたが、本当はやめて欲しくない。何も言葉を継ぐことが出来ずにいたら、またキスされてしまった。
さっきまでと違って深く。
舌が侵入してきて、私を捕える。ちゅ、くちゅ、と唾液の混ざる音がして、ぼんやりしてきた私は夢中で舌を絡めた。
「ぁっ……ん……」
「可愛い声を聞きたいんだけど、いまは我慢してね」
柊平さんに甘く囁かれて、気持ちよくてだんだん力が入らなくなって、私はベッドにもたれた。首にキスされながらスカートの中に手が入ってきたけど、もう抵抗出来なかった。
「濡れてる。楓子ちゃんは可愛いね」
「柊平さんが触るから……」
「そう? 触る前から濡れてたけど。……声、我慢できる?」
「自信ないです……」
「じゃあ、キスだけ」
そう言って、柊平さんはキスを続けながら、胸に触れたり足を撫でたりしている。両親がいるのに。能天気な母がいつ部屋に来るかなんてわからないのに。そう思ってドキドキしていたら、ノックの音と母の声がした。
慌てて体を離して、髪を整えてドアを開けた。
「楓子ちゃん、ママ達買い物行ってくるけど、一緒に行く?」
「え、なんで? さっき帰ってきたばっかりじゃない?」
「いいお肉買いに行こうかってパパが言うから」
母が私にそう答えると、柊平さんが遮るように言った。
「お気遣いなく」
「いーえー! せっかくだから!」
母が無邪気にニコニコしている。こうなると、たいてい母は我を通す。
「……では、私はもう少し写真を見たいので、ここにいても構いませんか?」
「勿論!」
母は柊平さんに笑顔で返事をしてから、私に向かって言った。
「じゃあパパとママは出掛けるわね。車で出るから、すぐ戻るわ」
そう言い残して母はまたパタパタと軽い足取りで階段を降りていった。
家に二人きりになってしまった。
母はおそらく柊平さんを紳士だと思っているのだろうが、この人は変態なのだ。ド変態なのだ。
これからどうなるのか、馬鹿な私でも容易に想像がつく。私は、自分の手元から聞こえた鍵のかかる軽い金属音に、体が震えるのを感じていた。
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