あなたと妹がキモ……恐いので、婚約破棄でOKです。あ、あと慰謝料ください。

百谷シカ

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11 幼馴染と永遠の愛を誓う

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 平和でとてつもなく慌ただしい日々に追われていた、ある日。

 王都は田舎より進歩的なのか、それとも彼の執着心が成せる業なのか、リシャールはドレスの試着についてきた。私はもう驚かなかった。謎の気を利かせて母が帰ってしまったのには驚いたけど。


「私は嘘も秘密もないから安心してね」


 試着中、分厚いカーテンで仕切られているだけでも、変に意識するのは彼だけなので遠慮なく話しかける。


「ああ。君にその才能はない」

「あなたはどうなの?」

「必要に迫られたら君を守るための嘘は吐くだろう」

「え? そうなの?」

「君に限ってそんな心配はない」

「まあ、そうね」

「だがいろいろと秘密はある」

「──なんで?」


 苛立ちが声に交じる。


「心配する必要はない。君を愛しいと想う気持ちをいちいち言葉にしていたら君は逃げる。或いは、飽きる。もしくは俺を嫌う」

「あなたのリスさんを見縊らないで」


 鏡に映る自分の顔が、照れて真っ赤になっていた。
 これが、まあ、私の秘密。


「せいぜい強がるがいい。結婚したら、これまでの挑発的な態度に対するツケはたっぷり払ってもらうからな。覚悟し給え」

「……」


 ちょっと待って。


「挑発なんて、してないわよ……?」

「なんだ、嘘が吐けたじゃないか。お礼にこちらの秘密もざっと紹介しようか? ん? その純白の花嫁衣裳を着た状態で、俺の心の声を聞くという試練に耐えられるのか? 何万秒でも羞恥に悶えさせてやるぞ」

「そんな事しなくていいから正装して横に立って!」


 カーテンの向こうから、彼のクックッと笑う憎らしい声が聞こえてくる。

 私はもう、馬鹿みたい露出している肌の全てが真っ赤な自分にも目が当てられないし、母の代わりにあれこれとチェックしている係の人からも隠れたいし、なによりこんな会話を始めてしまった事を後悔していた。

 連れて来るべきではなかったんだわ……。
 これから一生、傍にいるのだから、こんな我儘きかなくてよかったのよ……。


「リスさん」


 ふいに彼が、とても優しい声で、私を呼んだ。


「……?」


 鏡越しに、彼と私を隔てるカーテンを見つめる。
 分厚い天鵞絨の向こうに、彼がいる。


「この世の暴くべきではない全ての秘密から、永遠に君を守り続けるために俺がいる。どうか恐がらないで、ただ、安心して生きて欲しい。愛してるよ。ルイゾン」

「──」


 キスをした。
 今、彼は、言葉で誓いのキスをしたのだ。

 幸せが胸いっぱいに広がって、私は微笑み、少しだけ目頭が熱くなった。


「あなたを愛しているわ。心から。私のリシャール。愛してる」


            
                               (終)
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