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24 腑に落ちないけど、いいでしょう
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夜遅く。
泣き腫らした顔のリヴィエラを連れて帰ったマックスの頬を、脊髄反射で張り飛ばしたわ。
「あんた、リヴィエラになにしたのよ!」
「!」
見ると、なんとなくドレスが薄汚れてもいる。
甘んじて受けたマックスが、横を向いて目を閉じた。涼しい顔して。
「ち、違うのソニア……!」
「黙って連れ出して泣かせて、ちょっとでも信用した私が愚かだったわ!!」
「待ってソニア、落ち着いて……!」
「?」
あまりに狼狽した様子でしがみついてくるリヴィエラに、私の頭もスッと冷えた。
……どうも、何かはあったようだけれど、私が心配したような事ではないみたい。
私が二発目のために振り上げた手を下ろすと、リヴィエラが安心したのか、脱力したのか、少しよろよろと体の向きを変えてマックスに頭を下げた。
「私の都合でお時間を奪い、申し訳ありませんでした……失礼な物言いに、身勝手な振る舞いでした。本当に、申し訳ありませんでした……ご迷惑を、おかけしました……」
「リヴィエラ……?」
私、ぶってしまったのだけど。
まずかったかも。
「マックス」
気まずいのを耐えて呼ぶと、マックスは腫れた頬を見せつけつつも、気にするなと手振りで示した。
どうもマックスのほうは沈黙を貫くつもりのようなので、ひらすら頭を下げ続けるリヴィエラを私はそっと手を添えて起こした。
泣き腫らした目には、強い後悔や深い悲しみがある。
「怪我はないの?」
「……っ」
気遣ったつもりが、泣かせてしまった。
リヴィエラは両手で顔を覆い、また謝った。
「私は……怪我してないの……っ、ごめんなさい……っ」
「……」
この感じだと、まるでリヴィエラが誰かに怪我をさせたみたいじゃない。
何があったの?
「……」
マックス。
なんとか言いなさいよ。
「……」
無駄ね。
私はリヴィエラの肩に手を添えて、震える手に覆われた顔を覗き込んだ。酷い様子。とにかく休ませなくては。
「さあ、お部屋に行きましょう? もう遅いわ。ね? あの人も気にしてなさそうだし、あなたすごく疲れてるみたい。ほら。リヴィエラ。おかえりなさい。帰ってきたのよ。もう大丈夫よ」
と、いろいろ声を掛けながらなんとかリヴィエラを動かして、思い出して肩越しに振り向く。
私、マックスをぶったわね。
「マックス、失礼。ごめんなさい……?」
「……」
腑に落ちないがためのぎこちない謝罪にも、彼は涼しい顔で頷いて見せた。
なんなの。
3日以内に説明がなければ、次は蹴るわよ?
「……っ」
リヴィエラは泣いてるし。
歩きながら、私はリヴィエラの背中を撫でたり、髪にキスをしたり、大忙しよ。
「ごめんなさい、ソニア……っ」
「いいのよ。きっと、恐い事があったのね。いいの。大丈夫よ」
カルミネのせいで母性が暴走しているのだと、アルセニオからもお墨付きをもらっている。
それで丸く収まるならなんでもするわ。
私たちはもう、解放されたんだもの。
あとは幸せになるだけよ。
夜泣きにも慣れてる。
泣き腫らした顔のリヴィエラを連れて帰ったマックスの頬を、脊髄反射で張り飛ばしたわ。
「あんた、リヴィエラになにしたのよ!」
「!」
見ると、なんとなくドレスが薄汚れてもいる。
甘んじて受けたマックスが、横を向いて目を閉じた。涼しい顔して。
「ち、違うのソニア……!」
「黙って連れ出して泣かせて、ちょっとでも信用した私が愚かだったわ!!」
「待ってソニア、落ち着いて……!」
「?」
あまりに狼狽した様子でしがみついてくるリヴィエラに、私の頭もスッと冷えた。
……どうも、何かはあったようだけれど、私が心配したような事ではないみたい。
私が二発目のために振り上げた手を下ろすと、リヴィエラが安心したのか、脱力したのか、少しよろよろと体の向きを変えてマックスに頭を下げた。
「私の都合でお時間を奪い、申し訳ありませんでした……失礼な物言いに、身勝手な振る舞いでした。本当に、申し訳ありませんでした……ご迷惑を、おかけしました……」
「リヴィエラ……?」
私、ぶってしまったのだけど。
まずかったかも。
「マックス」
気まずいのを耐えて呼ぶと、マックスは腫れた頬を見せつけつつも、気にするなと手振りで示した。
どうもマックスのほうは沈黙を貫くつもりのようなので、ひらすら頭を下げ続けるリヴィエラを私はそっと手を添えて起こした。
泣き腫らした目には、強い後悔や深い悲しみがある。
「怪我はないの?」
「……っ」
気遣ったつもりが、泣かせてしまった。
リヴィエラは両手で顔を覆い、また謝った。
「私は……怪我してないの……っ、ごめんなさい……っ」
「……」
この感じだと、まるでリヴィエラが誰かに怪我をさせたみたいじゃない。
何があったの?
「……」
マックス。
なんとか言いなさいよ。
「……」
無駄ね。
私はリヴィエラの肩に手を添えて、震える手に覆われた顔を覗き込んだ。酷い様子。とにかく休ませなくては。
「さあ、お部屋に行きましょう? もう遅いわ。ね? あの人も気にしてなさそうだし、あなたすごく疲れてるみたい。ほら。リヴィエラ。おかえりなさい。帰ってきたのよ。もう大丈夫よ」
と、いろいろ声を掛けながらなんとかリヴィエラを動かして、思い出して肩越しに振り向く。
私、マックスをぶったわね。
「マックス、失礼。ごめんなさい……?」
「……」
腑に落ちないがためのぎこちない謝罪にも、彼は涼しい顔で頷いて見せた。
なんなの。
3日以内に説明がなければ、次は蹴るわよ?
「……っ」
リヴィエラは泣いてるし。
歩きながら、私はリヴィエラの背中を撫でたり、髪にキスをしたり、大忙しよ。
「ごめんなさい、ソニア……っ」
「いいのよ。きっと、恐い事があったのね。いいの。大丈夫よ」
カルミネのせいで母性が暴走しているのだと、アルセニオからもお墨付きをもらっている。
それで丸く収まるならなんでもするわ。
私たちはもう、解放されたんだもの。
あとは幸せになるだけよ。
夜泣きにも慣れてる。
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