7 / 11
7 爆速フォーリンラブ
しおりを挟む 私はサイラスの後ろを冷や汗を流しながら付いて歩いている。
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
82
お気に入りに追加
1,228
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…
西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。
最初は私もムカつきました。
でも、この頃私は、なんでもあげるんです。
だって・・・ね
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
お飾り王妃の愛と献身
石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。
けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。
ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。
国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。

離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。

心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。
ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」
幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。
──どころか。
「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」
決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。
この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる