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11 時を越えた最終決戦(中)
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「ビアンカ! どうすればいい!?」
ハザルは言語での意志疎通が微妙な上に甲冑でヨタついているし、頼れるのは永遠の6才スーパーガールのビアンカよ。
ビアンカはフワッとハザルのほうへ飛んで、甲冑の手を引いた。
〈今、この甲冑に母さんが入ってるから〉
「ええ」
〈これをジークフリードに着てもらって〉
「ええ」
〈で、私がこの剣に入る〉
「え、ええ」
〈レディ・スティナは奴を出して〉
「ええ……」
〈みんなで奴を倒す!〉
「ええ……そうね」
わかるけど、あのヘタレにできる……?
衛兵に着せたほうが、まだ……
〈レディ・スティナ! お願い! あなたの力が必要なの!〉
いえ、だから、問題は私より、あっちで震えあがってるジークフリード卿じゃないかなって……
〈聞いてんのッ!?〉
「え? あ、ええ。大丈夫。聞いてる」
切羽詰まった状況だから、悩んでる暇はないわよね。
それはそう。
「さっきからなにを話してるッ!?」
ヘタレが参加してきた。
「ハザル入りの甲冑をジークフリード卿に着て頂いて」
「へっ!?」
「ビアンカ入りの剣を振るって頂いて」
「へっ!?」
「私がおじぃから悪霊を出すので」
「グアアァァァッ!」
「ヒイッ!」
「ぶった斬ってください」
「そんなの無理だッ! 嫌だっ!! もう限界ィィィィィッ!!」
〈なに弱音吐いてるの! それでもフロールマンの領主なのッ!? しっかりしなさい!〉
まったくその通りよ!
こっちもいい加減ブチギレるっつーの!!
「そうですよ! それでもフロールマンの御領主様なんですかッ!? こっちだって遊びで来てやってるんじゃないんだからいつまでもピーピーこどもみたいに泣いてないでちょっとは漢を見せたらどうなのっ!?」
〈そうよ! レディ・スティナ、もっと言ってやって!!〉
「このヘタレ!!」
「ひんっ!」
心に響いたみたい。
ジークフリード卿は己を律して目尻も濡らして、一点を見つめて精神統一を始めた。
「そうだ……私は、私は誉れ高きフロールマン辺境伯領の主、ジークフリード・マイステル……幼気な乙女と乙女に至らなかった幼女と不遇なその若い母親にだけ戦わせ、漢たる私がひとり震えあがっているなど──」
〈ちょっと! こども扱いしないで! 6才よ!!〉
「ビアンカは6才だから幼女じゃない」
大事そうなので、代わりに訂正を要求しておいた。
「おっ、乙女に至らなかったお嬢さんと、その若い母親、と、うら若き愛する乙女レディ・スティナ。3人にこの場を任せ何もしないような私であっていいはずがない。そうだ、私は、私は──」
え。
今、愛するって言った?
〈ちょっと! ぼぉーっとしないで!〉
「え? あ、ええ。ヘタレフリード卿やれますか?」
「ああ! やってみせるとも! ヒィッ! ハザル!! ハザル、さぁ来たまえッ!!」
「いえ、あなたが着るんです。そこは自分でやってもらはないと」
〈母さん、もうちょっと! がんばって!!〉
〈えっさ……ほぃ〉
私は、ついに、ハザル入りの甲冑を後ろから押してあげたわよ。
なんかハザルが非力なんだもの。
それに、あまり長く悪霊に乗っ取られたままにしておいたら、抜いてもおじぃが死んじゃいそう。
「おじぃ! 頑張って!!」
「グアアァァアァ!!」
絶対、返事じゃないわよね。
ま、しょうがないけど。
「ハザル! 奴をおじぃの体から出すわ! 奴の名前はッ!?」
カチャ。
ハザル入りの甲冑が動きを止めた。
「ハザル?」
〈母さん?〉
…………
〈母さんッ!?〉
ハザルは、ヨタついた兜をコテンと傾け、人差し指を実に重そうに持ち上げてこめかみにあてた。
「忘れてるッ!?」
〈ちょっと!!〉
いや冗談じゃないわよ!
「なんだ!? ハザルを追ってきた暗殺者の名前か!?」
ほぼ悲鳴ながら、ヘタレフリード卿に領主の威厳か垣間見えた。
「そう! 名前を呼んでおじぃから引きずり出んだけど、ハザルが忘れてんの!」
もう敬語とか使ってられない。
なんなら私が一番偉いんじゃない?
「ムドメンドバリ!」
「はあっ!?」
「ムドメンドバリだ!!」
〈あ。ムンヅ・メンヅ・バルゥ〉
「ちょっと違うみたい!」
「ええっ!?」
「でもハザルが思い出したから大丈夫!!」
私はヘタレフリード卿を怒鳴って元気づけてから、再び全力でハザル入りの甲冑を押した。
「ほら頑張って!! 時を越えてついに決着をつけるんでしょ!! ファイト!!」
〈さいで、がんすっ♪〉
「ん?」
これは南瓜売り以外にもう一人いるわね。
ハザルは言語での意志疎通が微妙な上に甲冑でヨタついているし、頼れるのは永遠の6才スーパーガールのビアンカよ。
ビアンカはフワッとハザルのほうへ飛んで、甲冑の手を引いた。
〈今、この甲冑に母さんが入ってるから〉
「ええ」
〈これをジークフリードに着てもらって〉
「ええ」
〈で、私がこの剣に入る〉
「え、ええ」
〈レディ・スティナは奴を出して〉
「ええ……」
〈みんなで奴を倒す!〉
「ええ……そうね」
わかるけど、あのヘタレにできる……?
衛兵に着せたほうが、まだ……
〈レディ・スティナ! お願い! あなたの力が必要なの!〉
いえ、だから、問題は私より、あっちで震えあがってるジークフリード卿じゃないかなって……
〈聞いてんのッ!?〉
「え? あ、ええ。大丈夫。聞いてる」
切羽詰まった状況だから、悩んでる暇はないわよね。
それはそう。
「さっきからなにを話してるッ!?」
ヘタレが参加してきた。
「ハザル入りの甲冑をジークフリード卿に着て頂いて」
「へっ!?」
「ビアンカ入りの剣を振るって頂いて」
「へっ!?」
「私がおじぃから悪霊を出すので」
「グアアァァァッ!」
「ヒイッ!」
「ぶった斬ってください」
「そんなの無理だッ! 嫌だっ!! もう限界ィィィィィッ!!」
〈なに弱音吐いてるの! それでもフロールマンの領主なのッ!? しっかりしなさい!〉
まったくその通りよ!
こっちもいい加減ブチギレるっつーの!!
「そうですよ! それでもフロールマンの御領主様なんですかッ!? こっちだって遊びで来てやってるんじゃないんだからいつまでもピーピーこどもみたいに泣いてないでちょっとは漢を見せたらどうなのっ!?」
〈そうよ! レディ・スティナ、もっと言ってやって!!〉
「このヘタレ!!」
「ひんっ!」
心に響いたみたい。
ジークフリード卿は己を律して目尻も濡らして、一点を見つめて精神統一を始めた。
「そうだ……私は、私は誉れ高きフロールマン辺境伯領の主、ジークフリード・マイステル……幼気な乙女と乙女に至らなかった幼女と不遇なその若い母親にだけ戦わせ、漢たる私がひとり震えあがっているなど──」
〈ちょっと! こども扱いしないで! 6才よ!!〉
「ビアンカは6才だから幼女じゃない」
大事そうなので、代わりに訂正を要求しておいた。
「おっ、乙女に至らなかったお嬢さんと、その若い母親、と、うら若き愛する乙女レディ・スティナ。3人にこの場を任せ何もしないような私であっていいはずがない。そうだ、私は、私は──」
え。
今、愛するって言った?
〈ちょっと! ぼぉーっとしないで!〉
「え? あ、ええ。ヘタレフリード卿やれますか?」
「ああ! やってみせるとも! ヒィッ! ハザル!! ハザル、さぁ来たまえッ!!」
「いえ、あなたが着るんです。そこは自分でやってもらはないと」
〈母さん、もうちょっと! がんばって!!〉
〈えっさ……ほぃ〉
私は、ついに、ハザル入りの甲冑を後ろから押してあげたわよ。
なんかハザルが非力なんだもの。
それに、あまり長く悪霊に乗っ取られたままにしておいたら、抜いてもおじぃが死んじゃいそう。
「おじぃ! 頑張って!!」
「グアアァァアァ!!」
絶対、返事じゃないわよね。
ま、しょうがないけど。
「ハザル! 奴をおじぃの体から出すわ! 奴の名前はッ!?」
カチャ。
ハザル入りの甲冑が動きを止めた。
「ハザル?」
〈母さん?〉
…………
〈母さんッ!?〉
ハザルは、ヨタついた兜をコテンと傾け、人差し指を実に重そうに持ち上げてこめかみにあてた。
「忘れてるッ!?」
〈ちょっと!!〉
いや冗談じゃないわよ!
「なんだ!? ハザルを追ってきた暗殺者の名前か!?」
ほぼ悲鳴ながら、ヘタレフリード卿に領主の威厳か垣間見えた。
「そう! 名前を呼んでおじぃから引きずり出んだけど、ハザルが忘れてんの!」
もう敬語とか使ってられない。
なんなら私が一番偉いんじゃない?
「ムドメンドバリ!」
「はあっ!?」
「ムドメンドバリだ!!」
〈あ。ムンヅ・メンヅ・バルゥ〉
「ちょっと違うみたい!」
「ええっ!?」
「でもハザルが思い出したから大丈夫!!」
私はヘタレフリード卿を怒鳴って元気づけてから、再び全力でハザル入りの甲冑を押した。
「ほら頑張って!! 時を越えてついに決着をつけるんでしょ!! ファイト!!」
〈さいで、がんすっ♪〉
「ん?」
これは南瓜売り以外にもう一人いるわね。
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