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変わる世界

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──────────朝6時   佐藤家

「ぃさん....兄さん....」

(誰だようるせぇな、俺は今眠ぃんだよ)

誰かが遥斗の体を揺する。

遥斗はまた寝ようとする。すると.......

「起きないと....兄さん..殺すよ」

そう言うと呼吸が苦しくなり周囲の温度が何度か下がった気がした。

「ふぁ!?」

遥斗は跳ね起きた。

そこに居たのは、妹の雪と弟の健二だった。

「兄さんおはよう」

「お、おはよう」

(なんでコイツらが俺の部屋にいるんだ?)

佐藤家は全員の個室があるはずなのだが、雪と健二は揃って遥斗の部屋に来ていた。

「なんでここにいるの?」

当たり前の疑問だった。健二がラノベを借りに部屋に来ることがあるが、雪まで来る理由が分からない。

「ふっふっふ」

雪は慣れない笑い方をしたせいかワザと言ってる感が滲み出ている。

「いいから早く言ってくれ、こっちは眠いんだ」

(日付変わってから寝たから、まだ寝たい)

「実はね.......モンスターが現れたんだよ!」

「..............は?」

(モンスターが出てくるのは知ってる。知ってるがもう遭遇してしまったのか?)

「そんでね!そんでね!兄さんさっきビクッってしたでしょ!あれ私のスキルなんだよ!」

「えぇ.......」

(遭遇したのは確実だよな。でも俺よりも早く使えるのかよ!しかも、しっかり発動したし)

「あ、兄さん信じてないでしょ!なら...「いや信じる」」

遥斗は雪の説明を遮った。

「へっ?」

雪はあっけに取られてるようだ。

「だから信じるって」

「なんで?」

「なんでって言われても俺も使えるからな」

「えぇー!」

「雪は置いといて健二も使えるのか?」

「うん、使えるよ」

どうやら2人とも出来るようだ。

(雪は魔法使い系だと思ってたんだがなぁ)

「無視するな~」

そんな風に騒いでいる雪を無視して遥斗は考え込む。

「2人はどんな職業を選んだんだ?」

遥斗は聞いてみた。職業によっては得られるスキル等変わるからだ。

(もし、人を殺すことになった場合の相性とか考えないといけないからな。)

それだけでなく、連携なども上手くいくかどうかも関係してくる。

そして雪と健二は答えた。

「私は賢者」

「俺は冒険者」

.....................
辺りが静寂に包まれた。

(だって俺がさっき受けたのは魔法じゃなくて戦士とかの『威圧』とかそんな感じのスキルだろ?)

「まてまてまて、健二は分かるが何故雪は賢者なんだ?俺がさっき感じた苦しさと寒気は何なんだ?」

そう遥斗が問うと雪は当たり前のように答えた。


「何って、あれは唯兄さんの周りの空気の酸素を減らして温度を少し下げただけよ」

「は?言ってる意味は分かるんだが、何で使えてんだよ!」

「なんでって使えるものは使えるんだからしょうがないじゃない!」

そうガミガミと言い合っていると

「流石に.....『うるさい』」

健二がそう言うと2人は自然と黙ってしまった。

健二が『威圧』のスキルを発動させたのだ。

これは雪が遥斗に使った擬似的なものではなく、心を鷲掴みにされているような恐怖を覚えてしまうものであった。そして比喩では無く、本当に奥歯がガタガタ鳴っている。

..............
又しばしの沈黙

「雪も兄さんも喧嘩はそれぐらいにして朝ごはん食べに行くよ」

健二はそう言ってリビングに向かった。

「「は~い」」

遥斗と雪は同時に返事をすると健二の後をついて行った。



「ところで母さんや父さんにもこの話したの?」

遥斗は少し気になったので聞いてみた。 

「父さんと母さんも知ってるよ、ていうか2人が教えてくれたんだもん」

「えっ?」

遥斗はしばらくフリーズした。その間に雪と健二が「見えてますかぁ」と煽るように遥斗の前に手を出して振っていた。

そこで突然「ハッ!」となる遥斗。

「おい、流石にそれは無いだろ?逆だろ?」

さも現実を受け止めたくないように遥斗は言う。
すると健二はそんな遥斗の気持ちを無視して言う。

「いや、合ってるよ」

「うそん」

「だから本当だって」

「えぇー」

「本人達に直接聞けば?」

そう健二が言うとリビングに、着いていた。

「本当だぞ!」

自信満々にそう言うのは遥斗達の父親の佐藤   渡だ。

「あらあらアナタ、そんなに大きな声で言わなくても聞こえてますよ」

そう遥斗達の母親の佐藤   美雪が言うと

「む、そうかそうだなすまなかった」

と素直に謝った。

「ささ早く朝食を食べましょ」

そう言われると全員が食卓に座った。

佐藤家は普段は朝食は一緒に食べない。しかし、重要な事がある日はこうやって無理矢理起こして共に食べる。

今日の朝食はご飯、味噌汁、鮭、たくあんと和食メニューだった。

..............
それをただ無言で食べる。




やがて、全員が食べ終わった頃に渡が言った。

「緊急家族会議を始める!」

そして美雪が言った。

「洗い物が終わってからね?」

「はい!すいませんでしたー!」

(なんか、よく分からんが父さん弱!)

こうして洗い物を待つ。



「ふー終了」

洗い物の片付けが終わったようだ。

「では改めて緊急家族会議を始める」

そう渡が言った。すると美雪が、

「あっ排水溝が詰まっちゃったわ直さないと」

それにたいして渡はこう言う

「そんな事は後で良いじゃないか」

「まぁそうね」

美雪はやや寂しそうにそう言った。

そのなんとも言えない空気に呑まれて、しばらく沈黙が続いた。








この話はフィクションです
キャラの名前、企業、団体は現実とは関係ありません
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