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1 残念な婚約

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「タミー、本当にごめん。でも君ってつまらないんだ。名前も平民っぽいし。その点、イヴリン嬢は格式高い感じのする美人。君も可愛いよ? だけど、後継ぎが茶色の目じゃ困る。イヴリン嬢の透き通る碧い瞳は最高なんだ。わかってくれるよね、タミー?」

「ええ、わかった」

「よかった。ありがとうタミー。元気でね」


 いくら親の決めた相手だからって、中身まで補償されたわけじゃない。
 婚約者だった伯爵家令息のローランド・バロンは、馬鹿だった。

 父もこの馬鹿げた婚約破棄にはかなり怒って、親戚を集めてバロン家をこき下ろしている。貴族同士の結婚には責任が伴う。私の名前と瞳の色にケチをつけて破棄するなんて、恥知らずもいいところだ。自分が栗色の髪だから私の金髪が好きって言ったあの日に、気づくべきだった。馬鹿だって。


「悲しむ事はないよ、タミー。あの小僧に未来はない」

「ええ。でも現実的に私の評判はガタ落ちよ」

「ほとぼりが冷めるまで、気分転換に旅行でもいっておいで」

「そうするわ」


 こうして私は、侍女と数人の使用人を引き連れて、旅に出た。
 愚かな元婚約者がどうなろうと関係ない。

 母譲りの金髪をお団子にして、日傘を差して、できるだけ歩く。ただでさえ食事が贅沢なんだから、日常に運動を取り入れないとすぐ太るのだ。親たちを見て学んだ。

 宿から宿へと、歩ける道は歩き、少しでも無理そうな道のりは馬車を使った。船では運動室を1日1回使うと決めた。

 王都の船着き場からは煉瓦道なので素直に馬車に乗った。
 長期滞在なので、きちんとした宿を取った。

 これは傷心旅行なんかじゃない。
 ただの、バカンスだ。
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