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2 勘当された妹
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「お姉様、お願い。私はいくらでも我慢できる。だけど、うちの双子は育ち盛りでいっつもお腹を空かせているの。それで気が立ってるし、私の稼ぎだけではどうしても足りないのよ。わかるでしょう?」
「イアサント。これまで何度も言ってきた通り、あなたに渡すお金はこれっぽっちもありません」
「私じゃなくて子供たちの事を考えてちょうだい。お姉様の甥なのよ?」
「もう11才なら川で釣りでもして自分の食べる分くらい用意できるでしょう」
「そんな時間はないわ。ふたりとも大工の棟梁に弟子入りして朝から晩まで働いているんだもの」
「とにかくお金はあげません。イアサント、あなたのおかげでドルイユ伯爵家は破産しかけたのよ? 自分で選んだ道の責任は、自分で背負いなさい」
「今は大金持ちじゃない! あのお抱え商人がなんだって用意してくれる。よくやったわ。お姉様は領主として頑張ってる。そんなに着飾って……ねえ、そのブローチひとつだけでいいからくださらない? それで一月うちの双子は食べていけるわ」
「帰りなさい、イアサント。私からあなたへあげるものなんて、ひとつもありはしません」
妹を書斎から追い出した。
それまで堪えていた涙が、どっと溢れてくる。
私は椅子に座り、机に肘をついて頭を抱えた。
「ご主人様」
執事が労わるような声をかけてくれる。
老齢の執事セシャンは、代々ドルイユ伯爵家に仕えている一家のひとりで、私が物心ついた頃から執事だった。私やイアサントの成長も見守り、祖母と祖父が相次いで亡くなった時には崩れ落ちて泣いてくれた。
「セシャン……あの子に干し肉を持たせてあげて。それとパンと、干したイチジクを。それとマス。マスはアネットに持って行かせて。アネットはあの子がマスを大好きだって知っているから」
「畏まりました」
「お願い」
王子との婚約を放り出し、騎士のフェリクス・マクロンと駆け落ちした妹イアサント。本当だったらふたりとも処刑されてもおかしくなかった。フェリクスが王子の側近で親友だったために、国王に歎願して命だけは助けてもらえたのだ。そしてドルイユ伯爵家は、イアサントを勘当する事を条件に爵位剥奪を免れた。
今どんなにイアサントが苦しくても、勘当を解く事はできない。
「ご主人様。万事、整いました」
執事が戻ってきた。
「ありがとう」
目尻の涙を拭いて、立ち上がる。
「大丈夫ですか? デュモンなら、もうしばらく場を繋げると思いますが」
「いいえ。私の晩餐会だもの。これ以上、お客様を放り出せないわ」
ざっと身嗜みを整えて、女当主の顔に戻る。
「行きましょう、セシャン。夜はこれからよ」
「イアサント。これまで何度も言ってきた通り、あなたに渡すお金はこれっぽっちもありません」
「私じゃなくて子供たちの事を考えてちょうだい。お姉様の甥なのよ?」
「もう11才なら川で釣りでもして自分の食べる分くらい用意できるでしょう」
「そんな時間はないわ。ふたりとも大工の棟梁に弟子入りして朝から晩まで働いているんだもの」
「とにかくお金はあげません。イアサント、あなたのおかげでドルイユ伯爵家は破産しかけたのよ? 自分で選んだ道の責任は、自分で背負いなさい」
「今は大金持ちじゃない! あのお抱え商人がなんだって用意してくれる。よくやったわ。お姉様は領主として頑張ってる。そんなに着飾って……ねえ、そのブローチひとつだけでいいからくださらない? それで一月うちの双子は食べていけるわ」
「帰りなさい、イアサント。私からあなたへあげるものなんて、ひとつもありはしません」
妹を書斎から追い出した。
それまで堪えていた涙が、どっと溢れてくる。
私は椅子に座り、机に肘をついて頭を抱えた。
「ご主人様」
執事が労わるような声をかけてくれる。
老齢の執事セシャンは、代々ドルイユ伯爵家に仕えている一家のひとりで、私が物心ついた頃から執事だった。私やイアサントの成長も見守り、祖母と祖父が相次いで亡くなった時には崩れ落ちて泣いてくれた。
「セシャン……あの子に干し肉を持たせてあげて。それとパンと、干したイチジクを。それとマス。マスはアネットに持って行かせて。アネットはあの子がマスを大好きだって知っているから」
「畏まりました」
「お願い」
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今どんなにイアサントが苦しくても、勘当を解く事はできない。
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「ありがとう」
目尻の涙を拭いて、立ち上がる。
「大丈夫ですか? デュモンなら、もうしばらく場を繋げると思いますが」
「いいえ。私の晩餐会だもの。これ以上、お客様を放り出せないわ」
ざっと身嗜みを整えて、女当主の顔に戻る。
「行きましょう、セシャン。夜はこれからよ」
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