4 / 15
4 アンビバレントな貫禄
しおりを挟む
「しっ、失礼」
「いいえ」
「話は聞いていると思うファァッ!? この城で最近ッ、ヒィッ! おっふ……みょっ、妙な現象ガアァァァァッ!?」
クールな外見のジークフリード卿が、声音をアップダウン……違うか、ダウンあっぷあっぷダウンしながら、威厳を取り戻した瞬間に手放すというお茶目な一面を披露してくれている。
たしかに、ジークフリード卿の周りを駆け回っている少女の霊がいる。
〈キャハハッ! アハハハハッ! ウフフッ!〉
すっごくご機嫌の少女、の霊。
まったく悪意は感じないし、ただこどもが大人を揶揄って味をしめて癖になってエキサイトしてるだけみたい。
「なっ、なんだッ! 君ッ、見えているのか!!」
「はい」
「誰だッ!! ヒギィッ!!」
「お名前は?」
私が腰を屈めて声をかけると、少女はピタッと止まった。
そして、天真爛漫な瞳を輝かせて、私を見た。
その透けた体の向こうで、ジークフリード卿が内股で我が身を抱きしめてキョロキョロしている。
「私はスティナよ。今日からここでお世話になるの。お世話をするとも言うけど。あたなと友達になりたいわ。名前を教えて?」
名を暴くのが除霊の第一歩。
だから警戒するかと思いきや、少女は嬉しそうに笑顔を咲かせた。
〈見えるのね!? ようこそ、私たちのお城へ!〉
「ええ、ありがとう。なんて呼んだらいい?」
「は……ッ!? かっ、会話してる……ッ!?」
〈ビアンカよ! 6才なの、ずっと! でも心はもう立派なレディよ!〉
それはどうかしらね。
たぶん、心も純真無垢な6才のままだと思うけど。
でも、微笑ましい。
「笑ってる!? きっ、君! なぜ笑ってるんだッ!! いっ、いるのか!? そこにいるのか!? おい!」
「ここにいますし、悪い霊ではありません。ジークフリード卿が好きみたい」
「す、好きィッ!?」
〈!〉
意思疎通の希望に目を煌めかせ、永遠の6歳児ビアンカが再びジークフリード卿の足元を走り抜けた。
「ヒンッ!」
「とても可愛い女の子です」
〈ジークフリード! こっちよ! こっち見て!!〉
「はうっ! オッ、お嬢さん!? お嬢さん!! やめないかっ! ひゃうっ! ごめんなさいごめんさないごめんなさいィッ!!」
〈アハハハハハッ!〉
見てると、和むわ。
ジークフリード卿もある程度は目で追っているけど、ビアンカの姿が見えているわけではないみたい。だから必要以上に恐がっているし、それがビアンカを楽しませている。
「ジークフリード卿、どういう風に見えているんですか?」
「どっんっなっ風ッ!?」
「はい。私はまったく恐いと思いませんし、おじぃ──フックスベルガー氏も平然としていますよ?」
「その男はどんな事にも動じないッ!!」
たしかに、貫禄と安定感が桁違い。
「マイ・ロード。もう安心ですね。これほど頼もしいレディがフロールマン城に──」
「白い靄がッ! ふわふわした白い靄が私に纏わりついて、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁなんとかじてぇぇぇっ!!」
〈しっかりしてぇぇぇぇぇっ! マイッ・ロードッ!!〉
応援されてる。
で、泣いてるわ。ジークフリード卿。
なんか、可愛い。
「いいえ」
「話は聞いていると思うファァッ!? この城で最近ッ、ヒィッ! おっふ……みょっ、妙な現象ガアァァァァッ!?」
クールな外見のジークフリード卿が、声音をアップダウン……違うか、ダウンあっぷあっぷダウンしながら、威厳を取り戻した瞬間に手放すというお茶目な一面を披露してくれている。
たしかに、ジークフリード卿の周りを駆け回っている少女の霊がいる。
〈キャハハッ! アハハハハッ! ウフフッ!〉
すっごくご機嫌の少女、の霊。
まったく悪意は感じないし、ただこどもが大人を揶揄って味をしめて癖になってエキサイトしてるだけみたい。
「なっ、なんだッ! 君ッ、見えているのか!!」
「はい」
「誰だッ!! ヒギィッ!!」
「お名前は?」
私が腰を屈めて声をかけると、少女はピタッと止まった。
そして、天真爛漫な瞳を輝かせて、私を見た。
その透けた体の向こうで、ジークフリード卿が内股で我が身を抱きしめてキョロキョロしている。
「私はスティナよ。今日からここでお世話になるの。お世話をするとも言うけど。あたなと友達になりたいわ。名前を教えて?」
名を暴くのが除霊の第一歩。
だから警戒するかと思いきや、少女は嬉しそうに笑顔を咲かせた。
〈見えるのね!? ようこそ、私たちのお城へ!〉
「ええ、ありがとう。なんて呼んだらいい?」
「は……ッ!? かっ、会話してる……ッ!?」
〈ビアンカよ! 6才なの、ずっと! でも心はもう立派なレディよ!〉
それはどうかしらね。
たぶん、心も純真無垢な6才のままだと思うけど。
でも、微笑ましい。
「笑ってる!? きっ、君! なぜ笑ってるんだッ!! いっ、いるのか!? そこにいるのか!? おい!」
「ここにいますし、悪い霊ではありません。ジークフリード卿が好きみたい」
「す、好きィッ!?」
〈!〉
意思疎通の希望に目を煌めかせ、永遠の6歳児ビアンカが再びジークフリード卿の足元を走り抜けた。
「ヒンッ!」
「とても可愛い女の子です」
〈ジークフリード! こっちよ! こっち見て!!〉
「はうっ! オッ、お嬢さん!? お嬢さん!! やめないかっ! ひゃうっ! ごめんなさいごめんさないごめんなさいィッ!!」
〈アハハハハハッ!〉
見てると、和むわ。
ジークフリード卿もある程度は目で追っているけど、ビアンカの姿が見えているわけではないみたい。だから必要以上に恐がっているし、それがビアンカを楽しませている。
「ジークフリード卿、どういう風に見えているんですか?」
「どっんっなっ風ッ!?」
「はい。私はまったく恐いと思いませんし、おじぃ──フックスベルガー氏も平然としていますよ?」
「その男はどんな事にも動じないッ!!」
たしかに、貫禄と安定感が桁違い。
「マイ・ロード。もう安心ですね。これほど頼もしいレディがフロールマン城に──」
「白い靄がッ! ふわふわした白い靄が私に纏わりついて、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁなんとかじてぇぇぇっ!!」
〈しっかりしてぇぇぇぇぇっ! マイッ・ロードッ!!〉
応援されてる。
で、泣いてるわ。ジークフリード卿。
なんか、可愛い。
47
お気に入りに追加
577
あなたにおすすめの小説
幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」
「私が愛しているのは君だけだ……」
「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」
背後には幼馴染……どうして???
婚約破棄されたので初恋の人と添い遂げます!!~有難う! もう国を守らないけど頑張ってね!!~
琴葉悠
恋愛
これは「国守り」と呼ばれる、特殊な存在がいる世界。
国守りは聖人数百人に匹敵する加護を持ち、結界で国を守り。
その近くに来た侵略しようとする億の敵をたった一人で打ち倒すことができる神からの愛を受けた存在。
これはそんな国守りの女性のブリュンヒルデが、王子から婚約破棄され、最愛の初恋の相手と幸せになる話──
国が一つ滅びるお話。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
義妹に苛められているらしいのですが・・・
天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。
その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。
彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。
それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。
儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。
そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。
王太子殿下の小夜曲
緑谷めい
恋愛
私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?
婚約破棄されたら人嫌いで有名な不老公爵に溺愛されました~元婚約者達は家から追放されたようです~
琴葉悠
恋愛
かつて、国を救った英雄の娘エミリアは、婚約者から無表情が不気味だからと婚約破棄されてしまう。
エミリアはそれを父に伝えると英雄だった父バージルは大激怒、婚約者の父でありエミリアの親友の父クリストファーは謝るがバージルの気が収まらない。
結果、バージルは国王にエミリアの婚約者と婚約者を寝取った女の処遇を決定するために国王陛下の元に行き――
その結果、エミリアは王族であり、人嫌いで有名でもう一人の英雄である不老公爵アベルと新しく婚約することになった――
【完結】順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。〜幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?〜
よどら文鳥
恋愛
「本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ。婚約破棄してほしい」
いきなり婚約破棄を告げられました。
実は婚約者の幼馴染と昔、私よりも先に婚約をしていたそうです。
ただ、小さい頃に国外へ行ってしまったらしく、婚約も無くなってしまったのだとか。
しかし、最近になって幼馴染さんは婚約の約束を守るために(?)王都へ帰ってきたそうです。
私との婚約は政略的なもので、愛も特に芽生えませんでした。悔しさもなければ後悔もありません。
婚約者をこれで嫌いになったというわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。
しかし、後に先に婚約した内容を聞く機会があって、驚いてしまいました。
どうやら私の元婚約者は、五歳のときにおままごとで結婚を誓った約束を、しっかりと守ろうとしているようです。
愛しているのは王女でなくて幼馴染
岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる