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3 美貌の双子姉妹

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「痛いですって……? 涼しい顔して。それでも結婚を台無しにされる私の傲慢なお姉様なの!?」

「ええ。2分ばかり、姉」

「逆でもよかったのよ。そうしたら、お姉様からじゃなくて私から社交界にデビューできたのに!」


 王妃と二人の王女からかなり目の敵にされているので、目立たないように努めているという努め方のひとつが、これ。あと実のところ父が混乱するからという理由もある。ひとりずつ、如何なる過ちも犯さずに、片付けたい。気持ちはわからなくもない。
 
 ところで、母は私たちの見分けがついているけれど、自分そっくりな双子の娘に薄気味の悪さを感じているため、あまり積極的に関わってはこない。この場合、正しくは見分けではなく、嗅ぎ分けていると言うのが妥当。

 ちなみに、双子なんて恐ろしい呪いだと正気を失い無差別に片方を殺そうとしたのも母なので、私たちからも積極的に関わろうとは考えていない。
 婚約破棄と聞いたら、どう騒ぐかしら。


「ちょっと、お姉様! 聞いてんの!? たった2分でお姉様って呼んであげてるんだから敬意を払って!」

「厳密には2分半でした。んふっ」


 ビルギッタは浮かれ調子で口を挟み、


「あんたは黙ってて!」


 ユリアーナに怒鳴られても、


「ん、ふふ……」


 嬉しそうな笑みは崩さない。
 何を隠そう、双子は呪いではないと叫んで母と戦ってくれたのはメイド長のビルギッタ。母親代わりとまでは言えないけれど、命の恩人である事は確か。本人の口からだけでなく、父の口からも、他の年嵩の使用人の口からも同じ話が聞けたので、裏は取れている。

 
「ニヤニヤしないで」


 愛されている分、揶揄われてもいるユリアーナは、そうとも気づかずに今日もビルギッタを睨んでいる。


「お姉様は? 寝てるの?」

「いいえ。この通り起きてるわ」

「あっそう。お姉様なら目を開いたまま寝てたって驚かないわよ。魚か! それであいつはなんなのよ!! いったい何様のつもりでこぉんなに美しい私そっくりのお姉様を棄てようっての!?」

「可愛げがないですって」

「それはそうね」


 仲良し姉妹なの。
 目立たないようにしているから、誰にも知られていないけれどね。


「じゃあ、問題はお姉様の魚顔なのね」

「やめて、気持ち悪い」

「ああ、造りの話じゃないわよ。私たちびっくりするくらい美人だもの。雰囲気の話。血も涙も感情もない感じ」

「全部あるわ。喧嘩を売っているの?」

「それ恐いからやめて」

 
 ユリアーナも真顔になる時もある。


「さ、お嬢様。と、お嬢様。お茶を召し上がって落ち着いてくださいまし」


 ビルギッタに促され、私たちはサンルームへ移動し、マフィンと紅茶で和みつつ、アルビン伯爵令息ベリエス・マルムフェが婚約者から無関係の愚者と変化するのを待った。わくわくした。
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