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10 時を越えた最終決戦(前)
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「はぁっ、はぁっ、ひぃっ、まじイタぃ……っ」
私の背中どうなってんの!?
婚約破棄されて嫁入り前なんだけど!?
「え? フックスベルガーさん?」
「フックスベルガーさん、走ってる……」
「やだっ、フックスベルガーさんが呆けた!」
城内は大混乱真っ最中よ。
私とした事が!
「おにぃさん! おにぃさん、おじぃ追って!」
「えっ、おじぃ?」
「おじぃ?」
「そうよどう見てもおじぃでしょ! おじぃ追って!!」
手あたり次第に元気そうな男性の使用人に声をかけて、私は必死でおじぃを追って走った。
「そんなまさか……フックスベルガーさん、呆けてお客様に暴力を……ッ」
「違う!」
余計な誤解が生まれないよう、私、頑張ったわ。
それで、途中で衛兵見つけて背負ってもらって、おじぃを乗っ取った古の暗殺者を追い詰めた。ただ残念ながらそこは執務室で、ジークフリード卿がこっちもこっちで悲鳴をあげていた。
「おおおお嬢さんッ! お嬢さん泣き真似をするんじゃないッ! 恐いッ!!」
〈いたぃ……あのひとが……わたしを……〉
「おねがいっ! ヒィッ! いやんッ! お嬢さんッ! コラァッ!!」
人違いよ。
なんか、暗殺者の影響で別の悪霊も沸いて来てるわね。
「フックスベルガー、そしてレディ・スティナ……! そして、な、なんだ揃いも揃っ……!? ギャッ! えっ!? ワッ! んんっ!? えっ、なんか……っ、ヒィッ! ぎえっ!」
「落ち着いてください、ジークフリード卿。今フックスベルガー氏はハザルをつけ狙う暗殺者の亡霊に憑りつかれ体を乗っ取られています」
「──」
衛兵の背中から床に下りながら告げると、ジークフリード卿は一瞬、現実を受け止めきれずに呆然と時を止めた。そして再び時が動き、
「ファアアアァァッ!?」
と絶叫した途端、おじぃの老体が狼のようにジークフリード卿に飛び掛かった。
「ダメだ! フックスベルガーさん!!」
「しっかりしろ! それはマイ・ロードだッ!!」
一緒に来てもらった男性陣が取り押さえるけれど、
「グワアアァァッ!」
「わあっ!」
「ええっ!?」
簡単に弾き飛ばされちゃった。
「痛ましい……こんな呆け方で終わるなんて……」
おじぃを偲んで泣き出す人までいるし。
万事休す!
〈しっかりしなさい、ジークフリード!〉
「!」
その声は!
「ビアンカ!」
「えっ、お嬢さんッ!?」
「──」
勇ましい6才の少女の霊に、乗っ取られた老体がギロリと鋭い殺意を向ける。ジークフリード卿は震えてる。んで、泣いてた御婦人の亡霊は暗殺者に吸い込まれちゃって、養分にされちゃった。
〈レディ・スティナ、力を貸して!〉
「え?」
「えっ!? 今度は何ぃッ!?」
ジークフリード卿に、ビアンカの言葉は聞き取れないみたい。
〈母さんと私だけじゃ封じ込めるので精一杯だった! ちょっと持ち場を離れただけで蘇っちゃうし〉
「やっぱり」
「なッ、なにがやっぱりッ!?」
ヘタレ黙っててくれないかな。
〈でも、あなたが力を貸してくれたら、今度こそ消滅させられると思う! レディ・スティナ、お願い!〉
「わかったわ!」
よぉ~し。
やってやろうじゃないの!
そのために来たのよ!!
「んっ? んっ!? それは、なんだ? イイ感じの展開……?」
「ちょっとジークフリード卿は黙っててください。気が散るんで」
「え……」
「あとおじぃが大切なら襲われても許してあげて、殺さない程度に抵抗して自分の身は自分で守ってください」
「そ……そんな……ヒィッ!!」
ヘタレなジークフリード卿がこの期に及んで明後日の方向を見て悲鳴を上げた。
「チッ」
もう舌打ちも出ちゃうってもんよ。
そっちを見ると、甲冑が……ええと、甲冑がひとりでにヨタヨタと歩いて、執務室に入って来るところだった。
「え?」
な、なに?
〈母さん、遅い!〉
「えっ!?」
あれハザル!?
「ヒィッ! なにィッ!? もうダメもうダメもうダメ、フックスベルガーそんな目で見るなァァァァッ!! よろいぃぃぃぃぃぃぃッ!! ファアアァァァアアァァッ!!」
「フックスベルガーさん、いけない! その方はあなたがおしめも変えた事がある大事な大事なマイ・ロードだぞ!!」
「コロス……!」
〈ジークフリードに手ェ出すんじゃないわよッ!!〉
〈ビア、ンカ……重いで……ぃやっ〉
「ハザル! しっかり!!」
「えっ、ハザルッ!? よっよよっよっよろいハザルッッ!?」
大混乱にも程があるでしょ。
なんか、ムカついてきた。
私の背中どうなってんの!?
婚約破棄されて嫁入り前なんだけど!?
「え? フックスベルガーさん?」
「フックスベルガーさん、走ってる……」
「やだっ、フックスベルガーさんが呆けた!」
城内は大混乱真っ最中よ。
私とした事が!
「おにぃさん! おにぃさん、おじぃ追って!」
「えっ、おじぃ?」
「おじぃ?」
「そうよどう見てもおじぃでしょ! おじぃ追って!!」
手あたり次第に元気そうな男性の使用人に声をかけて、私は必死でおじぃを追って走った。
「そんなまさか……フックスベルガーさん、呆けてお客様に暴力を……ッ」
「違う!」
余計な誤解が生まれないよう、私、頑張ったわ。
それで、途中で衛兵見つけて背負ってもらって、おじぃを乗っ取った古の暗殺者を追い詰めた。ただ残念ながらそこは執務室で、ジークフリード卿がこっちもこっちで悲鳴をあげていた。
「おおおお嬢さんッ! お嬢さん泣き真似をするんじゃないッ! 恐いッ!!」
〈いたぃ……あのひとが……わたしを……〉
「おねがいっ! ヒィッ! いやんッ! お嬢さんッ! コラァッ!!」
人違いよ。
なんか、暗殺者の影響で別の悪霊も沸いて来てるわね。
「フックスベルガー、そしてレディ・スティナ……! そして、な、なんだ揃いも揃っ……!? ギャッ! えっ!? ワッ! んんっ!? えっ、なんか……っ、ヒィッ! ぎえっ!」
「落ち着いてください、ジークフリード卿。今フックスベルガー氏はハザルをつけ狙う暗殺者の亡霊に憑りつかれ体を乗っ取られています」
「──」
衛兵の背中から床に下りながら告げると、ジークフリード卿は一瞬、現実を受け止めきれずに呆然と時を止めた。そして再び時が動き、
「ファアアアァァッ!?」
と絶叫した途端、おじぃの老体が狼のようにジークフリード卿に飛び掛かった。
「ダメだ! フックスベルガーさん!!」
「しっかりしろ! それはマイ・ロードだッ!!」
一緒に来てもらった男性陣が取り押さえるけれど、
「グワアアァァッ!」
「わあっ!」
「ええっ!?」
簡単に弾き飛ばされちゃった。
「痛ましい……こんな呆け方で終わるなんて……」
おじぃを偲んで泣き出す人までいるし。
万事休す!
〈しっかりしなさい、ジークフリード!〉
「!」
その声は!
「ビアンカ!」
「えっ、お嬢さんッ!?」
「──」
勇ましい6才の少女の霊に、乗っ取られた老体がギロリと鋭い殺意を向ける。ジークフリード卿は震えてる。んで、泣いてた御婦人の亡霊は暗殺者に吸い込まれちゃって、養分にされちゃった。
〈レディ・スティナ、力を貸して!〉
「え?」
「えっ!? 今度は何ぃッ!?」
ジークフリード卿に、ビアンカの言葉は聞き取れないみたい。
〈母さんと私だけじゃ封じ込めるので精一杯だった! ちょっと持ち場を離れただけで蘇っちゃうし〉
「やっぱり」
「なッ、なにがやっぱりッ!?」
ヘタレ黙っててくれないかな。
〈でも、あなたが力を貸してくれたら、今度こそ消滅させられると思う! レディ・スティナ、お願い!〉
「わかったわ!」
よぉ~し。
やってやろうじゃないの!
そのために来たのよ!!
「んっ? んっ!? それは、なんだ? イイ感じの展開……?」
「ちょっとジークフリード卿は黙っててください。気が散るんで」
「え……」
「あとおじぃが大切なら襲われても許してあげて、殺さない程度に抵抗して自分の身は自分で守ってください」
「そ……そんな……ヒィッ!!」
ヘタレなジークフリード卿がこの期に及んで明後日の方向を見て悲鳴を上げた。
「チッ」
もう舌打ちも出ちゃうってもんよ。
そっちを見ると、甲冑が……ええと、甲冑がひとりでにヨタヨタと歩いて、執務室に入って来るところだった。
「え?」
な、なに?
〈母さん、遅い!〉
「えっ!?」
あれハザル!?
「ヒィッ! なにィッ!? もうダメもうダメもうダメ、フックスベルガーそんな目で見るなァァァァッ!! よろいぃぃぃぃぃぃぃッ!! ファアアァァァアアァァッ!!」
「フックスベルガーさん、いけない! その方はあなたがおしめも変えた事がある大事な大事なマイ・ロードだぞ!!」
「コロス……!」
〈ジークフリードに手ェ出すんじゃないわよッ!!〉
〈ビア、ンカ……重いで……ぃやっ〉
「ハザル! しっかり!!」
「えっ、ハザルッ!? よっよよっよっよろいハザルッッ!?」
大混乱にも程があるでしょ。
なんか、ムカついてきた。
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