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1 婚約者から驚愕の告白
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「マルグリット。僕は、君の事を心から尊敬している。心から思いやっている。僕の生涯を通して、君は、必ず幸せになってほしいと願う大切な人のひとりなんだ。それはわかってほしい。だけど、君は、その……とても真面目な女性だ。この関係を心から光栄に思っているし、心から歓迎している。でも君は……僕の婚約者と言うより、僕の……主だ。君臨している。心から、僕は平伏している」
「そう。それで?」
「それで、誤解をしないでほしいのだが。マルグリット。僕は、心から君に忠誠を誓う。ただ、恋は……」
「恋?」
「ああ! この胸の奥から沸き上がってくる熱い想いだけは、君のほうを向かないんだ。この炎は!!」
私はずれた眼鏡を直し、婚約者であるベロム侯爵令息イーサンを見つめた。
目が泳いで、冷や汗をかいて、身振り手振りが多すぎて、とっても見苦しい。
「愛! 僕の愛は、君が心からその幸せを願う可憐な乙女、君の妹、デュシャン公爵令嬢ミシェルを包み込んでしまった!! もうほかの女性は愛せない!!」
「ミシェルはなんて?」
「僕を愛してるって!! だから……!」
なにを言い淀む必要があるのかしら。
自分が言い出したことでしょう? イーサン。
いくじなしね。
「私との婚約を白紙に戻したいと?」
「えっ!?」
「?」
え?
違うの?
そういう話だと思ったのだけど。
「いっ、いやいや違う! 君とは結婚するよ!?」
「はい?」
「僕はただ、ミシェルとの仲を認めてほしいだけなんだ。わかるだろう?」
「いいえ」
「頼むよ! ミシェルを誰とも婚約させないでほしいんだ。僕は君と結婚する。そして、このデュシャン公爵家でひっそりと愛を育むよ。ミシェルと」
「あなた、正気?」
「ああ、もちろん! 君の邪魔はしない。君と子作りにも励む」
「やめて、気持ち悪い」
「マルグリット! 頼む許してくれ! 心からミシェルを愛しているんだ!!」
私としては、その理屈が通用すると思っていそうなところが、心底、謎。
「そう。それで?」
「それで、誤解をしないでほしいのだが。マルグリット。僕は、心から君に忠誠を誓う。ただ、恋は……」
「恋?」
「ああ! この胸の奥から沸き上がってくる熱い想いだけは、君のほうを向かないんだ。この炎は!!」
私はずれた眼鏡を直し、婚約者であるベロム侯爵令息イーサンを見つめた。
目が泳いで、冷や汗をかいて、身振り手振りが多すぎて、とっても見苦しい。
「愛! 僕の愛は、君が心からその幸せを願う可憐な乙女、君の妹、デュシャン公爵令嬢ミシェルを包み込んでしまった!! もうほかの女性は愛せない!!」
「ミシェルはなんて?」
「僕を愛してるって!! だから……!」
なにを言い淀む必要があるのかしら。
自分が言い出したことでしょう? イーサン。
いくじなしね。
「私との婚約を白紙に戻したいと?」
「えっ!?」
「?」
え?
違うの?
そういう話だと思ったのだけど。
「いっ、いやいや違う! 君とは結婚するよ!?」
「はい?」
「僕はただ、ミシェルとの仲を認めてほしいだけなんだ。わかるだろう?」
「いいえ」
「頼むよ! ミシェルを誰とも婚約させないでほしいんだ。僕は君と結婚する。そして、このデュシャン公爵家でひっそりと愛を育むよ。ミシェルと」
「あなた、正気?」
「ああ、もちろん! 君の邪魔はしない。君と子作りにも励む」
「やめて、気持ち悪い」
「マルグリット! 頼む許してくれ! 心からミシェルを愛しているんだ!!」
私としては、その理屈が通用すると思っていそうなところが、心底、謎。
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