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5 フロールマン城の守護霊
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「ん? どうしたの?」
ビアンカが唐突に宙を見つめたので、聞いてみた。
私の言葉に、ジークフリード卿が取り乱す。
いや、さっきからずっと取り乱しているけど。改めて。
「へっ!? なっ、ななななんだ!?」
「ジークフリード卿、落ち着いて。大丈夫ですから。ビアンカ? どうしたの?」
私の問いかけには答えず、少女の霊はスンッと消えた。
「ほっふ」
「?」
ジークフリード卿、安堵してる。
なるほどぉ、ちゃんと気配でわかるのね。
中途半端な霊感だと苦労するんだなって、なんか、しみじみ思わされたわ。
「どこかへ行っちゃいましたね」
「あっ、当たり前だ! 四六時中はりつかれてたまるか!」
「ん!?」
ジークフリード卿の自我と自尊心が瞬間的に回復した瞬間、とてつもなく大きくて強いホーリーな気配が、唐突に辺りを満たした……ので、私が声をあげた。
「ひん!」
ジークフリード卿も、悲鳴をあげた。
フックスベルガーはおじぃちゃんの貫禄を崩す事なく、佇んでいた。
「ビアンカ……」
が再び現れたと思ったら、別の霊を連れていた。
連れられていた、と表現すべきかも。
嫋やかに微笑む、異国情緒あふれる美女の霊。
「なッ!? おっ、お嬢さん、しつこいぞ!! 私は仕事があるんだ!! いつまでも構ってられルかぁぁぁっ!! ひゃんっ! スティナ、スティナ、スティナッ!! スティナッ!!」
声を裏返したり自分が飛び跳ねたり、忙しい辺境伯様だなぁ。
「ビアンカ、その人は?」
「なんだ! 誰だ!! いくらお嬢さんだからって寄ってたかって私をおちょくるとギェヤアアアアアッごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!!」
「ジークフリード卿、1分だけ黙っててくれます?」
「無理だ恐いッ!!」
無理だったかぁ……
私は、額に手を当てて俯いた。
こんな厄介な相手だったとは。あ、人間のほうの話。
「えっ、どどどどうした!? スティナ!? レディ・スティナしっかりしろ!! 私を置いていくなッ!!」
「マイ・ロード。レディ・スティナの邪魔をしてはいけません」
「邪魔ッ!? あっ、そっ、そうか……それはすまなかった。年甲斐もなく騒ぎ過ぎた。ヒィッ……あ、否。私の事は気にしないでくれ……んぎゅ」
我慢してる。
〈アハハハハ! ジークフリードったら情けないッ!〉
ビアンカはお腹を抱えて大笑い。
私は安定のおじぃを見あげて、ビアンカとまとめて孫みたいな気持ちになってから、異国情緒あふれる美女の霊にずばり聞いてみた。
「どなたですか?」
「目線……ッ! 相手は大人なのか……ッ!!」
戦々恐々としているジークフリード卿に少し切ない笑みを向けてから、美女の霊はサラッと答えた。
〈私はハザル。フロールマンの地を守護しとるんでィやっす〉
「…………!」
美麗な顔とおっとり口調で、語尾が変!
ビアンカが唐突に宙を見つめたので、聞いてみた。
私の言葉に、ジークフリード卿が取り乱す。
いや、さっきからずっと取り乱しているけど。改めて。
「へっ!? なっ、ななななんだ!?」
「ジークフリード卿、落ち着いて。大丈夫ですから。ビアンカ? どうしたの?」
私の問いかけには答えず、少女の霊はスンッと消えた。
「ほっふ」
「?」
ジークフリード卿、安堵してる。
なるほどぉ、ちゃんと気配でわかるのね。
中途半端な霊感だと苦労するんだなって、なんか、しみじみ思わされたわ。
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「ん!?」
ジークフリード卿の自我と自尊心が瞬間的に回復した瞬間、とてつもなく大きくて強いホーリーな気配が、唐突に辺りを満たした……ので、私が声をあげた。
「ひん!」
ジークフリード卿も、悲鳴をあげた。
フックスベルガーはおじぃちゃんの貫禄を崩す事なく、佇んでいた。
「ビアンカ……」
が再び現れたと思ったら、別の霊を連れていた。
連れられていた、と表現すべきかも。
嫋やかに微笑む、異国情緒あふれる美女の霊。
「なッ!? おっ、お嬢さん、しつこいぞ!! 私は仕事があるんだ!! いつまでも構ってられルかぁぁぁっ!! ひゃんっ! スティナ、スティナ、スティナッ!! スティナッ!!」
声を裏返したり自分が飛び跳ねたり、忙しい辺境伯様だなぁ。
「ビアンカ、その人は?」
「なんだ! 誰だ!! いくらお嬢さんだからって寄ってたかって私をおちょくるとギェヤアアアアアッごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!!」
「ジークフリード卿、1分だけ黙っててくれます?」
「無理だ恐いッ!!」
無理だったかぁ……
私は、額に手を当てて俯いた。
こんな厄介な相手だったとは。あ、人間のほうの話。
「えっ、どどどどうした!? スティナ!? レディ・スティナしっかりしろ!! 私を置いていくなッ!!」
「マイ・ロード。レディ・スティナの邪魔をしてはいけません」
「邪魔ッ!? あっ、そっ、そうか……それはすまなかった。年甲斐もなく騒ぎ過ぎた。ヒィッ……あ、否。私の事は気にしないでくれ……んぎゅ」
我慢してる。
〈アハハハハ! ジークフリードったら情けないッ!〉
ビアンカはお腹を抱えて大笑い。
私は安定のおじぃを見あげて、ビアンカとまとめて孫みたいな気持ちになってから、異国情緒あふれる美女の霊にずばり聞いてみた。
「どなたですか?」
「目線……ッ! 相手は大人なのか……ッ!!」
戦々恐々としているジークフリード卿に少し切ない笑みを向けてから、美女の霊はサラッと答えた。
〈私はハザル。フロールマンの地を守護しとるんでィやっす〉
「…………!」
美麗な顔とおっとり口調で、語尾が変!
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