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4 求婚者、現る

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 そんな私の友と4時間後にまた顔を合わせた。


「おはようございます、プリンセス」

「デュモン。随分と早起きね」

「よかった。心配したんですよ。だけど顔色も悪くない。今日も美しいですよ、プリンセス・バルバラ」


 私を甘やかすのが趣味なのか、いつでも私をプリンセス扱いするこの友。彼だけはこうして、たまに私の名前を呼ぶ。


「ええ。プリンセスに休息はないわ」

「昼寝をするなら昼食会のホストはぜひ俺に任せてください」

「いいえ。っていうか、昼寝が必要なのはあなたじゃない? どうしたの? ちゃんと寝た?」


 並んで廊下を歩く。
 窓から差し込む清々しい朝陽は、優しくて、どこまでも澄んでいた。

 天使に祝福された朝。
 きっと素晴らしい昼食会になる。


「寝ましたよ。昼食会までに即席の《河》を庭に造るんです」

「へえ、そう」


 カバは水辺の動物なので、彼は巨大な浴槽というか、車輪を使った可動式大浴場を造り、それを《河》と名付けた。そして《河》に水を汲むために50人雇った。


「《河》は売れそう?」

「ええ。もう数件の申し込みを受けました」

「皆様、珍しい物好きね」

「そうだ。それであなたにお願いがあるのですが、実はグングンに言い値をつけてきた伯爵がいて、俺は丁寧に断ったんですが、あっちは貴族でこっちは商人ですから。あなたからも釘を刺して頂きたいんです」

「ええ。誰?」

「ラファラン伯爵」


 3年ほど前に爵位を継いだラファラン伯爵オーブリー・ルノー。
 父親と違って流行り好きで、金遣いの荒い道楽息子だ。


「ああ。あなたの商売の足しになればと思ったら、裏目に出ちゃったわね」

「いいえ。宝石やら織物、香辛料に香水等々、いろいろと買い付けてくださいましたよ。問題はグングンを家畜と勘違いしている事だけです」

「言っておくわ」


 そして昼食会も滞りなく過ぎ、グングンの水浴びも拍手や口笛で盛り上がり、午後のレクレーションでそれは起きた。
 ラファラン伯爵から声をかけてきたのだ。


「まあ、ラファラン伯爵。球技大会はお楽しみ頂けてますか?」

「ええ、もちろん」


 ご機嫌そうに頷いて、ラファラン伯爵は私を軽い散歩に誘った。
 話をするのにどこで捉まえようかと考えていたので、よかったはよかったのだけれど……


「これは失礼。あの動物はレディ・ドルイユの友なのですね」

「ええ。お判りいただけるかしら」

「当然です。私にも愛馬がおりますから。とんだ失態だな。でもいいきっかけにはなった」

「はい?」


 小鳥が鳴いた。
 風が吹いた。

 そしてラファラン伯爵がすっと私の行く手を塞ぎ、真剣な顔をして言った。


「強く美しく気高いレディ・ドルイユ。私の妻になってほしい」
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