えっと、幼馴染が私の婚約者と朝チュンしました。ドン引きなんですけど……

百谷シカ

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1 愛の破滅

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「えっ!? ……なに、してるの……?」


 麗らかな朝日の差し込む、部屋の中。
 私は幼馴染に我知らず問いかけていた。


「え?」

「あ」


 モイラのベッドで、モイラの体に巻き付いているのは、私の婚約者のレニー。
 ふたりとも、裸だ。

 脱ぎ捨てられた衣服が部屋中に散乱している。


「どういう事よ……!?」


 胸が張り裂けた。
 体がガクガクと震え、息が乱れる。

 私が戸口で震えているのを見て飛び起きたのは、モイラのほうだった。


「ちっ、違うのよ、オリヴィア! これはっ、なななななんでもないのっ!」

「……なんでもない……?」


 そんなはずない。
 だってふたりは、見るからに……完全に……そう。


「いや、あ……えっと」


 レニーが、やっと、目を擦りながらのそりと身を起こした。
 なぜか私より先に、モイラが泣き始める。


「オリヴィア……!」

「……嫌」

「オリヴィア、違うの……!」

「嫌」


 こんなの、現実なはずない。
 夢だ。
 悪い夢。
 そうでなきゃ、困る。

 私は必死で首を振った。

 でも、現実だった。


「嫌ぁっ!!」


 感情が爆発する。
 私はあれこれと泣き喚きながら、ベッドに近寄ったり離れたりを繰り返した。

 モイラがガウンを羽織って、美しい髪を乱したまま、汗と甘い匂いを纏ったまま、私を宥めに寄ってくる。それを見て、寝惚けているのかふざけているのか、レニーも私を宥めに来た。

 レニーは、裸。初めて見た。
 でも私より先に、モイラが見たのだ。


「ごめんなさい、オリヴィア。あなたを傷つけるつもりはなかったの」

「まあ、落ち着いて」


 必死に取り縋ってくるモイラ。

 でも、レニーは寝惚けているのかもしれない。
 ヘラヘラと笑って、頭を掻いている。


「えっと、ちょっと飲み過ぎて」

「はあ……?」


 悲しくて、声が掠れる。

 昨夜は舞踏会だった。
 カメロン侯爵家に招かれて、幼馴染のモイラに婚約者のレニーを紹介した。


 ──お会いできて光栄です、レニー卿。もし私の大切なオリヴィアを泣かせでもしたら、只じゃおきませんわよ。


 モイラはそう言ってくれた。
 誰よりも信頼し、愛していた、姉のようなモイラ。

 それなのに……


「ああ、オリヴィア。泣かないで。ごめんなさい」


 モイラが、いつものように、私の髪を撫でて、頬の涙を拭う。
 レニーも手を伸ばしてくる。

 悪寒が走った。


「触らないで! 気持ち悪い!!」

「!」


 レニーはぽかんとしていた。
 モイラは、傷ついたような顔をしていた。

 どうして?

 裏切ったのは、モイラなのに。


「……!」


 私は部屋を飛び出した。
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