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7 ひとりにしないで
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守護霊って事で一件落着♪
……とは、いかなかった。
「行かないでくれ……ひとりにしないで……ッ」
ジークフリード卿が、泣くので。
それでしばらく、ジークフリード卿の様子を見ながら食客としてお世話になる事になった。もしかすると永遠に城から出られないかもしれない。
「ヒィッ!! レディ・スティナ! レディ・スティナァ~ッ!! ギェヤァッ!!」
「?」
今日もどこかから若き領主の悲鳴が聞こえる。
それは乙女の断末魔のように甲高かったり、噎せた老人のように悲惨だったりと、本当に、聞いていて飽きない……
「レディ・スティナ! どこぉっ!? 助け──ぐわっ!!」
ビアンカ、私という友を得て、ちょっかいに磨きがかかったようね。
私は代々続くフックスベルガー家の日記を閉じて、声のするほうへ向かった。
ハザルは基本的に、城にはいない。
国境付近や街や監獄辺りで、そのホーリーパワーとシールドを駆使してフロールマン辺境伯領を守護している。なのでビアンカはのびのびとジークフリード卿への友愛を深めているのだ。
「ジークフリード卿?」
「ヒィッ! どぅわッ! んあっ、おっ、お嬢さん! お嬢さんやめなさいッ! ギャン!!」
「ジークフリード卿ぉ~?」
「ファァァッ!?」
ついに幽霊の実体を見ちゃったと思っちゃったのね。
ここ一番の情けない悲鳴だったわ。
「私です」
「レっぐ……スンッ、レディ・スティナ……いやんッ!!」
ビアンカは最近、くすぐりを覚えたみたい。
そりゃあねえ。
こんなに威厳たっぷりの若い領主様が、ここまで怯えまくって叫びまくってくれたら、いろいろ試してみたくなるわよ。わかる。
だから私も、傍観してる。
助けちゃったら、成長しないし。
「どうしました?」
「どうしましたって……ッ、君!」
〈ヘタレぇ~♪〉
ツツツツツン!
ビアンカが、浮遊する特技を活かして指先でジークフリード卿を突きまくっている。右足首から全身の右側面を辿り脳天まで、そして脳天から全身の左側面を辿って左足首まで。
「あッ、あッ、あ゛ッ、あ゛ァッ、ガァッ!!」
ジークフリード卿は泡を吹いて倒れそうだけど、相手は6才の少女。
「大丈夫ですか? なかなか慣れませんねぇ」
「なッ、レッ、るッてェッ!?」
「そうやって大袈裟に反応するから、ビアンカは燃えるんです」
「おおッ、大人をおちょくるお嬢さんに甘い顔をするわけにはア゛ァァァァッごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃんッ!!」
〈キャハ☆彡〉
思う壺ね。
「私がいなくたってビアンカが遊んでくれるから寂しくないと思えば、楽しいじゃないですか」
「はあっ!? くそっ、なに言……ッ!!」
「生涯退屈しませんよ? 相手は、もう死んでるんで」
「馬鹿言うなッ!!」
〈こら!〉
ビアンカが前に回り込み、ジークフリード卿の唇の端にその細くて小さな指をグイっとひっかけ、左右に引いた。
「フィッ!?」
〈せっかくお嫁さんになってくれそうなレディが現れたのにぞんざいな口を利くんじゃありませんッ!!〉
「ひぃぃぃいっ、ゆ、ゆゆぃえッ、ゆゆぃえ……ッ!!」
許しを乞うてる。
私としては、よもやそっち方面に話が向くと思っていなかったので、反応に困っている。
だから無表情で佇んでおく。
「れぃぃっ・しゅしあッ!? れぃぃっ・しゅしあッ!?!?!?」
「……」
「れぃぃっ・しゅしあッ!!」
ビアンカの指が物理的に干渉するようになってきたという事は、ジークフリード卿もだいぶ心を開いてきたという事ね。
うんうん。
故郷に帰る日も近──
「れぃぃっ・しゅしあぁッ!! いやあぁっ!! おぃえっっ!! ウィィィイイイイイッ!!」
私がなにかに憑りつかれたと思って、慄いて泣いてる。
これはやっぱり、永遠に囚われのスティナになっちゃうかもね。
……とは、いかなかった。
「行かないでくれ……ひとりにしないで……ッ」
ジークフリード卿が、泣くので。
それでしばらく、ジークフリード卿の様子を見ながら食客としてお世話になる事になった。もしかすると永遠に城から出られないかもしれない。
「ヒィッ!! レディ・スティナ! レディ・スティナァ~ッ!! ギェヤァッ!!」
「?」
今日もどこかから若き領主の悲鳴が聞こえる。
それは乙女の断末魔のように甲高かったり、噎せた老人のように悲惨だったりと、本当に、聞いていて飽きない……
「レディ・スティナ! どこぉっ!? 助け──ぐわっ!!」
ビアンカ、私という友を得て、ちょっかいに磨きがかかったようね。
私は代々続くフックスベルガー家の日記を閉じて、声のするほうへ向かった。
ハザルは基本的に、城にはいない。
国境付近や街や監獄辺りで、そのホーリーパワーとシールドを駆使してフロールマン辺境伯領を守護している。なのでビアンカはのびのびとジークフリード卿への友愛を深めているのだ。
「ジークフリード卿?」
「ヒィッ! どぅわッ! んあっ、おっ、お嬢さん! お嬢さんやめなさいッ! ギャン!!」
「ジークフリード卿ぉ~?」
「ファァァッ!?」
ついに幽霊の実体を見ちゃったと思っちゃったのね。
ここ一番の情けない悲鳴だったわ。
「私です」
「レっぐ……スンッ、レディ・スティナ……いやんッ!!」
ビアンカは最近、くすぐりを覚えたみたい。
そりゃあねえ。
こんなに威厳たっぷりの若い領主様が、ここまで怯えまくって叫びまくってくれたら、いろいろ試してみたくなるわよ。わかる。
だから私も、傍観してる。
助けちゃったら、成長しないし。
「どうしました?」
「どうしましたって……ッ、君!」
〈ヘタレぇ~♪〉
ツツツツツン!
ビアンカが、浮遊する特技を活かして指先でジークフリード卿を突きまくっている。右足首から全身の右側面を辿り脳天まで、そして脳天から全身の左側面を辿って左足首まで。
「あッ、あッ、あ゛ッ、あ゛ァッ、ガァッ!!」
ジークフリード卿は泡を吹いて倒れそうだけど、相手は6才の少女。
「大丈夫ですか? なかなか慣れませんねぇ」
「なッ、レッ、るッてェッ!?」
「そうやって大袈裟に反応するから、ビアンカは燃えるんです」
「おおッ、大人をおちょくるお嬢さんに甘い顔をするわけにはア゛ァァァァッごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃんッ!!」
〈キャハ☆彡〉
思う壺ね。
「私がいなくたってビアンカが遊んでくれるから寂しくないと思えば、楽しいじゃないですか」
「はあっ!? くそっ、なに言……ッ!!」
「生涯退屈しませんよ? 相手は、もう死んでるんで」
「馬鹿言うなッ!!」
〈こら!〉
ビアンカが前に回り込み、ジークフリード卿の唇の端にその細くて小さな指をグイっとひっかけ、左右に引いた。
「フィッ!?」
〈せっかくお嫁さんになってくれそうなレディが現れたのにぞんざいな口を利くんじゃありませんッ!!〉
「ひぃぃぃいっ、ゆ、ゆゆぃえッ、ゆゆぃえ……ッ!!」
許しを乞うてる。
私としては、よもやそっち方面に話が向くと思っていなかったので、反応に困っている。
だから無表情で佇んでおく。
「れぃぃっ・しゅしあッ!? れぃぃっ・しゅしあッ!?!?!?」
「……」
「れぃぃっ・しゅしあッ!!」
ビアンカの指が物理的に干渉するようになってきたという事は、ジークフリード卿もだいぶ心を開いてきたという事ね。
うんうん。
故郷に帰る日も近──
「れぃぃっ・しゅしあぁッ!! いやあぁっ!! おぃえっっ!! ウィィィイイイイイッ!!」
私がなにかに憑りつかれたと思って、慄いて泣いてる。
これはやっぱり、永遠に囚われのスティナになっちゃうかもね。
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