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10 ハッピーエンド延長戦
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そういうわけで結婚した。
エドワーズはふたりきりになると、妹へのそれとはまた別の甘い優しさで私を包んでくれたし、デビッドと違って頼り甲斐のある男性だった。
すぐ恋に落ちた。
結婚式を迎える頃には、私もすっかりデレデレしていた。
デレデレしながらも、キャスリン修繕計画は着々と進行していた。
「顔に剃刀をあてるなんて恐いわっ」
「大丈夫よ、キャシー。私がついてる」
「モリぃん……」
「私はモリー。発音はモリー」
「ああ、なんと慈悲深い女性だ……あんな素敵な人が妻だなんて……くふっ」
兄妹は、中身がだいたい一緒なので、熱い愛は疑う必要がない。
デビッドにかかった魔法が解けないうちにキャシーを仕上げないと。
「やったわ……!」
そんなわけで、完成した。
だいぶましになった義妹キャシーは、お化粧も覚えて、単なる骨格の逞しい美女になった。ブロドリック伯爵家だけでなく、私の両親も感動して泣いた。ライルズ伯爵は別の意味で泣いたようなので、ブロドリック伯爵家とタウンズ伯爵家の両方から圧力をかけておいた。
大丈夫。
ライルズ伯爵夫人は優しくて正しい心の持ち主だ。義母として必ず、その勤めを果たしてくれる。
カ ッ ッ!
そして結婚式を迎え……
エドワーズとふたりきりの甘い新婚生活を過ごし……
妊娠した。
キャシーも妊娠した。
「神様どうかお願いします。産まれてくる子を男の子でも女の子でも父親似にしてください。お願いですからそうしてください。もし母親似であるならば最低男の子にしてください。その場合は心を母親似にしてください、同じ試練なら耐えられるはずです。もし女の子にするおつもりでしたら、なにがなんでも父親似にしてください。その場合、言うまでもない事ですが心は母親似にしてください。やっぱりとにかく外見は父親似で内面を母親似にしてください。この祈りがどういうものか、よくよくお考えになって正しい判断をしてください。神様お願い致します。私の子は隔世遺伝しなければそれでいいので、キャシーのほうを重点的によろしくお願いします、神さま」
「君は本当に、素晴らしい女性だ」
身重になったのでベッドで祈り続ける私に、夫になったエドワーズが優しくキスをしてくれる。
私の夫は、イケメンだ。
この顔の息子が生まれなかったら、天を睨んで思い知らせてやる。
「いいから、あなたも一緒に祈って」
「その祈りは聞き届けられなかった。だから母は修道院に逃げた」
「……」
そうだったわね。
忌々しい美麗シスター、今はどうしている事やら。
「大丈夫。私たちは幸せだよ」
「じゃあせめて、あっちを祈っておかなきゃね」
私は夫にキスを返し、再び指を組んで目を閉じる。
「神様どうかお願いします。軟弱で薄情なデビッドを善き夫に生まれ変わらせてください。人として誠実で、父として頼もしく、夫として優しくあたたかな人間に変えてください。良好だった時期を考えると素質がないわけではないと思いますので、あなたの匙加減で簡単にそうできるはずです。どうか神様、あなたの可愛いキャシーが傷つく事のないように、あのクソったれを善き夫に変えてそれを維持してください。あなたの備えた運命なのですから、その辺りをよくよくお考えになって絶対に責任をお取りください。よろしくお願いします、神さま」
「いろいろ言うより天に向かってウィンクしたら?」
「……」
それもそうね。
私たちは甘いキスを交わしてから、手に手を取り合い……というか私が身重なのでそれを支えてもらって、窓辺に立った。
澄み渡る空を見あげる。
「(じっ……)」
「(じぃっ……)」
というか見つめる。
だって、愛に言葉は要らない。はず。
「(ニコッ)」
(終)
エドワーズはふたりきりになると、妹へのそれとはまた別の甘い優しさで私を包んでくれたし、デビッドと違って頼り甲斐のある男性だった。
すぐ恋に落ちた。
結婚式を迎える頃には、私もすっかりデレデレしていた。
デレデレしながらも、キャスリン修繕計画は着々と進行していた。
「顔に剃刀をあてるなんて恐いわっ」
「大丈夫よ、キャシー。私がついてる」
「モリぃん……」
「私はモリー。発音はモリー」
「ああ、なんと慈悲深い女性だ……あんな素敵な人が妻だなんて……くふっ」
兄妹は、中身がだいたい一緒なので、熱い愛は疑う必要がない。
デビッドにかかった魔法が解けないうちにキャシーを仕上げないと。
「やったわ……!」
そんなわけで、完成した。
だいぶましになった義妹キャシーは、お化粧も覚えて、単なる骨格の逞しい美女になった。ブロドリック伯爵家だけでなく、私の両親も感動して泣いた。ライルズ伯爵は別の意味で泣いたようなので、ブロドリック伯爵家とタウンズ伯爵家の両方から圧力をかけておいた。
大丈夫。
ライルズ伯爵夫人は優しくて正しい心の持ち主だ。義母として必ず、その勤めを果たしてくれる。
カ ッ ッ!
そして結婚式を迎え……
エドワーズとふたりきりの甘い新婚生活を過ごし……
妊娠した。
キャシーも妊娠した。
「神様どうかお願いします。産まれてくる子を男の子でも女の子でも父親似にしてください。お願いですからそうしてください。もし母親似であるならば最低男の子にしてください。その場合は心を母親似にしてください、同じ試練なら耐えられるはずです。もし女の子にするおつもりでしたら、なにがなんでも父親似にしてください。その場合、言うまでもない事ですが心は母親似にしてください。やっぱりとにかく外見は父親似で内面を母親似にしてください。この祈りがどういうものか、よくよくお考えになって正しい判断をしてください。神様お願い致します。私の子は隔世遺伝しなければそれでいいので、キャシーのほうを重点的によろしくお願いします、神さま」
「君は本当に、素晴らしい女性だ」
身重になったのでベッドで祈り続ける私に、夫になったエドワーズが優しくキスをしてくれる。
私の夫は、イケメンだ。
この顔の息子が生まれなかったら、天を睨んで思い知らせてやる。
「いいから、あなたも一緒に祈って」
「その祈りは聞き届けられなかった。だから母は修道院に逃げた」
「……」
そうだったわね。
忌々しい美麗シスター、今はどうしている事やら。
「大丈夫。私たちは幸せだよ」
「じゃあせめて、あっちを祈っておかなきゃね」
私は夫にキスを返し、再び指を組んで目を閉じる。
「神様どうかお願いします。軟弱で薄情なデビッドを善き夫に生まれ変わらせてください。人として誠実で、父として頼もしく、夫として優しくあたたかな人間に変えてください。良好だった時期を考えると素質がないわけではないと思いますので、あなたの匙加減で簡単にそうできるはずです。どうか神様、あなたの可愛いキャシーが傷つく事のないように、あのクソったれを善き夫に変えてそれを維持してください。あなたの備えた運命なのですから、その辺りをよくよくお考えになって絶対に責任をお取りください。よろしくお願いします、神さま」
「いろいろ言うより天に向かってウィンクしたら?」
「……」
それもそうね。
私たちは甘いキスを交わしてから、手に手を取り合い……というか私が身重なのでそれを支えてもらって、窓辺に立った。
澄み渡る空を見あげる。
「(じっ……)」
「(じぃっ……)」
というか見つめる。
だって、愛に言葉は要らない。はず。
「(ニコッ)」
(終)
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