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6 ロマンスの始まり(※アニー視点)
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「よしっ、獲ったァ~ッ!!」
ピチピチピチピチィ……
「ヘヘヘェ~イ活きのいいお魚さんですねぇィッ♪」
ロミルダ様に買ってもらった籠に魚がいっぱい。
1、2、3、4、5、6、7……あ?
1、2、3、4、5……の子はこれだから6で、7で、はち……とにかくいっぱい!
「OK~♪」
私は川からパシャンとあがって、籠を置いて、ちゃんとロミルダ様の傍にお仕えするのにふさわしい姿へと身嗜みを整えて、籠を持ってハイになって湖畔のほうへと歩き始めた。
ああ……
早く料理したいなぁ……
「……」
ツムシュテーク伯爵家のクソマザコンとクソババアは死んじゃえって思うけど、あの広くて設備が整っていて最高だった厨房は超恋しい。
ロミルダ様、そろそろ居を構えてくれないかなぁ……
この辺の別荘地はとても素敵ねって毎日言ってる……
私、厨房がなきゃ、お付きのメイドっていうより保護されたサルだし。
別荘、買ってくれないかなぁ……
それで、厨房を独占……
「……えへへ」
今、ここに、私と活きのいい獲れたての魚がいる。
「ヘェェェ~ィおっさかなさぁ~ん♪ いい青光りですねぇ~♪ そのギランギランなお肌を守る鱗ちゃんをザリザリ削ってツルンとするまで剥ぎきって串刺しにしてほしい? それとも皮を剥いで開いて骨取ってバターで焼いて欲しい? ノン・ノン・ノン♪ そうはいかない。私には焚火しかない。バターがあっても、フライパンは忘れて来ちゃったし……っ」
悲しい。
私は木漏れ日の木漏れ日ってくる葉っぱの隙間を見つめ、高速瞬きで涙を散らした。
「……ゥゥッ」
泣いちゃダメ。
だって、私、大好きなロミルダ様と一緒に来れたんだもの。
こんなに幸せなのに、あれもこれも望むなんて我儘だわ。それに、厨房は待っていればちゃんと降って来る。ロミルダ様はそういうお方だ。必要なものを、いつだって与えて下さる。
ああ、ロミルダ様……
大好き……
「そんなにいい方ならフライパン買ってくれるんじゃないか?」
「ひぇっ!?」
声に出てたッ!?
「っていうか誰ッ!?」
「アハハ、俺はマルセル。君と同じ、高貴な方のお付きで旅をしている」
「へっ、へえっ!?」
「そう怯えるな。魚は盗らん」
「……」
ま、血色いいし、飢えちゃあいないわね。
ロミルダ様のお付きのメイドのアニーさんとした事が、これしきの事で取り乱すなんて、あってはならない!
「!」
毅然と、お付きの者同士、友好的に接しようじゃないの。
どうも二人とも湖畔に向かって歩いていきたいようだし?
行き先が一緒なら、並んで歩くのもやぶさかではないけど?
「持とうか?」
「結構です」
いい人そうだろうと誰が獲物をほいほい預けるもんですか!
馬鹿言ってんじゃないわよ!!
……こ、恐がってなんか、いないんだから……
「君、最近あの高級宿に寝泊まりしてる御婦人のメイドだろ? 噂になってるよ」
「へっ、へえっ」
「獲物を狙う鷹みたいな目をして厨房を覗いてるって」
「……違います」
「いや、君だよ」
「違います」
「君だって。俺、席から見てたし」
「……」
獲物を狙う鷹のような目つきの私を、野獣のような目つきで……?
「……」
旅って、出会いが多いんだなぁ。
またルイーゼが怒る。
「マーセンさん」
「マルセルだ」
「マルセルさん」
当たり障りのない使用人らしい会話を引き延ばしながら湖畔まで行けばいいじゃーん。
ルイーゼが追い払ってくれるじゃーん。
「私は鷹のような目つきですか?」
「いや、虫を見る目つきだ」
しまった。
顔が素直で、気分がバレた。
「まっ、安心してくれ。俺は危ない奴じゃないよ。主に命じられて、蝶々を追って小径に突っ込む仔猫みたいな君が一人で森を歩いていたら危ないから見守れって事で、見守っていただけ」
「どれくらい前から?」
「え?」
「どれくらい前から? どの時点から? どの角度で?」
私、着替えたんだ・ゾ。
「着替える時は体ごと逆を向いたさ」
「!」
この男……!
「人の心を読める特別な能力を神に与えられた系の人ッ!?」
「否、君が心を映す可愛い顔を神に与えられた系の人」
「口まで上手いッ!?」
なんて奴!
ルイーゼこいつです!
バキュンとやっちゃってくださいッ!!
「ほら、見て見ろ。俺の主に君の主が笑ってる」
「?」
森の小径を抜けて湖畔についたら、確かにロミルダ様がホホホホッって優雅な感じで洗練された素敵な殿方と談笑してた。
「──」
ほんのり頬を染めて!!
あの記念すべき離婚から5ヶ月、ついにロミルダ様にロマンスが……ッ!?
「アバンチュール……!」
「馬鹿言うな。コンラート様は誠実な方だ。君の主が如何に魅力的だろうと軽い気持ちで火遊びなんかしない。安心し──わっ、なんだ!? えっ!? えええっ!?」
「?」
私の隣に見知らぬ男がいるのを見たルイーゼが、シンプル且つスマートに銃剣を構えて、撃った。
ピチピチピチピチィ……
「ヘヘヘェ~イ活きのいいお魚さんですねぇィッ♪」
ロミルダ様に買ってもらった籠に魚がいっぱい。
1、2、3、4、5、6、7……あ?
1、2、3、4、5……の子はこれだから6で、7で、はち……とにかくいっぱい!
「OK~♪」
私は川からパシャンとあがって、籠を置いて、ちゃんとロミルダ様の傍にお仕えするのにふさわしい姿へと身嗜みを整えて、籠を持ってハイになって湖畔のほうへと歩き始めた。
ああ……
早く料理したいなぁ……
「……」
ツムシュテーク伯爵家のクソマザコンとクソババアは死んじゃえって思うけど、あの広くて設備が整っていて最高だった厨房は超恋しい。
ロミルダ様、そろそろ居を構えてくれないかなぁ……
この辺の別荘地はとても素敵ねって毎日言ってる……
私、厨房がなきゃ、お付きのメイドっていうより保護されたサルだし。
別荘、買ってくれないかなぁ……
それで、厨房を独占……
「……えへへ」
今、ここに、私と活きのいい獲れたての魚がいる。
「ヘェェェ~ィおっさかなさぁ~ん♪ いい青光りですねぇ~♪ そのギランギランなお肌を守る鱗ちゃんをザリザリ削ってツルンとするまで剥ぎきって串刺しにしてほしい? それとも皮を剥いで開いて骨取ってバターで焼いて欲しい? ノン・ノン・ノン♪ そうはいかない。私には焚火しかない。バターがあっても、フライパンは忘れて来ちゃったし……っ」
悲しい。
私は木漏れ日の木漏れ日ってくる葉っぱの隙間を見つめ、高速瞬きで涙を散らした。
「……ゥゥッ」
泣いちゃダメ。
だって、私、大好きなロミルダ様と一緒に来れたんだもの。
こんなに幸せなのに、あれもこれも望むなんて我儘だわ。それに、厨房は待っていればちゃんと降って来る。ロミルダ様はそういうお方だ。必要なものを、いつだって与えて下さる。
ああ、ロミルダ様……
大好き……
「そんなにいい方ならフライパン買ってくれるんじゃないか?」
「ひぇっ!?」
声に出てたッ!?
「っていうか誰ッ!?」
「アハハ、俺はマルセル。君と同じ、高貴な方のお付きで旅をしている」
「へっ、へえっ!?」
「そう怯えるな。魚は盗らん」
「……」
ま、血色いいし、飢えちゃあいないわね。
ロミルダ様のお付きのメイドのアニーさんとした事が、これしきの事で取り乱すなんて、あってはならない!
「!」
毅然と、お付きの者同士、友好的に接しようじゃないの。
どうも二人とも湖畔に向かって歩いていきたいようだし?
行き先が一緒なら、並んで歩くのもやぶさかではないけど?
「持とうか?」
「結構です」
いい人そうだろうと誰が獲物をほいほい預けるもんですか!
馬鹿言ってんじゃないわよ!!
……こ、恐がってなんか、いないんだから……
「君、最近あの高級宿に寝泊まりしてる御婦人のメイドだろ? 噂になってるよ」
「へっ、へえっ」
「獲物を狙う鷹みたいな目をして厨房を覗いてるって」
「……違います」
「いや、君だよ」
「違います」
「君だって。俺、席から見てたし」
「……」
獲物を狙う鷹のような目つきの私を、野獣のような目つきで……?
「……」
旅って、出会いが多いんだなぁ。
またルイーゼが怒る。
「マーセンさん」
「マルセルだ」
「マルセルさん」
当たり障りのない使用人らしい会話を引き延ばしながら湖畔まで行けばいいじゃーん。
ルイーゼが追い払ってくれるじゃーん。
「私は鷹のような目つきですか?」
「いや、虫を見る目つきだ」
しまった。
顔が素直で、気分がバレた。
「まっ、安心してくれ。俺は危ない奴じゃないよ。主に命じられて、蝶々を追って小径に突っ込む仔猫みたいな君が一人で森を歩いていたら危ないから見守れって事で、見守っていただけ」
「どれくらい前から?」
「え?」
「どれくらい前から? どの時点から? どの角度で?」
私、着替えたんだ・ゾ。
「着替える時は体ごと逆を向いたさ」
「!」
この男……!
「人の心を読める特別な能力を神に与えられた系の人ッ!?」
「否、君が心を映す可愛い顔を神に与えられた系の人」
「口まで上手いッ!?」
なんて奴!
ルイーゼこいつです!
バキュンとやっちゃってくださいッ!!
「ほら、見て見ろ。俺の主に君の主が笑ってる」
「?」
森の小径を抜けて湖畔についたら、確かにロミルダ様がホホホホッって優雅な感じで洗練された素敵な殿方と談笑してた。
「──」
ほんのり頬を染めて!!
あの記念すべき離婚から5ヶ月、ついにロミルダ様にロマンスが……ッ!?
「アバンチュール……!」
「馬鹿言うな。コンラート様は誠実な方だ。君の主が如何に魅力的だろうと軽い気持ちで火遊びなんかしない。安心し──わっ、なんだ!? えっ!? えええっ!?」
「?」
私の隣に見知らぬ男がいるのを見たルイーゼが、シンプル且つスマートに銃剣を構えて、撃った。
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